057 鬼人の里③
無力過ぎる。
そして、自分の無策を呪った。
レインフォースに貢献するためにと思って持ってきた工芸品。その中にはユキア殿とシャナルさんの母親がつくった装飾品も含まれている。
私が王国から持ってきたものはどうなっても良い。
だがレインフォース家から預かったこれだけは……渡すわけにいかなかった。
「とっととしやがれ! それともなにか? 俺をテイムしてみるか? おら、やってみろや。やれるもんならな!」
「ぎゃはは!」
「出来っこねえっての。人間の小手先のスキルが俺たちに届くわけ――」
鬼人たちの言葉はそこで途絶えた。
「【テイム】」
たった一言、私の後ろから現れた、ユキア殿の一声によって……。
「なっ⁉」
「えっ……」
「がっ……」
セキを中心に私に迫っていた三人の鬼人たちが身動きが取れなくなる。
「残念だ。鬼人族はこれが好きだと聞いてたからいい話し合いが出来るかと思ったんだがな」
ユキア殿の手にはドワーフのものと思われる精巧な工芸品と酒が握られていた。
「所詮はケダモノの集まりということだろう。ユキア、まとめてテイムしてしまえば良いのではないか?」
「まっ、待て! 待ってくれ! 若いものたちの非礼を詫びる!」
慌てたのは村長の隣で控えていた二人の鬼人たちだった。
先程までの余裕は一切なくなり、狼狽えた様子でユキア殿に頭を下げた。
「うちの大事な客人に好き勝手してくれたようだが……?」
「ふむ……だがそちらの客人もまるでこちらの流儀を知らぬようだったが?」
「なるほど……良いんだな? そっちの流儀に合わせても?」
そう告げた途端、ユキア殿のオーラが溢れ、その場にいた鬼人たちが思わずのけぞる。
「なるほど……すでに魔王の風格を持つ御仁だ」
「魔王……か」
鬼人族の族長とユキア殿が静かに、だが激しく視線をぶつけ合う。
そして族長のオーラがまた、あの禍々しいものに変化した。
「わりいが、うちの流儀につきあってくれや」
初めて立ち上がった村長は、周囲の鬼人たちの二倍近くの大きさがあった。
「一騎打ちか」
「そうさ。鬼人ってのはなんだかんだ言おうが強さが全てだ。強えやつに従う。弱いやつは死ぬ。それだけだ」
「負ければこちらのやり方に合わせてもらうことになるぞ?」
「いいさ。強えやつには従う。それが鬼人だ」
私の知る限りユキア殿本人に戦闘能力はなかったはずだ。
それも鬼人の王を相手にするような力など、当然……。
だが今のユキア殿なら……。
「受けようか。そちらの流儀を」
余裕を感じさせるユキア殿。そうだ。いまのユキア殿には霊亀がいるのだ。
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共著でプロット担当ですが、がっつり監修改稿もしてるのでいつも通りな感じです!
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「魔眼持ちは不気味だ!」と貴族家を追い出されたけど新国王も魔眼持ちのようですが……〜追放理由がばれたらまずいから戻ってこいと今更言われても、もう新国王と国を変えるために動き始めました〜




