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55話

カグヤは病室のベッドから拠点にある自室のベッドへと移り慣れた自室の雰囲気に一息ついた。

「それじゃ治るまでちゃんと安静にしててよ」

「子供じゃないんだからちゃんと大人しくしてるってば。それにこんな体じゃ何も出来ないでしょ?」




カグヤの部屋を後にしナナにカグヤの看病を頼むとタクトはナオキの元へ向かった。

「お待たせ。」

「遅いぞ、タクト。」

ナオキと合流したタクトはロウガと共にウイグル街へ赴いた。先日の蛾のモンスターの襲来で荒れた街の片付けの依頼が入ったからだ。始めは住人が個別に依頼に来ていたが数が多く対応しきれないため、区域毎にグループに分けて依頼を受けることにした。これまでは捌ききれないほどの依頼が入ったことは無かった。今回これだけの依頼が入ったのはロウガがモンスターを討伐したこと、それを大勢が目撃していたこと、そしてロウガがnoccsのメンバーだとナオキが宣伝して回ったのが大きな要因になっている。だけど、今回の事件で一番noccsが変わったのはナオキの綻びた顔の先にあった。一足先に来ていたマコとウィルが住人と話しをしている。タクト達三人もその輪に加わった。今まではこんな情況はあり得なかった。ロウガもウィルもモンスターに分類される種族。住人と話しをするどころか街に入るのも敬遠していた。そっと住人の顔色を窺うかが警戒や怖がっている人もいるがあきらかな敵意を向けている人は一人もいなかった。


{noccsを『忌み子』の居場所にしたい}

ナオキが以前言っていた言葉を思い出した。カグヤだけでは収拾が出来なかったとはいえロウガが街中で戦うのはナオキにとって大きな賭けだったのかもしれない。もしロウガ達の存在が受け入れられなければナオキの居場所を造るという目標は少なくともウイグル街周辺では叶わなくなっていた。けど、この街の様子を見ればナオキが賭けに勝ったのは明白だった。それにタクトは知っている。例え勝てないと分かっててもタクト達が危ないと分かったなら賭けに出ていてくれたことを‥‥‥。ナオキが誰よりも仲間想いだということを‥‥‥。そんな親友の顔を見ると目が合った。

「なんだよ?人の顔を見てニヤニヤ笑って‥‥。」

「笑ってなんかいないよ!」

「始めに言っておくが俺にそっち系の趣味はないからな!」

「変な勘違いするなっ!それにそっちの趣味は僕だってないよ!」

タクト達は話し合って決めた役割に従い街の片付けに取りかかった。

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