2話
タクトにとってカグヤはアプリの中の存在でしか無かった。親友に教えて貰ったアプリ、今一番熱中していたアプリ…『D・A』
このアプリの特徴は2つ。1つめはパートナーとなるキャラは個人専用でキャラ被りする事がない。2つめはパートナーは人工知能を有しており会話が可能。会話やキャラにタッチしコミュニケーションをとったり戦闘を繰り返す事で学習しパートナーが強くなっていく育成ゲームである。
パートナーは人間以外にも動物や空想上の生物から選ばれる。タクトのパートナーに選ばれたのがカグヤだった。始めてカグヤを見たときタクトは一瞬で心を奪われた。淡い桃色のロングヘアー、左側頭部には水色のリボンが結ばれており大きいな蝶が止まっているかの様に思えた。顔立ちは整っており青い瞳の眼は優しい印象を与えた。白いシャツの上には紺色のブレザーを着ており首からは控えめにいっているも大きいとは言えない胸まで赤いネクタイが垂れていた。グレーのスカートから伸びる細い脚には脹ら脛の中間までの長さの黒のハイソックス、白いスニーカーが身に付けられていた。これだけを見ると女子高生だがその腰には双剣が携えられていた。鳥の翼をモチーフにした装飾が施され中心に赤い宝石が埋めらていた。男性陣からは妬みの籠った目、女性陣からは蔑みもしくは哀れみの籠った目で見られても気にならない程テンションが上がっていた。
その彼女が目の前にいる。身長こそ160センチ位になっているが他はそのままだ。
(ここはアプリの中なのか…?それとも、他人の空似?)
タクトは浮かんできた疑問の回答を得ようとカグヤに視線を戻した。その時…
ビュォォオォォ~
一際強い風が吹いた。そしてこの風によりカグヤのスカートが乱されたのにタクトは気付いた。細く白い太ももが露になっている。それも際どい位置まで…
(もう少しで見える!!!!)
「カグヤ!カグヤ!」
タクトは心の中に降り立った悪魔を退治して気を失ってるカグヤに呼びかけた。
スカートの裾を直さなかったのは悪魔の呪いだろうか…?
「ん……っっうぅんん…」
何度目かの呼びかけに応じてカグヤが目を覚ました。
「良かった!カグヤ…大丈夫??」
そこまで言ってタクトは失言に気付いた。この人がカグヤに似ているだけかも知れないからだ。しかし、カグヤから発せられた言葉は予想……いや、期待していた言葉だった。
「あなた、タク…ト……さん??」
恐る恐るカグヤが口にした言葉、それだけで目の前にいる少女が自分の知るカグヤだと確信するには十分だった。知らない土地で知っている人に会えたら喜び、アプリの中にしか居ない憧れの人に逢えた喜びを必死に抑え頷いた。
カグヤは恐る恐る手を伸ばしタクトの手を握った。タクトがその手を握り返すとカグヤが小さな嗚咽を洩らした。
「ごめん……そんなつもりじゃあ」
突然のカグヤの嗚咽に驚きカグヤの手を離して後ろに下がった。
「ごめん…なさい…。そうじゃなくて、タクトさんに触れたいってずっと思っていたから……。」
カグヤは目に浮かんだ涙を拭うとスカートが捲れ太ももがかなりの位置まで捲れているのに気づいた。顔を赤く染めスカートを直すとタクトは名残惜しそうな顔をした。
「それにしてもこうしてタクトさんと話せる日がくるとな思わなかったよ。」
カグヤはタクトを隣に座らせ話始めた。
「タクト…でいいよ。」
風に靡いたカグヤの髪がタクトをくすぐった。カグヤの髪からは近くに咲く白い花とは違った甘い香りがする。アロマと同じく、タクトの心が安らいでいく。
「そうだね。アプリの中のカグヤじゃなくて現実のカグヤと話せるようになるとはね。アプリの中のでの事は覚えているの?」
カグヤの表情が曇っていく……。




