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74話

六人掛けテーブルにメーニャと向き合うように座った。白いティーカップに注がれた紅茶には誰も手を着けず香りを楽しむだけのものになっていた。

「……異世界の人の持つ力について……ですよね?」

重い口をメーニャが開いた。メーニャが言った通り今日ここに来たのは異世界の力について教えて貰うためだ。

「そうですけど……あの、護衛の方々の数が多い気が……」

前に会ったときもボディーガードの人間を数人連れ回していたが今日は特に数が多い。左右の壁に隙間なく並び中央に座るタクト達を注視している。

「気を悪くさせてごめんなさい。昨日あんな事があったばかりだから父が過保護になりすぎてて……」

メーニャの目が泳いでいる。それだけじゃない。今、この闘技場で使われていたモンスターは先の事件でいなくなってしまった。ここまでのボディーガードをつける必要はない。今の言葉が嘘だと判断するには十分だった。

「それで異世界の力についてですよね。えっと、簡単に言ってしまえばモンスターを使役する力とでも言うのでしょうか……」

「モンスターを使役……?」

「使役と言うと語弊があるかもしれません。対等な関係……まるで友達とでも言うような関係を築いていたのです。」

「そんな事が出来るんですか?」

「いいえ、私の知る限りモンスターに分類される生き物とそのような関係になる術はありません。しかし、タクトさんと同じ異世界の方にはそれが出来ていたのです。」

「メーニャさん……アナタ、タクト以外の異世界の人に会ったんですか?」

「カグヤどうして?」

「さっきからメーニャさんの言い方が実際に見たような言い方だったから……」

メーニャの次の言葉を待った。ただただ静かにその唇が動くのを待った。

「元々、異世界の人についての噂はある程度知っていました。ですが実際に見るまでただの噂だと思っていたんです。私がタクトさんを欲しいと言った理由は何だと思います?」

「理由?闘技場で戦わせるとか?」

「それはそれで面白そうですが…。このトリューネ街の近隣にはヴァイン街とラナミル街という大きな街があります。その二つの街の中間にはオーク族が住んでいるのですが近頃、オーク族がラナミル街に進軍を始めたのです。」

「オーク族とラナミル街が戦争しているということ?」

「そうです。我々トリューネ街とヴァイン街も協定に従い支援物資の供給という形で協力しているのですが……」

そこでメーニャは言葉を切った。次第に深刻な顔になっていく顔を見れば状況が良くないことは容易に想像がつく。

「オーク族が優勢なんですね。」

沈黙が肯定を告げる。

「それで異世界の人というのは……?」

「前々回の支援物資を届ける時にこの闘技場の私を含めた警備の人間が護衛に付きました。その時、戦場で見たのです。異世界の人を。信じられなかった……異世界の人はミノタウロスと共に戦場で戦っていたんです。」

「オークじゃなくてミノタウロス……?」

「はい。その力を使いオーク族を手中にしたのです。異世界の人は友達と遊んでいるかのようにラナミル街の人を殺し、ミノタウロスは人間のように会話していました。このコンビがラナミル街の陣形を壊しそこからオークが突撃する。この二人を止めない限りラナミル街は敗北するでしょう。」

「だから僕に対向戦略になれ、と……」

「お願いします。タクトさん。私達にも異世界の加護をお与えください。」

メーニャの額がテーブルについている。ラナミル街が落ちたら次はこの街が標的になる可能性がある。今のうちにオーク族を……ミノタウロスを止めたいのだろう。

「カグヤ、帰るよ?」

「待ってください!!お礼は必ずしますからっ!」

メーニャの言葉は受け取り手のいなくなった部屋に虚しく響いた……。

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