8話
カグヤは気を取り直し魚の捕獲に挑戦していた。水底に潜む魚を見つけては剣で突いていた。水中の魚は素早くなかなか捕れないでいた。当然、水中から狙われている事にカグヤは気づくはずもなかった。
次の獲物を探し水中を覗き込んだ時ソイツは現れた。
(どうして此処にサハギンが…!?)
サハギンはその生態故に人里近くの水辺にしか生息しないはずだった。サハギンは成長過程が異常で有名である。生まれた時は鰓と鱗の生えた青い人間だが歳をとるにつれ足は尾びれに、手はヒレになり最後は巨大な魚になる。完全に尾びれになると繁殖出来る様になる。求愛行動も異常で人間そっくりに生まれるためか人間に対し、求愛する個体がいる。カグヤの前にいるのもその内の一匹だった。手がので成人してから間もないと思われるが体中に傷があった。縄張り争いに敗れ追いやられたのだろう。
人間の様な目でカグヤを見ながら分厚い唇をパクパクさせていた。口説いてるのだろうか?次にサハギンは二枚の舌をカグヤの足もとに伸ばして来た。その上には腐った魚が乗っていた。一匹や二匹では無い、軽く二十匹は越えており臭いもかなりのものだった。狩りが下手なサハギンは口の中に餌を蓄える習性がある。つまり口の中に餌が沢山あるのは狩りが上手い証拠であり異性に対し、最大のアピールポイントなのだ。(サハギン同士ではだが…)魚を受けとれば求愛成功だがカグヤは受け取らない。いくら狩りが上手くてもサハギンからの求愛はお断りだった。普通なら諦めて帰るのだかコイツは違っていた。受け取らないと分かるとまた口をパクパクし始めた。魚を捨てると二枚の舌をカグヤの脚に巻き付けた。
「キャッ!」
脚を引っ張られ転倒しサハギンの口に向かい引き摺られていく。サハギンは脚を咥えると水中に戻って行く。伴侶を得たと思い悠然と棲みかに泳いで行くサハギンの目に剣を突き刺した。あまりの激痛にカグヤを放し縦横無尽に泳ぎ回わり血の軌跡が残っていた。
ぷはっぁ!!
酸素を肺一杯に取り込むと陸に向かい泳いだ。その後をサハギンが追う。カグヤの側をサハギンが遊泳している。動きを止め再び舌を伸ばして来た。その動きは緩慢で簡単に斬られた。舌が無くなったサハギンはカグヤに向かって口から液体を吐いた。何発も何発も。地面には液体が広がっていく。次の一発を避けようとしたが動けず直撃した。痛みはさほど無いが衝撃で剣が宙を舞い地面に突き刺さる。サハギンの放った液体はドロドロして粘着力が強かった。口に魚を蓄えるための液体だろう…固定出来なければまとめて飲み込んだり餌が生きていたとき逃げられるのを防ぐ事も出来る。両手の自由は奪われ地面に貯まった液体を踏んでおり脚も自由に動かない。サハギンはカグヤが逃げれ無くなったのを確認すると陸に上がり歩きだした。サハギンは短くなった舌に緑色の液体を漬け液体に垂らしていく。すると粘着力が無くなり自身が捕まる事なくカグヤへの距離を縮めれた。
舌が再びカグヤに絡もうとした時、サハギンに体当たりする影があった………タクトだった!
その手にはカグヤの剣が握られており、柄の部分まで深く刺さっていた。そのまま下方に向け力一杯押した。切り裂かれた所から大量に出血し剣と一緒に出てきた内臓を浮かべていた。サハギンは横転し、痙攣した後動かなくなった…。
「ま、まにあった~~」
数歩後退し座り込んだタクトは力なく震える手で剣を持っていた。




