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005 使い魔

「ご主人さま、御者は私めが」

「ああ、お願いします。クエル、エルダ、頼んだよ」

「「クゥオオオオン」」


 二頭には名前がなかったようなのでそれぞれクエルとエルダと名前をつけた。

 芦毛の綺麗な馬体を持つクエルと、瞳が緑に輝く栗毛のエルダ。

 二頭ともメスのようだ。

 すっかり大人しくなった今の様子なら、ロビンさんに任せてもしっかり仕事をこなしてくれるだろう。


「母さん、大丈夫?」


 慣れない馬車で酔ったりしないだろうかと心配する。


「ええ。私のことは心配せずに」

「兄さん、私は?」


 と、シャナルも何故かそんなことを口にする。

 一応確認はするけど……。


「え? ああ、シャナルは大丈夫そうだね」

「……知りません」


 あれ?

 シャナルが機嫌を損ねていたけどもう動いてからなだめるしかないか……。


「動きますよ」


 ロビンさんがそう言うとクエルとエルダが息を合わせて動き出した。


「街を抜けたら街道を北上、本日は北西の村リスドルへ参ります」


 下調べはバッチリということだろう。


「それじゃあ二人は休んでて。俺は周囲の……」

 

 言いかけたところでシャナルがそれを遮った。


「はぁ……兄さん、周囲の警戒は私のヴィートが行っていますから、あまり気を張り詰めないでください」


 機嫌が治ったのかは判断に迷うところだが、旅に協力的なことはありがたい限りだ。


「シャナルにはヴィートがいたんだった」


 シャナルも当然血を引き継いだ優秀なテイマーだ。

 猛禽類から派生した鳥型の魔物、ヴィートは父さんから与えられた使い魔だった。


「兄さんも早く使い魔を作れば良いのに……って、どんな相手も一瞬でテイムしちゃえるんじゃあありがたみがないですかね」


 通常、テイマーというのは相棒になる使い魔を決めて絆を育むものだ。

 大体一人一体の相棒、もしくは数体のパーティーを持つことが多い。


「まあ俺は宮廷のやつらがいたから……」

「確かにあの数をさばきながらでは難しいのはわかりますが、兄さんはそもそも作る気がないからですよね……?」

「ふふ。羨ましいわね。見ただけでテイムできる才能……苦労してようやく相棒を作れた私達とは見えている景色が違うように思えるわ」


 母さんにも相棒がいる。

 ネズミ型の魔獣、スチュワードだ。

 話題に上がったのがわかったのか服の裾からひょこっと顔をだしてせわしなく視線をキョロキョロ彷徨わしていた。


「はぁ……兄さんが竜でも連れて帰ってきてたらすぐ国を出られたんですけどね」

「無茶言うな。それこそすぐに殺されてたわ」

「またまた……一人で逃げるだけなら国家戦力相手でも兄さんは立ち回れたでしょうに」


 どこまで本気かわからないシャナルの言葉に何も言えなくなる。


「ありがとうございます。兄さん」

「え?」

「聞いてなかったんですかっ⁉」

「いや、聞いてたから驚いたというか……まさかシャナルの口からそんな言葉が飛び出すとは思ってなくて……」

「もうっ!」


 いずれにせよ国家戦力相手に大立ち回りなどしたくなかったしな……。

 こうして家族一緒に過ごせるならそれに越したことはない。


 馬車は順調に北の森に近づいていた。


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