027 神獣③
「乗りこなす……って話だったけど、俺はテイムしか出来ないぞ?」
「構わないさ。一頭くらいは譲るつもりで連れてきたからな」
なんとも豪快な話だな……。
エルフにとって幻獣の価値がどの程度かはわからないけど……。
と、そこで家臣団たちの表情が目に入る。
どれもレイリックほど友好的とは言えない表情でこちらを見ていた。いや、このペガサスで俺を値踏みするつもりか。
「じゃあ遠慮なくもらおう」
ペガサスの光り輝くような美しい馬体に手をかけると同時にテイムを行う。
すぐに応えるように頭を下げてこちらに甘えてきてくれた。
「なっ⁉ そんな……一瞬で⁉」
その様子をみてアドリと呼ばれていた若いエルフが目の色を変えた。
「ははっ。先を越されたではないか」
レイリックが笑う。
「先を越された……?」
「ああ、アドリはまだペガサスに認めてもらっていなくてな……一人では乗りこなせずにいたのだ」
なるほど……。
さっきの発言から考えるとアドリにとって見下す対象である人間に先を越されたのは相当堪えるのではないかと思い、恐る恐るその表情を盗み見たが……。
「兄貴……!」
「え……」
何故か目をキラキラさせてそんなことを口走っていた。
「兄貴! さっきはすいませんでした! あのペガサス、うちじゃあ手に負えるのなんて陛下くらいの暴れ馬で……」
おいレイリック……。
せめてもの抵抗で睨むがどこ吹く風だった。
「こんなあっさりこいつを従えちゃうなら、あの化け物だって……」
「ふふ。つくづく精霊に気に入られるな?」
「精霊?」
「アドリはエルフと精霊のハーフ……ああ、エリンもそうだ。よく懐いているじゃないか」
「あぅ……」
思わぬとばっちりで首をすぼめて顔を赤くするエリン。
「精霊に好かれる王……良いことだ。霊亀の件も簡単に片付けてくれることを期待しよう」
かき乱すだけかき乱してさっさとペガサスにまたがるレイリック。
残されたエリンは可愛そうなくらい縮こまっていた。
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