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M&A.  作者: 笹倉
/一年
4/16

四月二日/「授業間際」



/四月二日/1-A



 陣織が真っ青な顔でナツキと共に教室に入ってきたのを、啄木鳥は見た。七臣はナツキに「おはよう!」と声をかける。啄木鳥は、陣織に、「何か顔色悪いで」と話しかけた。


「キツツキ、あたしの部屋、霊が住んでるわ」

「はあ?」

「ラップ音がするの。ぎぎい、ぎぎいって!」


 そうなん? と啄木鳥は首を傾げた。ナツキに話しかけ続ける七臣を引き剥がして、ナツキちゃんの部屋からは聞こえへんのん? と聞く。


「き、聞こえないの」

「ナツキちゃんの部屋、少女ちゃんの隣やんなあ?」

「そうなのよ! なのにナツキの部屋からは聞こえないの」


 ついでに言えば、啄木鳥の部屋と七臣の部屋も隣である。昨日一緒に帰宅して発覚したことだ。


「ほんなら、憑かれとるわ」

「やめてよ! あたしお化けとか大嫌いなのよ!」

「いやあ、憑かれとるやろ」

「で、でもわたしの部屋は大丈夫だよ」

「そういうのって、部屋に憑くからちゃう?」

「ちょっとキツツキ、やめてよ!」


 陣織が、ばん、と啄木鳥の背中を叩く。

 ここで七臣が口を開いた。


「陣織」

「なによヘンタイ」

「塩は試した?」

「塩?」

「ああ、盛り塩とか、言うもんなあ」

「僕は年に五十回以上金縛りにあうプロ金縛ラーだが」

「何よ金縛ラーって」

「盛り塩は、効くぞ」

「ホント!?」

「へえ、そうなんやあ」


 ナツキ、今日の帰りに塩を買いに行きましょ! と大きな声で言う。回りのクラスメイト達が何の話だ、と笑う。クラスは既にいくつかのグループに別れていた。七臣、啄木鳥、ナツキ、陣織のグループはクラスの中でもやかましいグループだ。啄木鳥が周りのクラスメイトに、ごめん、なんでもないから、と笑いながら言った所で、始業のチャイムが鳴った。朝のショート・ホーム・ルームだ。山本ががらり、と戸を開けて現れた。服装が昨日と全く変わっていない。



「おはようございます。椅子に座って下さい。――うん、全員出席だね。それじゃあ、連絡。今日、一時間目から、いきなりだけど、教育実習生の子が授業するから。魔法学。教科書、持ってきてますよね? 教育実習生の子が授業してる間、私は後ろで見てますから。しっかり授業を受けるように。寝てたら起こしますから。んー、後は特にないかな。あ、二時間目からはクラスタイムだ。それくらいかな。以上!」



 それじゃあ後でねー、と山本スマイルを残してから、教室から出て行く。

 ナツキが、クラスタイムって、何かな? と口に出した。七臣が、分からないなあ、と言って、右斜め前の陣織に聞く。



「クラスでの戦闘演習よ」

「戦闘演習?」

「皆の魔法とか能力とか、見せ合うんじゃないかしら」

 

 それからうだうだとその三人で喋る。七臣は啄木鳥を見る。啄木鳥は啄木鳥の席の周りの人間と談笑していた。

 チャイムが鳴る。クラスの人々は魔法学の教科書を机から出した。

 ナツキが、あ、と声を漏らす。

 七臣が後ろを向く。


「どうしたの?」

「――きょ、教科書、忘れちゃった」










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