19話
コルガは村長からの伝言を伝え終わると次は自分の話しを聞いて欲しいと身形を整え咳払いを一つするとカグヤに謝罪した。
「昨日は自衛団員のフールが大変失礼な発言をしてしまい申し訳ない。団長として団員の不始末お詫び申し上げます。」
「えっ?フールさんて自衛団の人だったんですか?でも、コルガさんに対する態度が…その…」
タクトもカグヤも驚いていた。フールのコルガに対する態度が団員が団長に対する態度とはどうしても思えなかった…。
「ああー、アレは親が原因なんだ。 アイツの親は[ナタール町]の町長なんだわ。」
「それが何で自衛団に?町長の息子なら危険な事をしなくても生活出来るんじゃあ?」
「強くなりたいという本人のご意向でな…。この村はナタールから生活必需品を輸入してるから逆らえないし、強いモンスターも殆んどいない。溺愛する息子を送るにはちょうど良い場所がこの自衛団って訳さ…」
モンスターが跋扈するこの世界でも力より権力の方が上。立場が上の者の指示には不本意でも従わないといけない…そう思うと人間社会に嫌気がさした。
「因みケンタウロスの子供を討伐したのもフールの奴だ。そん時は団員全員で応戦して逃げれたんだが奴が村の付近から離れなくなっちまってなぁ……」
「輸入が出来なくなって困っていた、と?」
コルガの言葉をタクトが続ける。ナタール町に救援を出したところ「息子は前線に出さず自力で解決しろ」と返事で取りつく島もなかった。ナタール町の町長も質の悪いモンスターであった。
そういえば………
「ケンタウロスに止めをさすときケンタウロスの動きが止まった気がしたけど……?」
ケンタウロスの目はカグヤを捉えていた。しかし、動こうとしなかった……回避も防御もせず。勿論、見間違いもしくは勘違いの可能性も充分にある。
「よく見てるね……。アレは多分、混乱してたんだと思う。」
「混乱…?どういう事?」
「目で見て脳で判断命令して体が動くのは知ってるよね?けど、これには対応出来る限界の速度があるの。もし、相手が限界ギリギリの速度だった時に判断を迷ったら?」
「脳からの命令が錯綜して行動が遅れる」
そしてそれは致命的な隙に繋がる。この隙を作らないためには経験を積むしかない。考えるのではなく反射になるように…。だからこそ、カグヤはタクトの訓練を模擬戦に絞っていた。
自衛団と合流すると去っていったコルガを見送りタクト達は村役場に向かった。カグヤは村長に会いに、タクトはアルバイト感覚で出来る仕事を紹介して貰えるとコルガから聞いたので仕事をしに。紹介して貰える仕事は雑用が殆んどである。リタ村では農作業の手伝い、家畜の世話が大半を占めときには討伐の仕事も出るがそれは優先して自衛団に割り当てられる。どんな仕事があるのかと楽しみにする反面、初体験に対する不安を抱え役場に向かった…。




