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31話

「カノンちゃんが来てくれたのはお祝いなんかじゃなかった。カノンちゃんが来たのは……私を殺すためだった。驚いたよ、家に火は着けられるし、無頼漢の集団に襲われるし……。炎の中で『あんたといると不幸になる。あんたは私の幸せを奪っていく。これ以上奪われたくない。だから、ここで死んで』って叫ぶカノンちゃんの姿は今でも脳裏に焼き付いてるよ。その無頼漢の集団の中に私と同じ『忌み子』がいたの。右手に黒い薔薇の刻印を宿して大きな鎌を使う黒い服の妖しい女性だった。その人が教えてくれたのカノンちゃんが虐めの主犯で裏で色々と虐めの方法を画策して楽しんでた事、落ち込んでいる私に近づいて慰める振りをして裏で馬鹿にしてた事を。それにもう一つ重要な事を教えてくれた。『忌み子』じゃない普通の女の子として生きる方法を……。」

「それが『D・A』?」

「そうだよ。彼女が案内してくれた場所には金属を組み合わせて作った物があってね…確か『きかい』って呼んでた。この世界には無い技術で作られてるって。その『きかい』の付属の金属製の台で寝るだけで普通の女の子として、『D・A』って名前の別の世界を生きていける…そう教えられた。別の世界っていうのが怖かったけど、この世界で生きて行くのも辛かったから『D・A』の世界に行くって決めたけどね。『D・A』の世界では確かに『忌み子』としての能力は無くなってた。その代わり最初は何も無い世界だった。地面も空も色も無い暗闇の世界だった。暗闇に閉じ込められ頭が変になりそうだった。『忌み子』だった時は周囲の人間は敵だらけ…味方のいない孤独。『D・A』の世界では周囲に誰もいない孤独。両親が亡くなってから死ぬまでずっと孤独なんだって思った。どれ位の時間が経ったか分からないけど孤独だった私を…暗闇に閉じ込められた私を救ってくれた人がいるの。その人と出逢って世界に空が出来た。地面が出来た。世界が色鮮やかに輝いた。制限はあったけど話し相手が出来た。その人と話して『D・A』がアプリってゲームの世界だって知った。その人が友人達とどんな話をしているのか知った。友人達とどんな生活をしているのか知った。友人達とどんな遊びをしているのか知った。私の経験した事のない事を知れる幸せな時間だった。………羨ましかった。けどね、それだけじゃなかった。ガラスの向こう側にいたその人かは触れることが出来ない存在だと思っていた。けど、その人は今、隣にいて手を握ってくれる。抱きしめてくれる。……少しだけスケベなのが欠点だけどね。それでも『忌み子』として、また生きていかないといけなくなった私を孤独から守ってくれる大切な存在と出逢えた。これが私と『D・A』の関係だよ。」


タクトは頬に手を当てた。………熱い。今度は両方の頬が……いや、顔全体が赤くなったるだろう。先程とは違い痛みはない。……が、気恥ずかしさは尋常ではない。気持ちが舞い上がっていく。……ただ、納得のいかないことがあった。

「………スケベじゃないから!!!!」



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