第六話 友の想い
恋の終わり。
弥生の姿に自分を重ねて見た。
それはやはり悲しくて、あたしも涙が溢れる。
二人抱き合って、流す涙。
言葉はない。だけど、お互いの気持ちを分かり合える。痛いくらいに。
どれだけの時間が。
どれだけの涙が。
流れただろう?
顔を上げた弥生が呟く。
「あいつ、他に好きなコできたんだって…」
意外だった。
真治は小学校の頃から、ずっと弥生のことを好きだったらしく、どちらかといえば真治の方が好きな気持ちが強かった。
それは誰の目からも明らかで、そんな風に想われている弥生が羨ましかった。
その真治が、弥生以外の人を好きになるなんて。
信じられなかった。
「あたし、『幸せになってね』って言ったんだよ」
『エライでしょ!?』
と、涙目と赤い鼻の弥生は笑ってみせた。
「うん。エライエライ!」
わたしも笑顔を作って、弥生の頭をもう一度撫でた。
「ありがと」
今度は、本当に嬉しそうな弥生の笑顔に、つられてあたしも笑顔になる。
「あたしこそ。いつもありがとう」
友達、っていい。
辛い時には一緒に泣いて。
嬉しい時には一緒に笑って。
家族や彼氏には言えないようなことも相談できる。
その日の太陽を見失っても、次の日も陽はまた昇るから。
友達の存在に支えられて、明日はもっと笑顔の二人でいたい。
「あたしも、すみれの『新しい恋』応援するよ?」
改めて言われると、ドキリとする。
弥生、それって…諦めろ、ってこと?
ずっと、そう思っていたの?
言葉が出ないあたしに、弥生は続けた。
「すみれが諦めるなら、それでもいい。だけど、気持ちを残したまま、無理に諦めて欲しくないよ。
一年間、あたしも後悔してた。卒業式の日、無理にでもすみれの手を引いて先輩のところに連れて行けば良かった、…って」
それは、初めて知る弥生の気持ち。
そんな風に思っていたなんて、全然知らなかった。
「弥生…」
「すみれもずっと後悔していたんだもん。ちゃんと先輩に気持ち伝えて欲しいな」
戸惑うあたしに、
「無理にとは言わないけど。すみれがその気になった時には、あたしも協力するから」
そう、弥生に言われた。
あたしには、言えない。
弥生みたいに、先輩の幸せを願う言葉なんて。
ましてや、自分の想いを伝えることも。
今はまだ、出来そうにない。