第二話 初めての出会い
先輩に初めて出会ったのは、中学一年の運動会。
学年の違う同じ組同士が、同じチームとなり、四チームに別れて点を競い合う。
その日まであたしは、先輩の存在を知らなかったけれど、生き生きしていた先輩は、同じ赤組の中でも特に目立っていた気がする。
日焼けした肌。
光る汗。
眩しい笑顔。
先輩は、とても輝いていたから、運動が苦手なあたしには眩し過ぎるくらいだった。
『がんばろうね♪』
運動会、最後の種目。
色別対抗リレー。
じゃんけんに負けて、出る羽目になってしまったあたし。
あたしから、バトンを受け取るのが先輩。
走りには全然自信がないから、いよいよ訪れた自分の出番に青ざめたあたしに、先輩がかけてくれた言葉がそれだった。
『はい』
小さく頷いて、先輩を見つめた。
目が合うと、先輩はにっこりと微笑んでくれた。
その笑顔に、胸キュンしてしまったあたしは、ドキドキが止まらなくて。
多分、きっと。
いや、間違いなくあの瞬間に。
あたしは先輩に『恋』したんだと思う。
同じクラスの男子からトップで受け取ったバトンを手に、走り出したあたし。
目指す場所は、ただひとつ。
先輩に向かって走る。
あの時ほど夢中になって走ったことはないだろう。今でもそう思えるくらい一生懸命走った。
足取りも軽やかだった。
一歩一歩近づいていくほどに大きくなる先輩の姿に、だんだんと胸を高鳴らせながら、あたしは走る。
縮まってゆく距離。
先輩への想いも募る。
ゆっくりと動き出して差し出した先輩の手の平にバトンを置くと、それを握りしめた先輩はダッシュ!!。
そして、あたしから離れて行った。
その後ろ姿を目で追いかけながら、心の中で応援する。
どうにか抜かれることなく、トップで先輩に繋げることができたバトン。
トラック半周を全力で走り終えて、胸のドキドキは最高潮だけれど。
ドキドキの理由は、それだけではないことを改めて確認した。
先輩の美しいフォームと、長い手足、輝く笑顔に『恋』してしまったあたしは、先輩の姿だけを見つめていた。
先輩は、二位との差をかなり広げる活躍でトップでバトンを女子に手渡した。
あの運動会の出会いから、あたしは『先輩一筋』に想い続けていた。
その恋は今も、現在進行形だから。
バトンを手渡したあの日のように、あたしはもっと先輩に近づきたいと思っている。
想うだけの、一方通行の恋ではなく、先輩と気持ちを通い合えるような…。
――そんな関係になりたいな。