表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

第三話 ため息

はあ…。

と、思わずついたため息に、『幸せ逃げちゃうよ』と、言いながら、苦笑いを浮かべて弥生が近づいてきた。


窓際の自分の席で頬杖をついて、ため息ばかりのあたし。


あたしの視線の先の、一組の男女の姿を確認したであろう弥生が、『それでか』と短く呟いた。


「まあね。

自分でも諦め悪いなーって、思ってるんだけどさ」


弥生に視線を移して、言葉を返した。


ずっと想い続けていた、大好きな先輩には彼女ができていた。

そのことを知ったのは、入学して一週間経つか経たないかの頃。


中学時代は、サッカー部で活躍していた先輩だから、高校でもサッカー部に所属しているに違いないと、練習を見に行こうとして何気なく向かった玄関で、仲の良さそうな二人に出会ってしまった。


先輩の姿にあたしは思わず緊張して固まってしまったけれど、あたしの存在に気がつくはずもない先輩は、彼女に微笑みながら、彼女と手を取り合い玄関を後にした。


あの日、二人と鉢合わせてからというもの、あたしはため息ばかり。


一歩でもいい。

先輩に近づきたい。

そう願って受験したことさえ、後悔せずにはいられない。


また偶然、二人が一緒にいるところを目撃するのがイヤで、こうして二人が帰るのを確認してから下校するようになった。


中学時代は先輩と一緒にサッカー部に所属し、高校でもサッカー部に入部した、あたしと同じクラスの男子情報によると、先輩は部活を辞めてしまったみたい。


原因は、レギュラーの座を奪われそうになった三年生部員からの『嫌がらせ』。


その時に先輩を支えたのが、当時サッカー部のマネージャーをしていた彼女だったという。


先輩と彼女は一緒に部活を辞めて、今に至るそうだ。


高校生になったら、先輩が所属する部活のマネージャーになろうと決めていたのに…。


先輩と、あたしとを繋ぐ接点は何もなくなったに等しい。

仲良くなれるなんて不可能としか思えない。


はあ…。


また出たため息に、弥生が答えるように呟いた。


「…切ないね…」


夕焼けが眩しい教室は、余計にあたしを切ない気分にさせる。


先輩に好きな人がいるなんて、思いもしなかった。

その人と付き合ってるなんて、考えたこともなかった。


先輩と仲良くなれたら…。

先輩の隣にいられるんじゃないか…なんて。

夢見ていた自分がバカみたいに思えて、情けなくて泣けてくる。


窓辺を照らす夕日を見つめて、あたしも呟いた。


「切ないよね」


二人の姿は、小さくなって消えていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ