049 決意の結果【ミリア視点】
テイマーとしての能力はレインフォース一族に遠く及ばない。
そして王族としての風格も、実務レベルも、ユキア殿やレイリック殿にまるで敵わない。
「私の価値を、示さなくては……」
人質として大人しくするつもりはない。
私はここで、居場所を作るんだ……!
◇
「ミリアさん、ここなんですけど……」
「あう……ここは……」
「ミリア姐さん! こっちはどうすれば」
「……えっと……」
レインフォース領に居場所を作る。
私のこの目論見は想定外にもすぐに果たされることになった。
「良かったです。兄さんたちは好き勝手飛び回りますし……私たちは一応貴族王族の身内とはいえ実務に当たったことなどありませんでしたから……」
シャナルさんがそう言いながらほっとしたような表情をしているが、私も実務などほとんどやってはいない。
兄姉たちと歳が離れていた上、テイマーの道を選んだばかりに蔑まれてきた私はろくに仕事が回ってこなかったのだ。
それでも王宮にいる王族として一応の書類仕事はこなしてきたおかげでなんとか食らいついている、という状況だった。
「……ミリアさん、すごい」
「いえ……これは別に大したことでは……というより……」
私がすごいのではないのだ。
「この領地には私たちの他は魔物しかいないのかと思っていたのですが……どうしてこうもしっかりした書類がここに集まっているのですか?」
驚いたのはこれだ。
現場の作業はほとんどがオークやゴブリンなど。
文字の読み書きはおろか会話すら怪しいはずの者たちを誰がまとめあげ、どのようにこの書類を集めているのか……。
「ああ。ロビンさんという兄さんの執事の方と、ムルトさんというレイリックさんの執事の方が……」
「執事……只者ではありませんね。ですがたった二人で回る量では……」
「それをやってしまうのです。あの二人は」
「この量を!?」
「ええ……規格外ですよね」
ここにきて再びこの領地に身を置く方との差を思い知らされるとは……。
「でも……ムルトはずっとここにいられるわけじゃない、です」
「そうなのですか?」
「あう……」
エリンさんは誰に対してもこんな感じと聞いて安心したけど最初は不安になったものだった。
「ロビンさんも若いわけではないですし、本来の業務とは違うので」
「ではこの書類を作れる方を雇い入れる必要がある、ということですね」
フル稼働できないのであればこの領地専属の人間を用意しないといけない。
と思ったのだが……。
「それについてですが……提案があります。聞いてくれますか?」
改まってそんなことを言うシャナルさんに若干嫌な予感を覚えながらも、もはや断れる状況にはなかった。
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