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最終話 笑顔

先輩の背中は、どこか寂しそうで、いつもより小さく見える。


先輩自身あまり多くは語らないけれど、背中が全てを物語っている。


『まだ彼女が好き』


口に出さなくても、分かってしまう先輩の気持ち。


大好きな先輩のことだから、背中で全てを理解できてしまうんだよね。


「先輩っ!!」


屋上を出て行こうとする、哀愁が漂う先輩の背中に、あたしは思わず叫んでしまった。


何か一言、言いたくて。


少しでも元気になって欲しくて。


ピタリ。


立ち止まる背中。


だけど決して、振り返りはしない。


その背中が、泣いているようにも感じる。


「あたし、ずっと先輩のこと、大好きでした!

彼女がいても…、ずっとずっと大好きでした!!」


絶対に振り返らない背中に、あたしはもう一度頭を下げた。


………。


しばらくの沈黙の後。


「ありがとう」


の声に、あたしは頭を上げた。


と、右手を小さく上げて、あたしに微笑みかけ、別れのあいさつをしてくれていた先輩の姿があった。


優しい先輩の微笑みは、やっぱりどこか寂しそうで、あたしはなんだか悔しくなる。


それでも、振り向いてくれたことが嬉しくて。


「ありがとうございました」


頭を下げると、じわっと涙があふれた。


先輩にフラれちゃった…。


それは、告白する前から分かっていたこと。


だけど。


もしかして…という期待もあった。


『先輩の彼女』


「なりたかったな…」


ひとりつぶやくと、涙があふれて止まらない。


ずっと想い続けていた、大好きな人。


近づきたくて、距離を縮めたくて、仲良くなりたくて…。


一大決心をして、告白したのに。


見事に玉砕してしまった。


あたしはきっと、これからも、先輩の背中を追い掛けることしかできないんだ…。


いつか見た、先輩と彼女。


二人のように、肩を並べて歩くことも、出来ないんだよね。


唇を噛み締めた。


両手には握りこぶし。


遠ざかっていく先輩の後ろ姿。


見つめることしかできない。


広がり続ける、先輩との距離。


追いかけたくても、追いつけない。


悲しいけれど、それが現実。


涙している先輩を励ますことも、慰めることもできない。


彼女を忘れさせることさえも。


悔しいけれど、それが現実――。


頬を伝う涙を拭い、あたしは微笑む。


その笑顔は、きっとぎこちない。


けれどいつか本当に、笑える日が来ることを願って。


あたしは屋上を照らす夕日に向かって、もう一度微笑んだ。



【END】


今まで、『あなたとの距離』を読んでくれた読者の皆様、本当にありがとうございます。作品はどうにか完結いたしました。 仕事が忙しくて、更新もなかなか出来ず、企画宣伝もままならず、企画管理人様、企画作家の皆様には大変ご迷惑をおかけしたことと思います。 この場を借りてお詫びすると共に、企画に参加できたことに感謝しております。 本当にありがとうございました。 [2008.5/18 作者 あやさより]

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