0最終決戦魔王撃破
赤い月が照らし、血に染まったかのような部屋では二つの命が今ぶつかり合っている。
一つは勇者、英雄、救世主などと呼ばれていた者の命。
一つは魔王、支配者、世界の滅びと呼ばれていた者の命。
その二つは今にも消えそうなほど弱っていた。
世界の存亡をかけた戦いはもうすぐ決着がつく。
「うおぉおおおおお!!」
その叫びは勇者の、これまでの戦いと旅のすべてをかけた一撃を意味する。
「来いッ!!勇者ァアア!!」
魔王もそれに全力で応える。
大地が彼らの声と共鳴し震える。
勇者はその最後の一撃を振り下ろす瞬間、これまでのすべてをまるで走馬燈のように
振り返っていた。
「あなたにはこの世界を救う者になっていただきたい……」
その男の言葉がすべての始まり、彼はまるで底の見えない深い穴のような
瞳をしていて、勇者は不気味に感じていた。
彼がその男の言葉通り、魔王討伐に赴いたのは彼があるモノを信仰する者達を
教え導く立場の人間『だった』男だったからだ。
彼は、ただの人間だった勇者に力を与えた。
その力をもっても常に命の危険が伴う戦いだったが、仲間との出会いや別れを繰り返し
成長した彼は、今ここですべてを終わらせる一撃を放つ。
「これで、終わりだァアアアア!!」
すべてを支配する者とすべてを救う者の戦いの結末はほんの一瞬で決まった。