エピローグ2 正義の味方?
エピローグ2 正義の味方?
1
大きなバン車両の後ろで向かい合わせにおかれた椅子に座らされてないている幼い少年がいた。茶色の髪にふにゃふにゃとした癖がある前髪に、鼻にはそばかすがある少年。トウヤだった。
トウヤは暗闇のバンの二台で、ただ目をこすりながら泣いていた。誰も助けに来てくれない。このままでは自分は殺されてしまうからだった。
「おいガキ、だまれ!うるせーぞ!」
前の運転席が見える窓が開いた。そこには運転席とその助手席に乗る組織の男たちの後姿が見える。
その男一人が、窓を開けて怒鳴り声を上げた。
「死にて―のか?あ?」
男の一人が拳銃を取り出して、窓の隙間からトウヤに向かって構えようとする。その行動にトウヤは一瞬だが驚き泣くのをやめたが、また泣き出した。
「この ガキが!だから泣くのをやめろって言ってんだろうが!」
拳銃を持った男が再びトウヤに向かって拳銃を構えて怒鳴ったがそれを見かねた隣りにいた男がハンドルを握りながら言う。
「おい、この子供に手を出したらどうなるか分かってのか?俺たち命令違反でひどい目に合わされるんだぞ!少しは落ち着けよ!」
どうやらトウヤを守ったつもりは微塵もなく自分の心配だけをしているようだった。
「クソ!分かったよ。おい、今度また泣くようならこの俺が殺してやるから覚えておけよ!」
男はそう言うと、窓を閉じて黒いカーテンを閉め、またあたりが暗闇になった。
もう何時間このバン車両に乗っているのか分からなくなっていた。このままでは僕は死ぬだろう。死にたくない・・・。でも誰も助けに来てくれない。あのお姉ちゃんでも奴らにはかなわなかった。もう僕は・・・。
そう思うとまた涙が両目から出てきた。いろんな思いが頭の中で複雑に思いめぐらせる。
誰か・・・助けて!
そうトウヤがここ小中で叫んだ時だった。
ドンッ!
激しい爆発音と共にこの乗っていた車両が左右に激しく揺れたかと思うと再び
ドンッ!
二発目の爆発音が聞こえてきた。その激しい揺れでトウヤは思わず頭をぶつけてしまい乗っていた車はすぐにブレーキをして停止した様子だ。
何がいったい外で起こっているのかが分からなかった。
そんな様子でトウヤは立ち上がる。
ダダダダダッッ!
すると何発かの銃声がバンの外で聞こえてきた。
「何?いったい何が起こっているの?」
トウヤはそう叫びながら、体をとっさに体を小さくしゃがませた。
銃声の音は一瞬の内に消え、再び沈黙が流れたと思ったその時だった。鍵がしてあって決して開かなかったバンの後ろの扉が一斉に開いたと思うと、そこにはある少女が立っていた。
少女は短い髪をしていて髪を後ろで止めている。一瞬ゼロのお姉ちゃんかと間違いそうになったが、年は同じくらいなのだが雰囲気が全然違うことに気が付いた。
少女の片手にはライフルを持っており、来ていた黒いコートには返り血らしき液体が何適か付いていた。
少女はかぶっていたコートから、伸びたフードを脱ぐと口を開く。
「君の名前はトウヤ・ウローラであってるよね?」
少女のそんな問いかけにトウヤは首を縦に振る。
「お姉ちゃんはいったい誰なの?」
トウヤは頭に浮かんだ疑問を口に出してみた。
すると少女はにっと笑って
「私は、あなたを助けに来た正義の味方かな?私たちはあなたが必要なの。さぁトウヤ君、私についてきて!」
目の前の少女はそう言うと後ろを振り返って歩き出した。
「待ってよ!」
トウヤはその少女に言うと、少女の後ろをただついて行く。
外は砂漠で車道から外れた先ほどの爆発で、赤い炎を宙に向かって燃え上がらせる車両何台かが、熱風を放ち暗くなった外を照らしていた。
そんなどこに向かっているかも分からないその少女をトウヤは必死に追いかける。
「お姉ちゃんはいったい誰なの?どうして僕を助けるの?」
少女に追いついたと思うとトウヤはそう言う。
「今は秘密!」
トウヤの質問に少女は口に手を当てて笑顔でそう言った。
そしてトウヤと少女はこの夜の砂漠の中、二人は歩き出す。