雛の歌姫 17
夕食の時間になって、ルイスが目覚めた。騎士様たちに小突かれながらも、仲良く輪に入って喋る姿を見ると大丈夫そうだ。
アリーシャは食事の準備をしていたのですぐにはルイスの傍に行けなかったが、夕食が始まるときに話をすることができた。
「ルイス!どこか痛めてない?」
「大丈夫だって。それより、良かったな。明日にはこの街を出て一緒に王都の神殿へ行ける」
「本当に嬉しい。ルイスありがとう」
ルイスはちょっと照れながらも、俺あんまり役に立たなかったと頬をかいた。でもそのあとにニッと力強く笑って真っ直ぐにアリーシャを見て言った。
「騎士になってお前守れるように強くなるよ」
「!うん。私も」
アリーシャも微笑んだ。
重圧から解放され、アリーシャの気持ちは清々しいものだった。
夕食を終え、片付けた後はテントで雑魚寝だ。
「俺、野宿って久々だわ」
サイがごろりと寝転びながら言った。
「なんで?」
聞いたのはルイスだ。傍らの騎士から、こら!言葉遣いに気をつけろ!注意されている。そんなルイスを見遣り、サイは笑いながら答えた。
「昇進して偉くなったから神殿からあんまり出れねぇの」
「へぇ。じゃあさ、ブルスさんとかラセットさんは?」
「サイノス様と俺たちを比べるな」
ブルスが慌てたように言う。それを笑いながら見てサイノスが説明してくれた。
「騎士っつっても色々あるんだよ。見習いから騎士になって数年は民間人の護衛の任務を引き受けて経験積むんだ。それから試験受けて正騎士になる」
ルイスが目を輝かせて聞いている。アリーシャも隣で興味津々だ。
「ふ~ん。正騎士になったら神殿に籠ってんの?」
「色々だ。カイウスみたいに地方に行く奴もいるし、女神の護衛になる奴もいるし、俺みたいに後進育てたり使いっぱしりしてる奴もいるし」
「サイノス様は今の仕事いやなの?」
ルイスが言うと、すかさずこら!とゲンコツが落ちた。ラセットが失礼なこと言うな!と立腹している。
しかしサイノスは笑っているだけだった。
「お前は騎士になって、何がしたい?」
サイノスが逆にルイスに聞いた。
ルイスは頭を擦りながら難しい顔をした。
「う~ん。よくわかんねぇ。今はアリーシャ守ってやらねぇとって思うけど」
「まぁ、その意気だ。カイウスが目をかけてるだけあって今後が楽しみだしな」
サイ「なぁ。俺んとこの部下が抜けたら、ルイスくれよ」
カイウス「…」
サイ「あからさまに嫌な顔すんな」
カイウス「ルイスもギフト持ちだぞ。すぐに正騎士になって追いつく」
サイ「それがどーかした?」
カイウス「お前の部下でいる期間は短いぞ」
サイ「!お前の生徒はどいつもこいつも…」