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硝子鉢  作者: 夢島つづら
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夢島つづらと云う人は

夢島つづらは詩人の少年。彼が何で人に愛されたくて愛したいのかについての物語。

愛されたかった。人に温かな木漏れ日を貰いたかった。だから、ボクがわからない分まで沢山沢山人を信用愛するんだ……そしたらきっと誰か僕をすくってくれるから…


お家は夢島家っていう少し大きめなお家で、僕はそこの次男坊だった。だからやっぱり跡取りは長男で、愛されて育っていたのは長男の結鶴っていう兄。僕は次男坊だからって本家じゃなくて別家(最期までずっと過ごしてた家)で3歳くらいかな、それくらいから育てられていた。

別に兄のことは嫌いではなかったし、嫉妬はした訳じゃない。けれどやっぱり親元を離れるのは凄く寂しくて哀しい事だったんだ。何で僕だけ別家何だろうなぁって考えた。当時は誰も教えてくれなかったのだけれど、3人兄弟妹の中で僕だけ別の女性とつまり父親との浮気相手の子供だったんだ。

だから夢島の家としてはやっぱり僕をを本家で育てるのは世間体的に難しくて、それで別家で1人、お家で暮らしていた。兄弟妹仲は悪くは無くて、寧ろいい方で、よく兄や妹が別家に遊びに来てくれたよ。でも、当初幼き僕には親も誰も浮気相手の子だって教えてはくれなかったんだ。

浮気してたのはお父さんかな、田舎から都会に出稼ぎに来てたお手伝いの娘さん。浮気をし子供を身篭ってしまったのがバレたらこちらの息子にするっていう条件と、もうお父さんには近づかないっていう条件で産んだ。僕の事をつづちゃんって言ったのは時折本当のお母さんが実家に連れてったから。

僕の本名は夢島千鶴って言うんだ。千の鳥、今にも大空に羽ばたいて行きそうで素敵だって草が褒めてくれた。草は僕の親友だよ。親友だった、かな。今はもうこの世には居ないから。


話がずれたね。戻すよ。義理の母親……つまり父親の本妻さんは僕とは絶対に顔を合わせようとしなかった。僕のお父さんはそれを知っていて別家に僕のを連れてったみたい。そして一言だけ「御前を愛してやることは俺には出来ない」って言われた。それが3歳の物心つくかつかないかの頃だから尚更その言葉が重くのしかかったね。

実の母親に実家に連れて行って貰えたのは2回だけで、2回目の時には「愛してやれなくてごめんね」って言われた。嗚呼、僕はきっと愛して貰う資格がないんだなと幼ながら感じた。

そんな時、事件が起きたんだ。義理の母親が別家へとやってきた。誰も居ない時だった。彼女は僕を見つけては腕を引っ掴んで床に身体を押し付ける。そして僕の細い首を力強く締めた。

「貴方なんて居なければ、あの女なんて居なければ彼に愛して貰えたのに。こんな愛す資格もない息子なんて要らない。愛する必要もない息子…息子なんておぞましいわ、貴方なんて要らないのよ」と沢山の罵声を浴びせながら首を絞められた。嗚呼、これは自分が愛して欲しいと願った罰なのだ…

そう思って抵抗はしなかった。そして義理の母親は帰ってきたお手伝いさんに取り押さえられた。あれだけ首を絞め付けられて死ななかったのは幸運と言えるだろう。生きたのは不幸中の幸いであった。僕にとっちゃ不幸の始まりだけれどね。

当時、僕が5歳の頃の出来事だったかな。それから僕は人に愛されてはいけないのだろうか、そう、幼なながら考えるようになる。

この頃から僕にとって首に傷を付けるという行為は僕の中で戒めとなり、ケジメ、となった。


これが僕のお話。最期は首を掻ききって亡くなってしまったけれど後悔はしていないよ。

最期にケジメを付けれたことは僕にとっての幸福だったから。

そうだ、次は兄の話をしよう

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