49話
タクトとマコはウイグル街にある武器の専門店に来ていた。数ある武器の専門店でここは下の中。値段は安いが粗末な武器が並んでいる。棚に並んだ武器を一つ一つ品定めしながら見ていく。
「ねぇ。タッ君は何で剣の訓練を始めたの?」
「キッカケはただの護身の為だよ。ドームにいたときと違って危険が沢山あったからね……。」
「じゃあ今、訓練しているのは何で?」
「それは………教えない」
タクトの横顔を見ると一本のナイフを吟味しているが今タクトの目に映っているのは一人の女性なのは直ぐに分かった。…………勝てない。マコの中に敗北感が押し寄せてくる。
「これ何かどう?長すぎず良く斬れそうだけど……?」
「うーん…そうだね。握りやすいし……。これにする」
「しかしまぁナイフ何か買ってどうするの?」
「依頼で遠出したときとか包丁の代わりになるし、いざって時には武器にもなって便利でしょ?」
会計を済ませたマコの手にはナイフと別売りのホルスターが握られていた。二人は店を出ると人気の無い路地裏に入るとホルスターを着け始める。上着を脱ぎタクトに持っていて貰い革のベルトを巻くが、ずり落ちてしまう。大きめの『男性用』を選んだのは失敗だったようだ。仕方なくナイフで丁度良い位置に穴を開けて装置する。上着を着てナイフが隠れたのを確認すると大通りへと出た。
「サイズ、大きかったね。」
タクトの言葉に腰に感じる重みに意識を向ける。
「小さいよりは大きい方が良いってタッ君も思うでしょ?」
「そりゃあ……小さいよりは大きい方が良いよ。」
「そうでしょ?大きいのは何とでも調整出来るんだから。」
人の流れに乗って大通りを歩いていく。沢山の店が並んでおりその中の一つ、白を基調に作られたレストランへと入り日の光が良く当たる窓際の席で食事をした。マコが食事の手を止めタクトへと視線を移す。鶏肉を頬張りソースで汚れたタクトの口をナプキンで拭いていく。この後は日用品を買って帰る予定だが、今日は気持ちの良い陽気なのに帰るのは勿体ない……。タクトは思ってないだろうがデートのつもりで来たのだ。もう少しだけ長く居られる事を望んだ………。
「あの~ナナさん、この枷外してくれないかな?歩きにくいし、変な目で見られて恥ずかしいんだけど!?」
「あぁ~~~~良い!恥ずかしがるカグチーの顔、美味しそう。恥辱プレイもアリね!!それにタクの事になるとカグチーは暴走するから枷は外さないよ?」
カグヤは諦めタクトとマコを探す。人が多いが毎日あれだけ見てきたタクトを見落とす筈も見間違える筈も無いと人混みを、店の中を、交差する路地を見ていく。
「………見つけた!」
「えっ!?どこ?」
「あの店に入っていった。」
カグヤが見つけた店の前へと移動する。その店は木造の小さな建物で武器を専門に扱う店だった。
「確かに中にいるね。何か楽しそうに話してる。」
「むーーっ。私と話ししている時の方が楽しそうな顔してるから」
「カグチーの膨れっ面、可愛い……」
小さな窓から店内を覗くとタクトとマコが商品を品定めしていた。この店は刃物系を中心に販売しているようだが質はあまりよくなかった。二人は向かいの店に入りタクト達が出てくるのを待った。暫く見張っているとタクト達が店から出てきたのでその後を離れてついていく。
「………タクがマコ姉を脱がせてる……。」
「えっ!?ウソウソ嘘!タクトがそんな事する筈ないって」
人気の無い路地裏に入ったタクト達を見ていたナナからの報告に身を潜めていたカグヤが身を乗り出してタクトを見る。マコの姿はタクトの陰になり見えないがタクトの手にはマコの上着が握られている。
「ちょっとカグチー!見つかっちゃうから、隠れててっ!」
「きっと何か事情があるんだよ……」
「人気の無い路地裏で女の子を脱がす事情って?マコ姉のあのオッパイだよ!?男なら誰でも揉むでしょ?」
事情を必死に考えるが何も思い浮かばない。次第にタクト達の足音が近づき息を殺して隠れる。
「小さいよりは大きい方が良いってタッ君も思うでしょ?」
「そりゃあ……小さいよりは大きい方が良いよ。」
………聞こえてしまった。タクト達の会話が。タクトは大きい方が良いのか……。自分の胸に手を当てて確認する。その姿を嬉しそうに見ていたナナがカグヤの胸に手を当てる。
「どれどれ……カグチーの胸の大きさは………っと………」
「小さくないよね!?ねっ!?」
「………………小さいと思ってたけどここまで小さいとは…………」
「ちょっとぉ!憐れんだ顔しないでぇ!!」
「ごめん、ごめんねぇ。でもアタシはカグチーの味方だよ!だってアタシの中で『小類憐れみの令』が発令されたから!」
「余計凹むから止めてぇ!!」
「世界中の皆々様!小さき者(胸限定で)を大切にするのですっ!!!」
「もうそれはいいから!早く追いかけるよ!」
大通りに出てタクト達の向かった方角を見るが二人の姿はなくなっていた。
「……ハァ……見失った……」
「カグチー………アレ……」
ナナが指差す先にはレストランがあった。その店の窓際の席で食事をしているのはタクトとマコ。
「うひゃー。何だか恋人みたい……。」
タクトの口をナプキンで拭いていくマコを見てナナが声を洩らした。
「…………帰ろう……」
ナナを連れて来た道を戻り拠点へと向かってトボトボと歩き出した。
「もっとたのし……見てなくていいの?」
「……うん………」
「……苦しくなっちゃった?」
「………うん……」
拠点に戻ると真っ直ぐに自室に向かい双剣を外し靴を脱ぐとベッドに倒れ込んだ。枕に顔を埋めると食事をしていた二人の姿が蘇ってくる。タクトの世話を焼くマコの顔。その顔がどうしても幼馴染みを見る顔に見えなかった……。もし本当にマコがタクトの事が好きだったら……?二人キリにさせない方が良かったんじゃないのか……?タクト達と合流した方が良かったんじゃないのか……?
「なんで帰って来ちゃったんだろ……」
…………分かってる。目の前で二人が仲良くするのを見たくないから……。タクトが自分よりマコを優先するのが恐いから…。ただそれだけ………。




