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95話

開いた扉から出てきたのはヨレヨレのYシャツに身を包んだ四十代の男性だった。

「お前たち誰だ!?」

震える手に握られた剣がカチカチと音をたてタクト達に向けられる。震える剣の前にカグヤが立ち自分の双剣を地面に置き攻撃する意思がないことをアピールする。タクトもカグヤの行動に倣い自分の剣を地面に置いて男性の様子を窺った。男性からは敵意などは一切感じられず不安や恐怖といった感情が先だっているように思える。だから、危害を加えるつもりがないことをアピールすれば話し合いが出来ると思ったし、万一上手くいかなくても男性が剣を使ったことがないのは剣を構える姿を見れば分かる。ならカグヤに任せておけば安心だ!



タクト達が攻撃してこないと分かると男性は剣を降ろし額に浮かんだ脂汗を拭った。

「怖い思いをさせてすまなかったね。」

男性は部屋の中に剣を投げ捨てながらタクト達を部屋の中に招き入れた。


―――うわぁ~汚ねぇ………


部屋を見たタクトとカグヤは同じ事を思わず口走りそうになった。


「最近、賊に襲われたばかりで少々過敏になっていてね……。さあ汚いとこだが遠慮せずは入って座ってくれ!!」

と言われても足の踏み場もない。踏んでも良さそうなものの上を歩き部屋の中心で男と向き合うように座った。本に機械部品に工具、タオル、衣類。唯一の救いは食料関係の物が散らばってないことか………。


「教会に仕込まれていたホログラムについて聞きたいんですけど……えっとお名前は……?」

「ああ、俺はゲンジ。ホログラムが分かったってことは君たちも俺と同じ世界の人間か。」

ゲンジが神妙な面持ちになった。

「俺が……俺達がバカだった!謝って許されることじゃないのは分かってる!!だがこの通りだ………。頼みを聞いてほしい。」

「ちょ…ちょっと止めてください!!頭をあげてください!!」

ゲンジとは初対面のはずなのにいきなり土下座をされても困ってしまう。そもそも何に対し謝っているかも分からない。だけど、額を地面に押し付けている姿に、喉の奥から何度も絞り出される嗚咽混じりの謝罪からは真摯な想いが伝わってきた。後悔の念と自責の念が。

「わ、分かりました。出来る範囲でなら協力しますから!!」

「ありがとうありがとう!先ずはこれを見てくれ。」

ゲンジが乱雑に置かれていたファイルを手に取り丁寧に纏められた資料を見せた。

―――これは……

「これは薔薇の刻印と呼ばれている。この世界で『忌み子』と呼ばれる者達である証だ。」

差し出された資料を食い入るように読んだ。資料は『忌み子』について纏められていた。



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