第22話/圧倒的な差
( 厂˙ω˙ )厂うぇーい
( 厂˙ω˙ )厂うぇーい……
(´;ω;`)うぇーい……
書き溜めてるはずなのにたまらない呪い
圧倒的なまでに雑に説明を済まされた悲しい魔王です。はい。
実況さん、いくら相手がイケメン野郎だからって扱いの差がひどすぎたりはしませんかね?
え? 眩しすぎてイケメンしか見えてなくて解説が吹っ飛んだ?
……知らねぇよ。
まぁ、そんなこんなで今は開始の合図を待つばかりなのですが、イケメンさんに浴びせられてる大量のファンコールが鳴り止まねぇぞおい。
もういい加減いない子扱いはやめてくれよ、心がじわじわと傷つけられてくよ……
え、俺魔王なんだよね? こんな状況だけど、魔王なんだよね?
思わず自分の体を見てステータスを確認してしまった。
うん、ちゃんと魔王表記あったわ。
わーすごーい! この国は魔王よりもただのイケメンが目立つ国なんだね!
いやただのイケメンじゃないのはわかってるんだけどさ、やっぱ物珍しさってあるじゃん?
江戸に象が来た時は将軍含めてみんな大騒ぎだったらしいし、日本にパンダ来た時は国民大騒ぎだったらしいじゃん?
どっちの時代も生まれてないけど。
まぁでもなんとなく興奮するのはわかるわけよ。
で、今。話を戻すわけなんですが、俺の立場を簡単に言ってしまえば、象やパンダと同じだよね?
ねぇ、おかしくない?
それとも大騒ぎするのは日本人特有のなにかなのかな?
鎖国されてたっていう環境は同じだから外部から何かが来るのってすごく珍しいはずなんだけど。
だって異界人召喚は大イベントだって聞いたよ?
なになに、俺は異世界から来たのに例外なの?
確かに王国によって召喚された異世界人じゃなくて、偶然転移されちゃった異世界人だけどさぁ。なんかこう、もっとあるよね。なにか。
なんかさぁ、もっと、せめてコールくらい丁寧にやるとかあるじゃない? ね?
……べ、別にいいし……寂しくなんてないし……寂しくなんてないし……
『では、始めていただきましょう!
我が国のアイドル、クトゥルフ国家戦略級魔導師の圧倒的勝利確定の決勝戦、スタートです!!』
ねぇ!?
泣いていいかなぁ!? ねぇ、泣いていいかなぁ!?
ついに名前すら呼ばれないくなったんだけど!?
確かに支持率とか人気度はあっちの方が高いかもしれないけどさ、あるよね!? 最低限の礼儀ってやつが。
仮にも立場はお客様なんだぞ? 流石にないでしょうよ、これは。
しかもあいつの勝利確定なのかよ、どんだけ強いんだよ国家戦略級魔導師
名前すら呼ばれないって……寂しくなんてなかった前言撤回。めちゃくちゃ寂しいです誰か僕のうさぎのように孤独死してしまいそうなので助けてくださいお願いします。一生のお願い。
ここまで延々と寂しさを語ってきたわけだけど、相手が攻撃を仕掛けてきたので真面目に戦闘を開始することにした。
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「セイクリッドアクア」
無数の水の槍の雨が俺に向かってただひたすら振り続ける。
その一つ一つを避けていると、クトゥルフは新たな魔法詠唱に出たようだ。
「闇より深き深遠に降りしものよ、今こそその姿を表わせ! 我が眷属、ダゴン!」
彼がそう叫ぶと、彼が発動した魔法陣の中から小さな少年が現れた。
え? なんなん? ダゴン少年なん?
戸惑いすぎてエセ関西弁出ちゃったんだけどダゴン少年なん?
「マスター、今度はあいつをしゅくせーすればいいのだな?」
「殺さない程度にね、彼には後で手伝ってもらいたいことがあるんだ」
あくまでも協力の立場をとって同意を経てからクトゥルフを召喚したいとそういうことですか。はい。
「じゃあちゃちゃっとやっちゃうよぉー?」
生意気にも、ダゴンがこちらへと向かって走り迫りながら巨大な三叉の槍を構えてこちらを突いてきた。
スピードは早いが一撃が軽いダゴンの連撃、基連突きを槍を毎回つかむようにして回避する。
「な、なんなのこいつ!? マスター、ぜんぜん攻撃があたらないよぉ!?」
疲れてきたのかダゴンが弱音を吐いて動きが鈍ってきたので、大きくやりを後ろに変え直した瞬間にダゴンの後ろへと姿を消して移動する。
するとそのすぐあとにクトゥルフが霧をかけて俺の視界を不明瞭にし、再びダゴンに攻撃をさせた。
ちまちま一つ一つ止めてても埒が明かないのでダゴンを殴って吹き飛ばす。おっと、霧魔法も一緒に切れたか。
俺は小さい子は小さい子でも女の子にしかなびかねぇんだよ。ショタとかまじで意味わからない。誰得なん?
さぁ、ダゴンを吹き飛ばして多少時間を稼げたようだからこちらも行動に出るとするか。
「ダゴンかぁ。じゃあこちらは英雄魔女をお呼び出し」
『ちょっとぉ!? い、言い方酷くないですかあ!?』
俺が呼び出しを宣言すると、目の前に鎧を着た女騎士が現れた。
腰まで伸びた、透き通った髪は太陽の光を反射して金色に輝いている。
その真っ直ぐと先を見つめる双方を覆っている丸渕の眼鏡は、失礼な呼び出しをした声の主、つまり俺のことを映している。
レンズの奥にそびえる双眼が俺のことを見つめ、うっすらうるうると涙を貯めている。
萌。
……おっと、危うく思考が脱線してしまうところだった。あぶないあぶない。
まぁそういう訳で俺は、国の英雄として戦いながら、魔女として処刑された戦乙女、ジャンヌ・ダルクを召喚しました。
『……正確にはJanne Da Arcなので、ジャンヌ・ダ・ルクと訳してほしいところですが……』
「俺らの国じゃあそう呼ばれてるんだから仕方ないでしょ? むしろ一個人の名が世界中に知れてる時点で凄いと思わないと」
『まぁ、そうなのですが』
俺が無詠唱でジャンヌを召喚したことに驚き、霧魔法を再び発動させようとしたクトゥルフの動きが止まる。
俺の計画まではまだ時間があるし、少し遊びますかね。
「さぁ、こっからは俺達のステージだ!」
後ろから角笛の音が聞こえてきそうな気がした。
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