エピローグ1 裏切り
エピローグ1 裏切り
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「確かに脱走したゼロと、マリオの息子の処分は、お前に任せた。だがロビーの一般人を皆殺しにするとまでとは言っていないんだが、君はそのことについてはどう思っているのかね?」
明かりが灯っていない組織のビルの最上階にある社長室のように、どこを見ても高級そうな家具が置かれた部屋で、高そうな気の机に腰を掛ける、顔には長いひげを生やし気迫に満ちたような老人がそう言った。
その目線の先にはスキンヘッドでサングラスをかけた、全身黒い服を着ている大男、マスターがいた。マスターは部屋に大きく引かれてあったカーペットの上に立ち、そんな老人に動揺することなく口を開く。
「あなたは私に今回の件の後始末を言いつけました。その結果がこうなっただけですよ」
その言葉に老人は、はぁ~と深くため息をついた。
「君は自分が何をしているのか分かっているのか!あの後、下では我が私兵たちと警察の特殊部隊の銃撃戦が繰り広げられたんだぞ!私は証拠を消せとは言ったが、あそこまで派手にやれとは言っていない。それをお前は・・・」
老人が机を大きく叩いてそう言うと、マスターはふっと鼻で笑いだす。
「何がそんなにおかしいんだね。ふざけているのか?」
「いやいや。決してふざけている訳ではありませんよ。ただもうじきこの世界は終わる」
「ん、どういうことだ?それは?」
「簡単です。先ほど博士から連絡がありました。今までしてきた研究が完成段階に入ったと。もういつでも起動することができるそうです」
マスターがそう言った瞬間に老人の目の色が変わった。
「それは本当なのか?」
「はい、ただ、博士は他にもこんなことを言っておりました」
マスターがそう言うと、老人の座る木の机に向かって歩き出した。そして老人の目の前まで来るや否や、胸の内ポケットから拳銃を取り出して老人の額に突きつけた。
「貴様!なにを!?」
老人が目を丸くしながら叫ぶ。
「この作戦にはあなたは必要ないそうです。新たな世界の指導者は我々だけでだと・・・」
「何をいまさら!今まで奴の研究のために多額の金を与え続けてきたのは誰だ?この私ではないか!その私を裏切るのか・・・」
タンッ!
老人がそう言い終わる前にマスターは銃の引き金を引いた。老人は頭が反対側に跳ね返り血を流しながら、ばたりと倒れ、椅子から崩れ落ちる。
マスターはそんな老人を見て、拳銃を胸へとしまった。
「どうせ。研究が完成した時点で、博士ともども我々を殺すつもりだったのでしょう?」
マスターがそう言うと部屋の出口の方へと振り返り歩き出し何かを思い出したように、再び死んだ老人の屍の方を振り返り口を開く。
「そう言えば博士はこんなことも言っておりましたよ。あなたは金を払わせるだけの金づるで、お前の偉そうな態度がずっと気に食わなかったと・・・」
マスターはそう言うとまた歩き出した。