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炎の重力魔導師  作者: kenchanun
3/5

悪魔が導く神殿

 スライムを撃退した炎人は一躍、英雄ヒーローとなった。

 炎人の周りに人だかりができる。青の魔導師の情報を得るべくこれはチャンスと捉えた炎人は、大勢の街の人に大きな声で問いかけた。


「魔導師知りませんか? あの“ブルーマウンテン”に居るはずです!」


 街の人たちは首をかしげると、互いに隣に立つ人と話し始めた。そのとき6歳くらいの少女が歩み出た。


あおいお兄ちゃんのこと?」


「あおい兄ちゃん?」


「うん。蒼お兄ちゃんなら、“ブルーマウンテン”の上の方にある神殿に居るよ。神殿ここを護るとか何とか言ってたよ」


「ありがとっ! あと君の名は?」


山跳やまとび 美月みつきだよ」


「美月ちゃん! 行ってくるから!」


 先を急ぐことにした。

 しばらく走っていると洞窟が見えた。中へ入ると光が全く見えず暗い道が延々と続いていた。炎人は炎を手に宿しその明かりを頼りにして前へと進んだ。

 進んでいる途中奇妙な声が聞こえた。


「オラがこの先案内しようかデビ」


 「デビ」という語尾にまず驚いたが、声のする方へ火を照らすともっと驚く出来事が起きた。煙とともに、コウモリの翼と、ヤギの角を生やした小人が現れたのだ。


「妖精!?」


「妖精じゃないあ・く・ま! オラの名前はクロだデビ」


「で、お前が案内してくれるの?」


「そうだデビ」


 悪魔クロが羽ばたき、闇の中に消えていく。炎人は慌てて後を追った。

 クロの背中について行くと光が閉ざされていた洞窟に、少し光明が差し込んだ気がした。


「あっ、名前言ってなかったけ。俺の名前は炎人。よろしくな!」


「炎人かデビ。炎人はここに何しに来た?」


 視線を洞窟奥へと向けたまま、クロが訪ねる。炎人も小さな背とコウモリ羽を見ながら「青の魔導師を探していて、青き山の頂上を目指している」と返した。


 炎人が言い終わると、洞窟は再び炎人の足音だけが響く空間となった。

 そして、数十分が経った。

 洞窟を抜けると、辺り一面積雪に覆われた世界が広がった。ダイヤモンドダストがそこら中で舞っている。

 その先には、大きな神殿だった。隣には、墓らしきものも建っているのが見える。

 

「青の魔導師は、神殿に居るデビ。でも、これからは静かにしろデビ。ここは聖なる場所。強い覚悟を持っていないと入れないデビ!」


「あぁ、分かってる!そんな気がした……」


 神殿に近付くと、炎人はまず大きな墓に歩み寄った。墓石には「山跳 月雄つきお 美玲みれい」と彫られている。そのとき声が神殿の内側から聞こえた。


「その墓に近付くなっ!」


「誰だ?」


 炎人は直ぐにその声に対応する。


「あそこに誰か居るデビ!」


 指差した方向は、神殿の階段だった。いつの間にか神殿の扉は開いており、青い髪の少年がこちらにガンを飛ばしていた。


「まさか、青の魔導師!?」


「うるさい。さっさと神殿ここから去れ!」


 炎人たちに冷たい視線が投げられ続ける。


「蒼。話を聞いてくれ!」

 

 初対面の相手に名前呼びした炎人。それに対して怒る蒼。


「誰からその名を聞いたかは知らないが、ここから消えろ。僕が本気になったら、君は一瞬にして消えるぞ」


「話をだから聞いてく……。」


「Ice make “Long sword” ハァッ!」


 スバッ!


 その太刀から繰り出された斬撃は、炎人の髪を掠めた。


「危ねぇじゃねぇか!」


「問答無用!」


 ズバババババッ!


 次の斬撃は炎人の頬を襲った。


「危ねぇって言ってんのが、分かんねぇのか!」


「これで止めを刺す。“アイス斬撃スラッシュ”っ!」


「そっちがその気なら、仕方ない。“火炎斬フレイムソード”っ!」


 ドォォォオオオン!


「ぐっ……」


「ぐはっ……!」


 炎人も蒼もお互いの全力を出した技がぶつかり合っただけあって、傷ついている。

 そのとき「グオオオオオォ!」という神殿を壊す勢いの叫びが聞こえた。


「なんだ、なんだデビ!?」


「……あっ、アイツは」


 蒼が言葉を発したとき、神殿の地が割れ何か出てきた。


『アイツは我が魔王と共に封印したはずの魔龍レイジではないか』


 突然、ブレイズの焦っている声が聞こえた。


「取り合えずアイツ倒せば良いんだろっ!」


「美月の両親の墓のあるこの神殿ばしょで暴れさせはしない!」


「俺が相手だっ!」

「僕が相手だっ!」


『力を合わせてくれ。二人の魔導師……』


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