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67話

朝からカグヤの機嫌が悪い……。昨日、胸が小さいことを馬鹿にされたのが原因なのは分かってるが特に今回は大きな胸を見せびらかされたもんだから余計にイラついている。カグヤのハンポ後ろを歩くタクトも気が気ではなかった。これから元凶の女性に会わなくてはいけない。会った瞬間に爆発しないか。そもそも、今日の試合に参加する理由を忘れてないか……。タクトは面倒事にならないことを祈りつつ会場の入口で陣取っている集団に視線を向けた。


「漸く来たわね。待ちくたびれたわ。」

昨日会ったときと同じく金髪の女性の周りにはボディーガードがついているが、今日は試合に出場するため金髪の女性も武器としてロングソードを背負っている。

睨み合う二人を宥め受付へと向かう。

「メーニャ様、おはようございます」

受付の男性が腰を曲げ深々と挨拶してきた……。

「メーニャ……様……?」

「そういえば自己紹介がまだだったね。」

タクトの方を向きメーニャと呼ばれた金髪の女性は気品のあるお辞儀をする。

「改めまして、メーニャと申します。この闘技場のオーナーの一人娘……ですっ!」

受付の男性に目線を送ると肯定の返事が返ってきた……。

ボディーガードにも同じ視線を送ると同じく肯定の返事が返ってきた……。



「さて、ナイチチお化けさん、どの試合にする?私はどれでも良いわよ?」

「ナッ……ナィ!?………」

カグヤの顔が一気に紅潮し拳がぷるぷると震えている。

「これで出場登録お願いします。」

受付の男性に申し込み用紙を書いて提出する。七試合予定されているなかの六試合目に出場希望を出す。

「……カグヤ…様ですね。六試合目ですね。ハイ、問題ありません。出場承りました。」

カグヤが受付から申し込み用紙をひったくり内容を慌てて確かめる。

「ちょっとー!どうして勝手に決めるのよ!?」

「早く決めないと受付のお兄さんが困っていたから」

「しかも、パドックの相手が何でハイゴブリンになってるのよ!」

愛想笑いを浮かべている受付の男性に申し込み用紙を返しながら不満を訴える。メーニャと張り合っているから自分の力を誇示したいのだろうがそんな事をされては困る。

「ハ、ハイゴブリンですって……。ププッ、ウチの闘技場のパドック用モンスターの中で最弱のモンスターじゃあ~りませんか!」

メーニャが笑いを堪えながら申し込み用紙に必要事項を記入していく。カグヤと同じ六試合目。パドックの相手に選んだモンスターはフォレストスコーピオン。

パドック用に用意されたモンスターの中ではトップの実力を持っている。

改めてこの闘技場の相続権を持つ女性を見るがとてもそこまでの実力があるようには見えないがフォレストスコーピオンを相手に選んだし、勝負を吹っ掛けて来た。自身の力に自信を持っているのだろう。




「あ~~~の女、ムカツクムカツクムカツク!!」

遅めの食事を乗せたテーブルの上にカグヤが伏せている。揺れるテーブルの上の食器がカチカチと音を立てているがタクトは並べられた料理を堪能しながらカグヤの愚痴に耳を傾けた。

「何でハイゴブリンなんか選んだのよ?お陰で完全にバカにされたんだけど……?」

「……ナオキから言われた事を覚えてないの?」

「覚えてるけどそれとこれは別っ!!」

ストローを尖った口で咥えチビチビとジュースを啜っている。

「別って……。この街に来た目的の半分はこの試合のためなんですけど……?」

「分かってる。分かってるけど……タクトも馬鹿にされっぱなしは悔しいでしょ!!」

「馬鹿にされたのはカグヤの胸だけだろ?」

「ごめん、よく聞こえなかった!もう一度、覚悟を決めて、ハッキリと言ってくれるかなぁ?」

「まぁ冗談は置いといて勝ち進めば最終トーナメントで当たるんだからそこで決着をつければいいでしょ?」

「ハイハイ、分かりましたよー。計画通りにやればいいんでしょ!」

すっかり冷めてしまった肉を囓るカグヤ。一足先に食べ終えたタクトは空いた食器をテーブルの端に積み重ねながらカグヤが食べ終わるのを待った。注文した料理が全て空になった時にはカグヤのパドック開始の時間が迫っており急いで店をでた。

「時間ないから急ぐよ!」

「食べ過ぎた……。無理、動けない。」

カグヤの腕を掴むと会場へと駆け出した。

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