エピソード3 奴とのめぐり遭い
この作品はフィクションです。登場人物や団体、その他の背景は実在していません。しかし、ひろしチックな人物は貴方の周りに居るのかもしれません。
断っておくが、奴は妻帯者である。
にもかかわらず、半ば強引に女性と付き合ってしまう。
ここでは、その毒牙にかかったある一人の女性との出会いについて書いてみよう。
エイコの場合
今からさかのぼること2年半前。
ちょうど街がクリスマスのイルミネーションで飾られていた頃のことだった。
最近転職をしたばかりのエイコの友人、リコからのメールで始まった。
「元気〜!最近どうしてる〜?実は職場の人で面白いオジサンがいるんだけど、
飲み会しよう!女の子呼んで〜って五月蝿いのよ〜。」
仕事を始めたばかりで、男だらけの職場に馴染めないらしくリコからのSOSだ。
親友の助けになるなら…という気持ちからエイコは飲み会への参加を快諾した。
年末に向けて、そうでなくても忙しい毎日。まぁ大半は忘年会だ。
(でも珍しいな〜、リコからの飲み会のお誘いだなんて。よっぽど困ってるのかな。)
こんなことを思いながらもメールに返信した。
「土曜日なら大丈夫。何とか時間作るよ。」
リコは内向的で大人しく、仕事上の嫌なことでも断りきれずにいた。
しかも、その職場こそまさに、ひろしの独壇場だ。下ネタの格好の標的である。
対してエイコは外交的で物怖じしない。彼女の中にはほんの少しの好奇心もあった。
(もしかして、職場に好きな人でも出来たかな?リコ好みのイケメンはそう居ないからなぁ。)
そんな彼女の思惑とはかけ離れた人物との出会いだった。
「土曜日午後7時頃には迎えに行くね。」
約束の日、前日のお酒が抜けきらないまま迎えのリコの車中で聞いてみる。
「職場で好きな人でもできたの?」
「ちッ違うよ!誰があんなオジサン。毎日下ネタで困ってるのよ。実害は無いけどね。」
(なぁ〜んだ、厄介な奴をとりあえずおとなしくさせたいだけかぁ。)
残念な気持ちと同時に頭の中を接待モードに切り替える。
営業という仕事柄接待には慣れている。テキトーに盛り上げてテキトーに切上げる。
…つもりだった。相手があのひろしでさえなければ…。
居酒屋に着くと二日酔いの頭痛だけが気にかかる。もはやどんな人が来るか興味は無い。
(出かける前に痛み止め飲んでいれば良かったかなぁ。あ〜断れば良かった。)
そんな事を思っていた矢先に居酒屋のドアが開いた。
身長推定177cm、体重およそ77kg。
メガネをかけた30代半ばの男が一人、ズカズカとこちらに来る。
「お疲れ様です〜。」
リコが声をかけるとほぼ同時にエイコも
「お疲れ様です〜。」
まったくの初対面のはずである。にもかかわらずエイコにはなぜかわかっていたのだ。
(何でだろう、あの人だ!ってなぜ…。)
直感したのだ。今後の彼女の運命を変えるプロローグである。