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破界の元勇者  作者: 鴉刃九郎
4/7

3魔機花の世界―疑い

魔王の力により生み出された世界に旅立つことを決意した元勇者。

そして魔王の記憶を引き継いだ少女。


二人が目を覚ますと、そこは狭い部屋の中ではなく。

大きな広場のベンチに二人となりに座っていた。


「ここは……」

元勇者の彼が周囲を見渡している。

そこは彼が学校をサボっていたときにいた噴水のある広場とは全然違っていた。

一見、自然の多い広場という印象だがよく見れば、それらがすべて作り物であることに気が付く。


「質量をもった映像ね、これ」

少女がその作り物の雑草を指でつかみながら言った。

「お前、わかるのか?」

そもそもお前あまり同様しないな、と少女に問う。

彼女がもともといた世界は、勇者もいた世界。

剣と魔法の……勇者たちがさっきまでいたあの部屋の中にもあった

国民的ロールプレイングゲームのような、ファンタジーの世界。


少女が片目を抑えながら、その理由を話す。

「私の目は魔王の眼の力も引き継いでいる、ま……世界を創るほどの力に比べれば

 微々たる力なんだけどね」

その魔王の眼というのはどうやら、一目見ればそれがどういうモノか理解できるという

力をもっているそうだ。


「ずいぶん便利なおめめだな、それでおまえは俺が勇者だったということに気が付いたのか」


少女がうなずいてこたえる。

とりあえず周囲からわかることは、さっきまでの世界よりずいぶん科学技術が進んでいる

ということ。


「まぁ、それは俺がみても解ることだが……どうだ?この世界はどういう世界なんだ?」

「うーん、よくわからない」

この世界の情報を魔王の魔眼で何かわからないかと期待していたが、ただ街並みだけでは

元魔王の少女からすれば、高度な技術でできている程度のことしかわからないそうだ。


「そうか……情報収集に図書館にでも……お?」

元勇者があの男から受け取っていた七枚のカードの一枚が、白紙から変化していることに気が付く。

そこには、おもちゃのロボットのようなものが魔法陣の上に立っているという絵が浮かび上がっていた。

「この絵からなにかわからないか?」

それを少女に見せる。

少女の、魔王の魔眼がそれを見つめている。


しばらくするとそのカードを元勇者、天広英司に返してその絵の意味を説明し始める。


「この絵は、どうやらその世界を表している……そしてその絵によるとこの世界は

 魔法を目指して科学技術が発展した世界……だそうだが」


大体わかったと少女がぶつぶつと、この世界のモノに興味を持ち周囲から情報を得て

それからこの世界の成り立ちを考察している。

子供のような純粋な好奇心が彼女にはあるのだろうか。

少女は周囲を探索し始めて、天広を放っている。


「おい、まて!俺はまだ知らないぞ」

「私も知らない、だから今こうやって調べている」

どこか楽し気にしている少女に、そうではないと頭をかきながら話す。

「お前の名前だよ、元魔王……お前は俺の今の名前も知っているだろうが……」


天広の言葉に、納得したかのように自己紹介を少女を始める。

「ああ、そうだな……申し遅れた、私はグンラペペリ……元魔王様だ」

名乗りと同時に深くお辞儀する少女。

華奢だがどこか緊張感を与えるような雰囲気を放っている。

仮にも前世が魔王というからだろうか。


「グンラペペリ……青りんご……ってとこか」

今ままで暮らしていた世界と違う、異界の言葉。

かつて暮らしていた世界とはいえ、若干あやしい。


「ここの世界は君がいた世界と同じ言語のようだね」

少女は少し離れた先にある建物の看板を見て言う。


「言語の心配はないようだが……というかお前、あの世界から来たばかりなのに

 よくしゃべれるな」

それも魔王の能力の残りなのかと問うと片目をおさえて答える。

「この眼だよ」

「文字いくつか見ただけで言語習得か……うらやましいよお前」

そのおそろしいほどうらやましい能力についため息が出てしまう。


彼にはそんなつもりはないが、かつて自分を倒した相手がうらやましいなどと

嫌味でも言っているのかととらえた少女は腹いせに

「天広英司、学生、趣味ゲーム……実は幻想的な生活を忘れられないでいる」

「おい、やめろ」

少年の個人情報を言葉にだす。

「あの国の姫様……忘れられない初恋の相手か……」

「……ッ!?」

「ほうほう、小柄だが豊満なものを持っている女性が好きか……」

「あああああッ!視るんじゃねぇ!!」


慌てる元勇者はおもしろい、と思った少女は自分の着ている男もののシャツの中に

手を突っ込んでそれを乳房に見立て上下に揺らす。

「すまんなぁ……好みじゃなくてすまんなぁ……」

「うるせぇあほ!あほりんご!」

「りんごサイズで満足できるのかい?」


またため息をつくことになった元勇者は、その腕で巨乳を演じれるほど大きな服を見る。

彼女はまだ自分の服を着ていたことに気付く。

少女のもともと着ていた服は、彼の部屋で乾かしたままだ。

「とりあえず服買いに行くか……ああ、そうか金が……」

部屋に財布を置いてきた。

そもそも、ここで使えるどうかわからないのだが、いったいどうすればいいのだろうか。

早速この世界に来て、アルバイトでも始めなくちゃならないかと考えていたところ

少女が彼にカードの存在を指摘する。


「そのカードはどうやら一つの世界につき、君と再会した世界での百万円程度の

 金額が使えるように設定されているらしい」

「クレジット払いかよ、俺現金しか使ったことないんだよなぁ」

ゲームにハマっていた元勇者だが金銭方面ではまだ新しい技術に慣れてなかったのだ。

「というか、上限はきっちり決められてんのな……あいつも意外としっかりしてんな」

ケチといいそうになったが、何不自由ない新しい人生を送らせてもらい、さらに

旅の費用までだしてくれるのだから、と心にとどめた。




 「いらっしゃいませぇー!」

『適当に服を売っていそうな店』に入った二人。

ここに来るまでにいくつもの建物を見てきたが、どれも近未来的な雰囲気だった。

この店の隣のケーキ屋では、アンドロイドが接客していたが

どうやらこの店員は人間のようだ。


「あら、なんだかおしゃれなカップルだわ~一周まわって最先端?」

「はははは、そうなんです僕らバッチグーなペアルックのアベックなんです

 ところでコイツ、最近の流行りの服も当然似合うと思うんですけど選んでくれませんかね」

一瞬店員が首を傾げ困惑した表情を見せたが、すぐに顔を愛想のよい笑顔に切り替え

店の奥の服を漁り始めた。


「これ、どうでしょうかお客様~」

「ふむ」

店員が持ってきた服を試着室で着替える少女。

店内に置いてあるものは、縞模様の全身タイツやもふもふした西洋の鎧風の着ぐるみ

どれもいまいち彼らには理解できないものだった。


「なぁ、元勇者よ」

試着室の……この店の試着室はカーテンやドアでなく、シャッターのようなもので

閉じられていたがそれが開いた。

「どうだろうか……?」

中の少女は黒いインナーの上に白いコートのようなものを羽織っている。

周囲のマネキンが着せられている服にくらべれば地味だが、

コートがところどころ穴が開いていて下のインナーが見えている。

だがあのへんな全身タイツや着ぐるみに比べれば……


「あら、彼氏さんもこちらの服なんかどうですかぁ~?」

少女になにかうまい賛辞を送ってやろうと考えていたところ、彼の前に店員がやってきた。

……その手にはブーメランパンツとガーターベルト、鳥の頭を模した帽子。

それを自分が身に着けると考えるとぞっとする。

「いいえ、僕はけっこうで……」

「でしたら~こちらは……あらこれもぉ~」


店員の猛攻撃に押されている元勇者。

「あら、お客さま?みんな~来て~!!」

「あ~店長も~きてくださぁ~い」

「あら!イケメンだこと!私のファッションのパッションがッ!くすぐられてぇえええ!」

店の奥からぞろぞろと増援が来る。

集まった店員は波のように彼に襲いかかり、そして店の奥へとさらっていく。


「うぉおおお!お、おい!グンラ……ペペリ!ペペリ!」

「ん?」

救援の要請だろうか?

少女が鏡に映る自分から視線を外したころにはすでに彼は波のなかに引きずり込まれていた。

「に、似合ってる!かわいい!たす……」

「……照れちゃうな……」

肝心なことを言えずに、沈んでいく元勇者。

再び鏡を見つめる少女。


おしゃれなど、ただ強さを求められた魔王であったころには無縁だった。

『彼女』の人生に、いったいいくつほどかわいいと呼ばれたことがあったのだろうかと

少女は自分の『記憶』を探る。

もしかして、そんな経験はなかったかもしれない。


「お客様……こちらの服はいかがしましょうか……」

それは男モノの……彼女が先ほどまで着ていた服である。

元々それは元勇者……英司のものである。


「……返した方がいいな……」

店員からその服を受け取り、ついでにそれを入れるため、リュックサックも買う。




「よいしょっと」

リュックに服を詰め、支払いを彼に任せて店の外で待っている。

「…………またせたな」

「……………あらら」

店から出てきた彼は、鶏の被り物に上半身の露出が高いスーツ、足元はビーチサンダル。

「……ねぇ勇者、異世界だから浮かれる気持ちはわかるけど……」

「俺の意志ではないッ!」

彼の元々来ていた服を受け取り、少女はリュックに詰める。

このリュックは少女にはよくわからない技術によって見た目以上に中に入るようで

今は服二着ぶんだが重さもほとんど感じないらしい。


「それ、俺が持つぞ」

「あら、紳士だな……だけどそのかっこにリュックは紳士度が増すわよ」

男モノとはいえ、少女が着用していた衣類の入ったリュックサックを背負う、

鳥頭の露出過多の男。


「……早くホテル探そうぜ」

「あら、紳士」

早く元の服に着替えたいということだろうが、そのかっこで少女にホテルに行こうだのなんだの

まさに変質者である。

そしてここは通行人も多い。

「脱ぎたい、早く」

「紳士ね……」

この世界の人間は本当にこのような格好が普通だと思っているのだろうかと彼は疑った。

この世界の常識を疑った。


「……クスッ……」

「なにあれ……」


どこかで声が聞こえた。


店員のセンスを彼は疑った。



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