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第十話 告白

街をオレンジに染めた、夕暮れ時の風景。


それを校舎の屋上から眺めている、あたし。


だけど、心ここにあらず。


あたしは、もうすぐやってくる先輩のことで頭がいっぱい。


心臓は飛び出しそうなくらい、ドキドキしてる。


自分の鼓動を手の平で感じながら、深呼吸を何度も繰り返す。


目を閉じて、先輩に向ける言葉をシュミレーション。


あの日、先輩の隣で微笑んでいた彼女の笑顔を自分にすり替えて、いいイメージを膨らませてみた。


自然と、顔がにやけてしまう。


それが現実になったら、すごく嬉しいのに…。


ガチャリ。


扉の開く音で、妄想の世界から現実に引き戻された。


現れたのは、長身のスラリとした体型の男の人。


遠くからでもわかる、愛しい先輩の姿。


一瞬にして、全身に緊張が走る。


来たっ!!


一歩一歩、あたしも先輩に近づく。


「俺のこと呼び出したの…って、君?」


初めて聞く、先輩の声。


怒ってる??


「はいっ。

一年C組の 神崎すみれ です」


ペコリ。


思わず頭を下げてしまった…。


ヤバイ。


どうしよう…。


頭上げてもいいのかな?


悩んでいると、


「ちょうど帰るところだったから、気にしないで」


意外にも優しい声に、恐る恐る頭を上げる。


優しい笑みを浮かべて、先輩がそこにいる。


ただそれだけで、胸のドキドキは鳴りやまない。


「君、…同じ中学の?」


思ってもみなかった、先輩からの意外な言葉。


あたしのこと、知ってる?


先輩が!?


想うだけの、一方通行な片思いだと思っていた。


だけど先輩は、あたしの存在を知っていた。


ただそれだけで、嬉しい。


「はいっ!

中学の時から、ずっと先輩のことが好きでした!」


ペコリ。


嬉しさのあまり、また頭を下げてしまった。


『付き合って下さい』


そう、続けたかった言葉を飲み込んでしまう。


また、頭を上げるタイミングに困っていると、


「ありがとう」


頭上から、先輩の声。


「俺のこと、そんな風に思ってくれる人がいることは、今の俺には救いになるよ」


先輩の声はどこか悲しげで、あたしは慌てて頭を上げて先輩を見つめた。


目と目が合う。


先輩の瞳は、泣いているようにも見えた。


「だけど、ゴメン。

君の気持ちには応えられない」


深々と頭を下げて、先輩は屋上を出て行く。


夕暮れ時の冷たい風が、あたしの頬を撫でた。


そう、あたしは先輩にフラれてしまった。




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