少女の終わり
「怒っては、いけないよ」
私を見上げて男は言う。
なぜ、なぜだ。こんなにも許せないのに。私は何もしていないのに。
みんな、みんな殺された。あの子供に殺された。
こんな所に閉じ込めてお前は何がしたいんだ。今すぐ出せ。あの子供を殺させろ!
「だめだ、落ち着くんだ。……言葉足らずだったね。怒ってもいい。だけどその感情に身を任せてはだめだ」
男は私の腕を擦る。まるで興奮した犬を宥めるかのようだ。全てが隔絶された白い世界の中、私とこの男だけがそこに居た。世界と言うのは仰々しすぎたかもしれない、これは私たちを閉じ込める檻のようなものだ。最もこの檻を出したのは私と一緒に閉じこもってるこの男だが。
「ああ、少し落ち着いたみたいだね」
落ち着いた? 馬鹿か、今でも怒っている。抗議の声を上げようとした所で私はある異変に気付いた。
声が、上手く出せない。
口から出るのは言葉にならない呻き声だけ。なに、なにが起こっているの。思わず喉元を触る。……なにこれ。硬いものが首に張り付いている感触だ。私、今どうなっているの? なにこれ、一体何なんだコレは!
「……ああ、動揺しているんだね。無理もない、今の君は―――」
その時、白に覆われた世界が激しく揺れた。外側から攻撃されている。地面が割れるような感覚にバランスが取れなくなって私は倒れ込んだ。天を覆っていた白に亀裂が入り、破片が砕けながら降ってくる。あの子供だ。悪魔がここまでやってきた。
なんで私ばっかりこんな目に合うんだろう。憎い、憎い、憎い。
目の前が真っ赤になる。憎い。殺したくて堪らない。……だけどなんで私の足はこんなに震えてるんだろう。今更怖いなんて。許せないのに、足が竦んで動けない。
憎い、憎い。
憎いのに。
……だれか。だれでもいい。私を、助けて。
「いいよ」
背後で男の声がした。
「君を助けてあげる。僕がこれからすることは、きっと君を苦しめるだろう。だけど僕は信じてる、君はここで奴の好きなようにされる子じゃないってね」
私の周りを無数の光の粒が渦巻く。あまりの眩しさに目を覆った。
「さよなら、僕の―――」
そこで私の意識は途絶えた。




