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prologue
『歌は兵器よ。』
『唄は、救いだって信じてる。』
―――――
どこの時間軸とも違う世界線。
その彼方の、さらに奥深くに沈んだ大世界。
そこには、望む者を拒み、拒む者を呼び寄せる不思議な空間が存在する。
選ばれた者だけが踏み入れることのできる、不確定世界。
彼らはそこを【星屑の世界】と呼び、
【世界樹の歌姫】と呼ばれる女神を讃えた。
富貧争いが絶えない世界の中で、
彼らの希望は【世界樹の歌姫】のみ。
【世界樹の歌姫】が歌えば、大地に花が咲き乱れ、
【世界樹の歌姫】が謡えば、荒波、地割れの天変地異が起き、
【世界樹の歌姫】が唄えば、彷徨える魂は眠りにつく。
決して気を抜くことなかれ。
ここは、すべての理を、歌が支配する世界。
歌を、理が支配する世界。
おいで、おいで、深淵の硲
弾む足音、鈴の音合わせ
さあさ、真名与え給う。
かえろ、かえろ、真渕の中へ
草履はここへ置いて行き。