44話
地面に仰向けに寝転がり空を見上げる。木々の隙間から見える雲が綿菓子のようだ。浅く早く呼吸するが追い付かない。額に玉のように浮かぶ汗を拭おうとすると腕にできた紫色の痣が痛みを訴えた。
「大丈夫?」
木漏れ日を遮り人影がタクトを見下ろした。タクトと試合をし、斬り伏せた相手は呼吸すら乱さず余裕の表情だ。
「……大……丈夫……。す……こし、休ま…せ……て……」
ロウガが帰ってくるまでの間、タクトはカグヤに剣の特訓を申し込んだ。リタ村でもカグヤと剣を交えたが、その時よりも速度も斬撃の重さが増しているのはタクトが強くなったからか加減を間違えたからか……。
「あーーーー!!!タクトがカグヤちゃんのスカートの中を覗いてる!!!!」
ナオキが叫びながらナナとガウスと歩いてくる。カグヤがスカートを両手で押さえながらキッと睨んでくる。
「ワリィ……。ツッコム体力もないわ~」
手をヒラヒラさせながらナオキに答えるとナオキが残念そうな顔をした。
「で、タクト達はこんな所で何してるんだ?」
「剣の訓練だよ」
カグヤが手製の木剣を見せた。リタ村で使っていた模造武器は売ってしまったため急遽、拵えたため見栄えはあまりよろしくない。
「なるほど。タクトを剣で叩いて楽しんでいた、っと……」
「そんな事言ってないからね!!?」
「カグヤ……」
「カグヤちゃん…。」
「カグヤ様!」
熱い熱い羨望の眼差しが漂っているがそれは無視。
「情けないぞー!カグヤちゃんは息も切らしてないのに、立てないなんて!」
「ほっとけ!カグヤのスタミナが異常なんだよ!」
「情けないぞー、タク!カグチーに叩かれて勃てないなんて!!」
「こらぁ!ナナン。今、不適切な漢字を使っただろ!」
立つ、建つ、起つ、発つ……?頭の中で漢字を変換していくカグヤが首を傾げる。どれもしっくりこない。
「……同類!!」
「お前と一緒にするな!」
親指を立てウインクするナナにタクトが吠えた。
「タ、タクト。タクトもその~~~い、痛い!のが好き……なの?」
漢字の変換が終ったカグヤが顔を赤らめモジモジしながら尋ねた。
「違うからぁ!!!!ナナンが勝手に言ってるだけだからぁ!」
「そう、よかった……。」
「よかったって何?もしかして、タクトを苛めるよりタクトに苛められたかった……とか!?」
「変な事、言わないでぇ!!そんな事思ってないから!!」
「ふぉぉおおぉ!アタシとっ!アタシと楽しもう!タクよりアタシと楽しみましょう!今晩、いえ、今すぐ此処で!」
タクトはナオキに手を貸して貰い立つとカグヤに抱きつくナナの首を掴み引き離していく。
「ふっふっふ、カグヤちゃん。ここで会ったが百年目。亡き友・タクトの仇を今、ここで晴らさせてもらう!!」
タクトの木剣を拾い鋒をカグヤに向けた。
「勝手に殺すなよ。あと、さっきから目の前にいるから。」
「ほほぉ。お主は確か………あの時、タクトと一緒にいたヒヨッ子か。いいだろう、タクトと同じ場所へ送ってやろう!!」
「えっ!?カグヤ、乗っかるの??」
カグヤが木剣を構えるとナオキが剣を振りかぶった。身長差を利用した一撃。
「イッテーーー!!!!タイム、タイム。カグヤちゃんタイム。」
……瞬殺。脇腹を押さえながらナオキが叫ぶ。ナオキが剣を振り下ろすより速くカグヤが胴を薙いで終った……。
「フッ、所詮ヒヨッ子はヒヨッ子だったか……。」
「あっ。まだそのノリ続いてるんだ…。」
「いいでしょ!たまには!」
「まさか、ナオまで負けるとは……。」
リタイアしたナオキの代わりにナナがカグヤの前に立った。手には荒縄が握られその先端には手枷が結ばれている。
「性格がアレだからナナさんとは、戦いたくないんだけど……。」
「いきなり言葉責めとは!!さすがカグチー!!でも勘違いしないで!戦うのはアタシじゃないわ。アタシ達よ!来なさい、ガウス!」
「嫌だのぉ。」
「キャラ設定!」
「嫌だゲコ。」
「えっへっへっへ!アタシ達のコンビ技『縛師の舞』を受け恥辱に満ちた姿を晒しなさい!!」
下衆な笑みを浮かべるナナに対し爽やかな笑みを浮かべるカグヤがタクトに手招きしている。カグヤに呼ばれ小走りで行くと木剣を渡された。
「タクトはナナさんをお願い。私があの蛙を殺すから」
カグヤの手には愛用の双剣が握られている。眩しく輝く刀身が切れ味の良さを物語っている。
「ダメだからぁー!」
本気の目をしたカグヤ。タクトは木剣を投げ捨て、カグヤの両手を掴み制止する。
「離して!!あの蛙を斬れば世界が平和になるの!」
「ダメだって!!ガウスもnoccsのメンバーなんだから!」
「………そうね。ガウスもnoccsの仲間だもんね。私、決めたよ。仲間だからこそ私がガウスを輪廻転生させてあげる!」
「そんな決意しなくていいから!ガウス、早く拠点に帰って!!」
「タクト君、ありがとうゲコ!!」
ガウスが急いで拠点の中に入っていき、その後をナナが追った。ガウスの姿が見えなくなるとようやく双剣を鞘に戻すがその顔は不満そうだ……。
「なんで止めるの?」
「いや、普通に止めるでしょ。でも、カグヤとガウスが戦ったらどっちが強いんだろう?」
「勝つのはガウスだ。」
答えたのはナオキだった。
「どうして?カグヤは黒で、ガウスは白でしょ?カグヤの方が強いんじゃあ?」
「『忌み子』の刻印は身体能力を強化するだけだからな!黒は強化率が一番高いけど元々が身体能力の低い人間だからガウスには勝てないんだよ」
納得したタクトはカグヤに向き直って言った。
「『忌み子』との戦闘は禁止だから」
「そんな!じゃああの蛙はどうやって殺せば!?」
「殺さなくていいからっ!!」




