24話
――狩神祭当日
あの晩から忘れてる「何か」を思い出せず祭当日を向かえた。思い出せないものをいつまでも考えてても仕方ないので気持ちを切り替える。トーナメントの初戦の相手がコルガである。力量差は分かってるつもりである。間違いなく勝てないだろうが何もせず負けるつもりもなかった。
会場の広場に向かうと高さ一メートル位の円形の舞台があり周囲を囲む様に五人掛位のベンチが並べられていた。屋台からは強い風に乗って美味しそうな匂いが運ばれてくる。空を見ると黒い雲に覆われ今にも雨が降るのも時間の問題であった。
雨では中止にならないが雷が鳴れば落雷の危険があるので中止になる。にも関わらず時間になっても始まらないどころか「今暫くお待ちください」とアナウンスが入った。
「タクト君、この間はありがとね!」
差し出された二つのジュースを受け取り片方をカグヤに渡す。タクトの横に座ったこの女性は前回のゴブリン討伐で後衛の指揮を執ったレイアであった。カグヤにレイアをレイアにカグヤを紹介する。
「ヘェ~この子が噂のケンタウロスを討伐した子かぁ」
『忌み子』の事は秘密になっているのでケンタウロスを討伐した事だけが噂として広まったようだ。
「とてもそんな風には見えないわね~」
同感だ。何度見てもこの華奢な体のどこにそれだけの力があるのか不思議でならない。
「トーナメント表見たよ~。タクト君、運無いねぇ~。アハハハ~」
笑われた…。カグヤも一緒になって笑っている。カグヤを見ていると何故だか悔しくなってきた。
「ところで、どうしても遅れてるんですか?」
「それは………アレよアレ。」
レイアの指差す方を見ると馬車が続々と入って来た。ナタール町からの参加者と観客の到着を待っていたみたいだ。
ナタール町の町長とリタ村の村長が並ぶと圧倒的存在感を醸し出す。ナタールの町長はリタ村の村長より更に大きく百キロ越えていそうだ。二人が登って行く舞台に掛かる階段も苦痛の声を響かせている。二人が舞台の中央に立つとアナウンスにより開幕が告げられ二人の長により挨拶が行われた。
「えー、我がナタール町とリタ村との協力また、長く築き上げてきた信頼関係により今日『狩神祭』を開催出来た事に心よりお喜び申し上げます。」
「うるせーぞ!引っ込め、デブ長ども!!」
観客席から野次が飛び出した。皆が一斉に野次の発信者を見るとナタール町から来た四人組の若い男だった。馬車の中で飲んでいたのか既に酔っぱらっている。皆の失笑の中、長達の挨拶が終わりトーナメントが始まった。
「それじゃぁ、行って来ます」
「うん、頑張ってね」
カグヤに見送られタクトは舞台に向かった。




