第33話/邪悪の影
( 厂˙ω˙ )厂遅くなってゴメンなの
( 厂˙ω˙ )厂やっと一章終わったなの
( 厂˙ω˙ )厂一年経ってこれしか書いてないってどうなの?
その後兵士たちによる必死の捜索が行われたものの、奴らが見つかることはなく、見つけたと思われる兵士たちも無惨にも死体となって転がっていた。
帝王が祈祷の間に足を運んだ時に、この国の国宝『黒脚』が盗まれていることがわかり、奴らの目的はおそらく『黒の遺物』だろうということが発覚した。
『黒の遺物』とは、二千年前に世界中に散らばった黒色の人型人形のパーツたちのことだ。
それ手にした人間達は自身の部位とその手に入れたパーツを融合させ、通常の人間以上どころか超人以上の力を発揮して国々に反逆するようになったため、国が総力をあげて封印してきたいわく付きの遺物だ。
そんなものを集めて何をしようとしているのか一体全体全く予想もつかないが、国をまたいでわざわざ取りに来るところ、彼らが行おうとしていることの規模はかなり大きいのではないかと思う。
俺としては自分の知らないところで勝手に暴れてくれる文にはなんら問題ないのだが、厄介なのは俺も『黒の遺物』の保持者であるということだ。
俺の世間での一般的な呼ばれ方は『黒剣の魔王』だが、この『黒剣』というのがかなり特殊で、先代を倒すことで自動的に次代へと継承される黒の遺物なのだそうだ。
何でも黒の遺物の人形には尾があったらしく、その尾が剣の形をしていて、異物を保持した人間が体の一部として使うことができずに剣になったのだという。
その特殊性故に一番入手が困難だったため、存在自体が幻である、実物しないただの幻想だ、などと論争が耐えない。
更に領内に黒剣と黒腕を保持しておきたかった王国が鎖国を始めたために他国ではもう歴史上の書物でしか実物を見ることは無いらしい。
いやぁ、驚くだろうなぁ、研究職の人達。黒剣はもはや能力になってて、形を剣の形だけにとどめてないだなんて知ったら人体実験の対象にされそうだ。
そもそもあまり剣が得意じゃないというか、平和な日本から来たごく普通の日本人の少年が西洋剣の使い方なんてわかるわけないから出す機会も少ないのだけど、あの剣自体のパラメーターは物凄く高いので、もし俺より強い敵が現れたら苦手だろうとなんだろうと使わざるを得なくなるのだろう。
今からそんなことばかり考えるのはものすごく憂鬱なことなのだけど、どうしてかそうなる気がしてならない。
予見のスキルを使って自分の未来に起こりそうなことを片っ端からリストアップしてみたのだけれど、どれも大したことがないというか、能力で対処可能なものがほとんどだった。
この能力自体が魂まるごと神とリンクして得ている能力なので、クトゥルフから聞いたこの世界にある魔法では能力使用不可や能力封じなどの対処が不可能だろう。それこそそんなことをできるのはこの世界の神くらいなんじゃなかろうか。
と、まぁとにかく自分自身が奴らの目的達成のためのピースにされている可能性を考えて行動しなければいけないな。
そしてそれよりも心配しなくてはいけないのは、俺以外に3人黒剣を引き継いでいる人間がいるということ。
俺一人なら逃げる程度なら出来るかもしれないが、彼女達の場合は団体の力に100%打ちのめされてしまうだろう。
いくら馬鹿みたいに強い能力を持っていようがそれは単体の力であって団体の力には劣ってしまう。
人間だろうと動物だろうと、強い生き物は基本絶対数が多いのだ。弱者は数の暴力の前に打ちのめされる。
それは元の世界で何度も学んだことであり、思い出したくない過去を思い出させるものでもある。
結局僕をいじめていた彼らは誰かの通告によって僕に二度と手を出すことはなくなったわけだけど、彼らが手を出すのをやめた程度で簡単になくなるようなものならトラウマになんてなっていない。
自分の周りの人間が傷つくのは怖いから何としてでも阻止する。それが俺が学んだこと。
元の世界にいた頃までの自分には影から手を出すことぐらいしかできなかったけれど、今の俺は周りの人間を守る程度の力なら持っている。
なら、それを最大限活用して3人を守る方法を考えなくてはいけない。
俺が、俺が何とかしなくちゃいけないんだ。みんなをこの地獄から救い出さなくては。いつか死ぬかもしれない、そんな危ない状況から救わなくては。
ー今度こそ、俺が何とかしなくちゃいけないんだー
今度こそ?
あれ、なんで俺は今度こそなんて……
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「よし、さぁ行くか。おい、そこのおっさん、俺が単独行動してることはうちのボスに告げ口すんじゃあねぇぞ? 俺は誰にも邪魔されずに強いヤツと本気でやり会いたいんだ」
「ああ、分かっているさ。俺の目標はあくまでこの世界の救済だ。君たちがすべてを終わらせてから大きく動き出すさ」
「本当にそれならいいんだけどな……そこのおばさんもしっかりおっさんのこと見張っといてくれよっ、ていってもさすがに無理があるか」
「ええ。私は主の命令以外は聞きませんから。そもそもあなた程度の実力の人間が、我が主と会話ができていることを光栄に思ってもらいたいものです」
今やすっかり無風地帯となってしまった砂漠で、怪しげな会話をする3人が居た。
彼らに表情の動く気配はなく、不気味な気配を漂わせている。
一人の背中には【強欲】の刻印が描かれており、左胸のあたりには【強欲】の代表的な姿である、黄衣の王が描かれていて、そんな彼の着ている服も黄色であった。
彼、【強欲】の大罪ハスターは言った。
「ろくに力を使いこなせない雑魚野郎なんて、俺にかかれば一瞬で終わるさ。俺は早くヤツらに復讐しなくちゃなんないんだ、こんなところに長らくかけていられる時間はないんだよ」
「そうか。なら我々もお暇するとしよう」
「わかりました」
そういうと、二人の姿がすっと空気中に消えて、ついに見えなくなってしまった。
ハスターは一人空を仰ぎながら、自身より圧倒的に劣っていると思っている魔王を倒す妄想に浸っている。
そう、かれは知らなかった。魔王のうち一人が、圧倒的な力を保持しているということに。
魔王の洞窟に近づく邪悪な影は、近づけば近づくほど自身の影が薄くなっていることについぞ気づくことは無かった。
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