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40話

「改めて紹介するな。こっちの茶髪がマコ、俺らの中で一番の年長。パートナーはフライングレオのウィル。」

「カグヤちゃん初めまして。タックン久し振り。少し逞しくなったね。」

「タクト君、カグヤ君よろしく。『忌み子』としては赤色だ。」

「こっちのショートヘアがナナ、パートナーがマグナフロッグのガウスだ。」

ナナと呼ばれた少女とガウスが挨拶のために前者に倣い一歩前に出た。それに合わせカグヤが一歩後ろに退いた。

「…?カグヤ?」

服を後ろに引っ張られタクトが振り返ると真っ青な顔をしたカグヤがいた。彼女の視線は一点に止まらず上下左右を世話しなく走り回っている。

「アタシはナナ。好きなものは美少女~。カグチー、綺麗な肌してるね。舐めてオーケー?」

握手しているカグヤの手を舐めようとするナナの頭をマコが叩き、その行動を制する。

「あら、マコ姉、妬きモチ~?安心して、アタシは美少女の味方。さあ、その美乳でアタシをパフパフしてっ!」

「す る 訳 無いでしょう~」

マコのスリーパーホールドが見事にナナの首に食い込んでいる。

「苦しっ!苦しいっ!!あっ!でも、この背中に当たる二つのシュークリーム……ぐぇっ……。」

首を更に強く絞めていく、マコの腕をナナがタップしている。客観的に見ると完全に首を絞めているがその顔に浮かぶのは恍惚の表情。もう少し続けていたら落ちるだろうという頃にナオキが止めに入った。首を絞めていた腕から解放されたナナがその場に崩れぜぇ…ぜぇ…と大きな音で呼吸をし体に酸素を送っていく。

「び、美女からのお仕置き……。悪くない。いえ、寧ろアリね。エ~クスタスゥィィイィィ~~~!!!!」

折角、体内に還ってきた酸素を絶叫で吐き出すナナの頭をナオキが叩いた………。

―――懐かしい光景。

元の世界ではよく目にした光景。ナナンが馬鹿をやり、ナナンをマコ姉が叱責する。叱責するマコ姉にナオキが適度なとこで仲裁に入る。 何回も何回も見てきた光景。この世界に来ても三人共変わってない…………いや、個人としては変わったのかも知れないが三人の関係は変わらずにいた。それが嬉しくて嬉しくて思わず口から小さな笑みが零れた。この空間でそれに気づいたのはタクトの背中にしがみつくカグヤだけだった。


「騒がせてすまぬのぉ。マグナフロッグのガウスだのぉ。よろしくだのぉ。」

手を握りタクトはガウスと握手を交わした。

「それと刻印は白だのぉ。」

ガウスは立ち上がり腹に印された刻印を見せた。

「ヒィ…」

背中から小さな悲鳴が聞こえた。

「よろしくだのぉ。」

カグヤにも握手を求めガウスが手を伸ばしてきた。が、その手を握ってくれるものは誰もいない……。

「カグヤ、もしかして蛙が怖いの?」

「こ、怖くはないけど……見た目が気持ち悪くて悪寒が……。」

ガウスから哀愁のオーラが濃密に出ている。

「よく見れば気持ち悪くないって?」

「ムリムリムリムリ!生理的に絶対ムリーー!あの半分だけ飛び出した目を見てよ!横に潰れた瞳をギョロギョロ動かして気持ち悪い。あの横に裂けた大きな口に長い舌、気持ち悪い。正面から見るといやらしい人間みたいに見えて気持ち悪くない?種族が違うのにだよ?あと、あの体表を見てよ!微妙に濡れてるし、ブヨブヨした種類やブツブツがある種類もいるんだよ?あの背を見てよ。どうして一角だけ盛り上がってるのよ!あの前脚に比べて異様に長い後ろ足。生々しくて気持ち悪いし、後ろ足にしか水掻きがないとか訳わからないし、前脚は前脚で腕の太さの割りに細長い指して指先は膨らんでて気持ち悪い。」

「カグヤ、そろそろ止めてあげた方が……」

「立ってるときは常にM字開脚してるし、鳴く時に喉や頬を膨らませるとかブーブークッションでも詰まってるの?卵はブヨブヨしたものにウジャウジャ産み付けるし、交尾したい時だけ鳴くとか盛り過ぎ。オタマジャクシから変態して変態になるなんて完全に進化ミスでしょ。それにゲロゲロって鳴き声。吐瀉ぶ……モガッ」

言ってはいけない事を言いそうな口を手で塞いだ。口を塞がれたカグヤがモガモガ言ってるが恐らく「何するの?」って言ってるのだろう。そっと部屋の隅で丸くなっているガウスを指差した。ガウスを慰めていたナナが顔を真っ赤にして迫ってくる。パートナーを侮辱されれば怒るのも当然だ。

「カグチー、アタシの事も罵って!さぁ!早く!さぁ!!」

マコに説教されている嬉しそうなナナを尻目にガウスへの謝罪を勧めた。カグヤも悪いと思っているようで素直に受け入れてくれ震える手でタクトの手を掴んだままだが謝罪はしてくれた。

「ガウスさん。取り乱して失礼な事を言ってしまいご免なさい。」

嫌悪感の満ちた目を隠して謝罪して欲しかった……。

「いいゲコ。気にしてないゲコ。」

ゲロゲロからゲコゲコに印象を塗り替えようとしているのだろうか?中々、努力家な蛙だ。カグヤには逆効果だが……。今にも「急にキャラ作りして気持ち悪い」とか言い出しそうな雰囲気だ。タクトはナオキに場の空気を変えてくれるようアイコンタクトでSOSを送った。


「それじゃあ、自己紹介も済んだ事だし。タクト達も加わって騎士団も軌道に乗せたいから騎士団に名前を着けようと思う。『忌み子』達がメインだから『忌み子達の騎士団』という意味で『Night of cursed Children』から頭文字を取って『noccs』と名乗ろうと思う。『s』は響きがいいから着けただけだが。今、この瞬間から『noccs』始動だーー!」

勢いよく拳を天に突き上げ団名を叫ぶナオキに申し訳ない様子でマコが口を挟んだ。

「『N』はどこから来たの?」



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