011 争いの真相と解決策
「なるほど……人間を襲うゴブリンと、人間には手を出すべきじゃないと主張するゴブリンの争いか……」
詳しい話を聞けばすでに街道で人を襲ったゴブリンは淘汰されていなくなっており、周辺のゴブリンはなるべく森で慎ましく生きたいものが多数派らしい。
そのため人間の畑に手を出すのは基本的にタブー視されているようだった。
確かに人間に手を出して痛い目を見てるからな……。シャナルに聞いたが事件後は王都から騎士団が派遣されてゴブリン掃討作戦が敢行されたらしいから。
村人にとっては脅威であるゴブリンでも、武装した人間相手では無力だからな。
「ギーギー」
親人間派のゴブリンは必死に見逃してくれと訴えかけてきていた。
「ああ、心配しなくても俺は君たちに危害を加えるためにここに来たわけじゃない」
「ギー?」
「ギー!」
その言葉に大人しくしていた畑を荒らしたゴブリンたちもこちらに顔を向け始めた。
「もうそんな争いが必要ない話をしようと思うんだ」
「ギー」
「俺はこれから北の未開拓領域を目指す。人間が手を出してこない森の奥だ」
わかってるんだかいないんだかよくわからないがひとまずその場にいたゴブリンたちはみんなしっかり耳を傾けてくれるようだ。
「そこで一緒に生活しようと思う。俺がテイムした魔物同士で争いは起こらない。巣穴の規模が大きくなったくらいで考えてくれればと思うが、どうだ?」
「ギー!」
「ギーギー!」
概ね同意してくれたというところだろうか……。
森の奥はゴブリンたちにとっては大変な環境かもしれない。だが天敵となる魔物を含めて俺がテイムしてしまえば、道具が使いこなせる人型の魔物は貴重な労働力になるのだ。
「繋がりがあるなら他の巣のやつや話がわかる別の種族も呼んできていい。とりあえずここで待ってるから、集められるだけ集めてくれるか?」
「ギー!」
元気に返事をするとテイムしたゴブリンたちは一瞬で散っていった。
「大丈夫なんですか……?」
「手間が省けていいと思ったけど」
「いえ……もし想定以上の数が集まったら……」
「ああ、もともとここで数を増やすつもりだったから心配ないよ」
「え……?」
ゴブリンも千匹もまとまって移動していたらまた騎士団が出て来かねないし、別れてバラバラに未開拓地を目指してもらうつもりだった。
そしてその間にできるだけ周囲の魔物を引き連れて来てもらおうと思っていたのだ。
「兄さんは国でもつくるつもりですか……?」
「ゴブリンの国かぁ……俺はゴブリンの王とかになるのかな?」
「いえ、その勢いだと様々な魔物が集まってくるので……」
あれ? それって……。
「魔王……」
「流石にそれは……」
そんな話をしているとゴブリンたちがじわじわと戻ってきつつあった。




