プロローグ 転移、平凡、超貧乏
俺の名前は普山通太。東京在住。今日で大学を卒業した。そして俺は今、怪しい看板を掲げた店の前でたたずんでいた。
『異世界転移 ¥3000~』
俺はアニメが好きだから転移には興味がある。
(これが本当だったらラッキーだよな…でも、嘘だったらそんなの金をどぶに捨てるようなものだし…)
しばらく考えたあと、俺は店にはいることにした。店内には老婆が独り座っているだけで、装飾はなにもなかった。
「…転移は3000円から…お金が多ければ多いほどいいいところへ転生させてやる。」
老婆にそう言われ財布のなかを確認すると5000円と小銭がいくらか入っていた。
「嘘じゃないんだよな?」
俺は確認しながら5000円を差し出した。老婆はこくりと頷くと、5000円を受け取った。
その瞬間、俺の意識がとんだ。
気づくと普通の道路に立っていった。ただ、店にはいる前まで晴れていたはずだったが雨が降っていた。が、それ以外に変わった点は見つからなかった。
「嘘…だろ?騙された…………」
へなへなとその場に座りこむ。5分ほどたったとき俺は通行者から声をかけられた。
「あの、大丈夫ですか?お家は何処です?」
心配をかけてしまったと思いわざと明るい声で返答した
「あ、ここ、東京に住んでます。」
通行人は首をかしげると言った
「えっと…ここは東京なんて所じゃないわ。それに東京なんて地名しらないわ。雨で記憶がおかしいんじゃないんですか?」
そういうと通行人は去っていった。その後、俺は様々な人に東京について聞いたが誰も知らないと言う。
(もしかしたら本当に異世界に転移したのかもしれない。)
そんな思いが頭をよぎる。あの老婆はお金が多いほどいいいところへ転移させてやると言っていた。
(俺が払うお金が少なかったからあまり普通の世界と少ししか相違点がない世界に飛ばされた…?)
さっきは焦っていて気が付かなかったが、建物も今まで俺が居た世界と少し違う。通行人を見ると、黒髪の人は半数くらいで、それ以外の人は髪を染めていた。変化は少なくても異世界転移が成功したと思うと嬉しかったが、喜びに浸(ひた=)ってる暇はなかった。俺には今、宿がない。お金も殆ど残っていない。宿を探してトボトボと歩いているといつの間にか郊外に来ていた。雨は俺から体温と体力をどんどん奪っていった。俺は、前から歩いてきたフードで顔を隠した女性とすれちがったとき、よろけてその女性にぶつかってしまった。俺が謝ろうとすると、女性はフードをとって
「すみません。大丈夫ですか?」
と謝ってきた。
「い、いえ、俺が悪かったです。ごめんなさい。
そう返しながら女性の顔を見つめる。長い髪を少し赤く染めていた。
(可愛い…)
思わず顔を赤くしてしまった。するとどこからともなく背のひくい二人組が現れた。二人共、髪型は同じだったが一方は黒髪、もう一方は白髪だった。黒髪が口を開く
「美和さんへの下心を察知。攻撃を開始します。」
黒髪は胸元から空の酒瓶と鉄のパイプを取り出すと、鉄のパイプを白髪に渡した。
「…殺られる覚悟はできてるんですよね?」
白髪がパイプを構えながら言ったのをきいて俺は失神した。