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それでも私は二度目の恋をする

作者: たぬたろう

 夢を見ていた。

 高校生だった頃の夢。

 ずっと私が後悔している夢。

 私には四人の友達がいた。

 幼稚園の頃から一緒で、ずっと仲良しだった。

 悪いことをしていたわけじゃない。

 本当に仲の良い友達だった。

 あの日、私が罪を犯すまでは。


 いつもの登校だった。

 目の前で友人の一人が本を読みながら歩いていた。

 彼、『笹塚大地』はいつもそうだった。

 ノリは良いんだけどいつも本を読んでいた。

 読む本は決まってない。

 政治に関する本から武具の百科事典まで様々な本をいつも読んでいた。

 それも幼稚園の頃から。

 なんの為にそこまで本を、知識を得るのかを聞いたこともあるけどよくわからないとはぐらかされたりもした。

 そんな彼の事を私は好きだった。

 だからちょっと驚かせようとトンっと背中を押した。

 それが後悔の始まりだった。

 背中を押された彼がこちらを見ようとした瞬間、目の前にあったのはトラックだった。

 彼は車に轢かれ、絶命した。

 それ以来、友人達とは疎遠となった。

 実質、大地が私達を纏めていたのだ。

 そんな彼を、私のつまらない悪戯が奪った。

 私が彼を押さなければ彼は死ななかったのかもしれない。

 私があの時声をかけて飛びかかるだけだったら彼は死ななかったのかもしれない。

 私が・・・私が・・・私が・・・私が・・・私が・・・私が・・・私が・・・。


 ずっと後悔している。

 こんな絶望と後悔しか感じない夢でも罰だと思って見続けよう。

 だから私は彼以外に恋はしないと思っていた。

 苦しみながら、彼のことだけを想って生きていく。

 それだけが、私の出来る唯一の償いだと信じて。




「朝・・・。またあの日を夢に見たよ、大地君・・・。」


 私の名前は『七川真弓』。

 ただの一人暮らしの医大生だ。

 いつまでも過去を引きずる暗い女。

 それでいい、私はそれを罰だと思っている。

 彼を死なせた時から死ぬ事を考えなかった日など無い。

 けど、それはただの逃げだ。

 私は、私が犯した罪を償わないといけない。

 毎日のように見るあの日の夢。

 彼が忘れるなとでも言っているのだろうか?

 いや彼は言わないだろう。

 妙に達観したとこのある人だった。

 それが私の恋した理由でもあるけれど

 そんな事を考えながら、もそもそとベッドから起き上がり、大学へ行く準備をする。

 着替え終わり、朝食を食べているとチャイムの音が聞こえてきた。

 こんな朝からの約束などは無い。


「誰だろう?」


 不審に思って覗き穴から尋ね人を見てみると、そこに居たのは疎遠になっていた友人の内の一人だ。

 名前は『天野七日』。

 五人組で私と彼女だけが女性メンバーだった。

 そういえば今あの二人は何をしてるだろうか・・・。

 一人はきっと実家のラーメン屋を継いでるだろうし、もう一人は警官になりたいと言っていたな・・・。

 彼女を見るまでずっと忘れていた。

 いや、違う。

 あの日からずっと思い出さなかったんだ。

 大地の事以外を考えないようにしていたんだ。


「ひさしぶり・・・。」

「ひさしぶりだね、まゆちゃん。」


 しかし、なぜ彼女が今来たのだろう。

 わからない。

 地元から離れてここで暮らしているなんて家族以外には言ってない。

 私の家族にでも聞いたのだろうか?

 けど家族には誰にも話さないでと言っておいたはず。


「よく・・・ここがわかったね。」

「なのちゃんの情報網を侮っちゃぁいけないよ?と言っても、偶然テレビでまゆちゃんの事知っただけなんだけどね。」

「なんで、会いに来たの・・・?」

「やっぱり、だいちゃんの事まだ気に病んでるんだね・・・。」


 心臓を掴まれた気がした。

 まさか私を攻めに来たのだろうか。

 あの時、私が悪戯をした事を。

 大地が死んだ時からずっと家に引き篭もっていた。

 そのまま県外の大学へと出て行った。

 だから、彼女達の言葉を私は聞いていない。

 怖かったのかもしれない。

 お前のせいだと責められるのが。


「そろそろ、自分を許してあげなよ・・・。」


 彼女から出た言葉は違った。

 いつもみんながはしゃぎ過ぎないように注意したり、みんなの相談を受けていた彼女らしい言葉だった。

 だからこそ、だからこそ辛い。

 心配される事がこれほど辛いだなんて。

 こんな事ならあの後、家に引き篭もらずみんなから罵倒を受けるほうが良かった。

 大地の家族も私を心配していた。

 みんなに許され、心配される。

 それでも私は、私自身を許すことはできなかった。


「私にはできないよ・・・。私を許せるのはだいちゃんだけだから・・・。」


 彼女はそうと一言だけつぶやき他愛の無い話をしてから帰っていった。

 そういえば彼女は今何をしてるのだろう。

 そんな話をした記憶はあるけれど、覚えていない。

 まぁそんな事を考えてもしかたない。

 今は大学に行かなければ。

 今日は新入生がやってくる日だ。

 けど私は何も変わらない。

 新しい人が来ても、私はずっと過去しか見ない。いや、見れない。




 それが、大地によく似た椰月光と出会った日の朝の事だった。

 大学行ったことないんで新入生であってるのか不明・・・。


 あらすじにも書いてますが10月20日に投稿予定している【聖剣に転生したんだけど】にも若干つながっている物語です。

 恋愛物ってなってますが恋愛してる要素の存在しない短編です。

 好評だったら【聖剣に転生したんだけど】の方で番外編として続きでも書きます。

 宣伝になってるかわからない宣伝用の作品です。

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