表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/70

065 二人の王子【王国視点】

「招集に応じ馳せ参じました」

「うむ……」


 ゼーレス王国王城、玉座の間に、二人の男が招集されていた。

 一人は次期国王となるであろう第一王子アルン=ウィル=ゼーレス。


「ですが父上、ひどい有様ですね」

「ぐっ……」

「ああいえ、出過ぎた真似を。して、聞いた話によるとこの惨状、一介の飼育員ごときによるものとか?」


 口調こそギリギリの敬意を示したようなものだが、その声音に敬意など全く込められた様子がない。

 とはいえ国に残った国王や宰相を始めとする大臣は何も言い返せない。実際にそのとおりだったから。

 そしてそれ以上にアルンの持つオーラに気圧されていたのだ。


 アルンは魔法、学力、武術、どれをとっても優れた才能を発揮したまさに天才神童だった。

 当然成人し、次期国王として準備をすすめる今もなお、その力は健在だ。

 すでに並の騎士団員や武人では相手にならないほどの物理的な力も持っていることもあって、誰も何も言えないのだ。


「まあまあ兄上、そのくらいで」


 場を収めたのはこちらも招集されてやってきた第二王子、ロキシス=ウィル=ゼーレスだった。

 丸メガネを持ち上げながらロキシスは続ける。


「ご心配なく国王陛下。もはやあのレインフォース家が必要なくなるのは時間の問題でしたが……完成しましたよ」

「おおっ! そうか! でかしたぞロキシス!」


 国王が思わず玉座から立ち上がる。

 ロキシスは王都から離れた領地で魔獣の研究を任されていた。研究の目的は、王国の主戦力となっていた魔物たちの量産、強化だった。


「ここへ来たのも私が作った人工竜です。乗り心地はいかがでしたかな? 兄上」

「レインフォースが管理していたあれよりは速く、強かったな」

「おお! おおそうか! もう騎乗も済ませたのだな!」


 国王の目が輝くのを周囲の人間は久しぶりに見た。

 国の誇る戦力が失われた今、実力ある竜騎士と、竜の存在は心の拠り所になるほどの価値があった。


「これでしばらくの防衛は安泰か……」


 ホッと息をつく国王に対して、王子たちの意思は異なっていた。


「父上、一介の飼育員にいいようにされたままで済ませるおつもりで?」

「ぐぬ……だが相手は強大な……」

「ここに来る前に少しばかり味見をしましたが、大した歯ごたえもない相手でした」

「なにっ!? すでに刃を交えたのか!?」


 ざわめき立つ大臣たち。

 実際にユキアの、正確にはあの霊亀の姿をみていた者たちにとってみれば、それは信じられない愚行だったからだ。

 だが第一王子の言は逆に、あの時大臣たちが失っていた自信を取り戻すものでもあった。


「交えるというほどのこともありませんでした。通り道に様子を見ただけ。多少でかい魔物はおりましたが、本当に大したこともありませんでした」

「なにっ! あの魔物とも対峙したのか」

「ええ。逃しはしましたが致命傷は与えてあります」

「おお!」


 国王をはじめ、大臣たちも一様に表情を明るくする。

 もっともこのとき、第一王子の言ったでかい魔物と、大臣たちが想像するそれには大きく隔たりがあったのだが、それに気付くものはこの場にはいなかった。


「我が国の失われた戦力を正式に取り戻すのです」

「この国にもともといた程度の戦力なら、二倍でも三倍でも作ってきましょう」


 第一王子、第二王子はともに、ユキアたちとの戦いを選んだ。

 その熱は、王国に残り沈んでいた貴族たちの心に今一度火を灯す。

 もっとも、その火が自らを焼き尽くすものであると気付くものは、この場には一人もいない様子だった。

一章完結まで書き終わったんで以降作業中です〜


━━━━━

新作短編

━━━━━

https://ncode.syosetu.com/n9349gs/

【悲報】生殺与奪の権を竜に握られた人類、竜国の使者を「田舎者」呼ばわりして追放しようとしてしまう~俺は学院生活を楽しみたいだけだから気にしないけど、俺を溺愛する竜王族の姉は黙ってないかもしれません〜



書籍化作家でコラボした短編になります!

宮廷テイマー好きな方なら多分好きなプロットを、めちゃくちゃいい感じに仕上げてもらっているので

是非チェックしてみて下さい!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ゴブリンの集落のことか。亀も知らないし、火の鳥も鬼も増えてる。 まぁ、敗戦国なのに一方的に奇襲掛けてるから、言い訳できない。仮に謝っても許す道理がない。コイツらはどちらにしろ、もう戦うしか道…
[良い点] 報連相という基本中の基本すら出来ないで何が王族なんだろうか お互いの認識のすり合わせとか上がやるべきタスクの最たるものだろ [一言] 前回の甘かった分もきっちりしめてやってください!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ