四月七日/紅白戦開幕
対戦表より抜粋。
1番目(赤)七臣蔵人 対 (白)陣織少女
4番目(赤)筒木啄木鳥 対 (白)岸色棋士
10番目(赤)花村夏木 対 (白)一二三なろみ
ルール
①勝利条件は転生膜内での相手の殺害。降参も可とする。
②15分以内に決着がつかない場合は引き分けとす。
③武器の使用可。貸し出しは無し。
④最終的に敗北が多い方のチームの面々には課題
⑤服装は制服。女子はスカートの下に何か履く事。
/四月七日/闘技場
赤組の面々は盛り上がっていた。中心にいるのは啄木鳥だ。あいつらに課題押し付けたるで! と音頭を掛けると、応! と大きな声で皆がそれに答えた。その輪の中に居ない七臣とナツキ。少女ちゃんだけ離れちゃったね、とナツキが言う。僕の対戦相手だしな、と七臣が答えた。
「それよりナツキ」
「な、なに?」
「手を繋いでも良いか」
「な、なんでかな?」
「キスでもいい」
「う、あ、え?」
「僕への応援だと思って頼む」
ナツキはおろおろとしていたが、七臣の右手を両手で握って、が、がんばってください! と顔を少し下に向け、顔を赤くしながら言った。
「……ナツキ」
「え、な、なにかな? なんか、だ、だめだった!?」
「もっとやらしい感じで頼む」
◇◇◇
白組の面々も盛り上がっていた。赤組と同じように、相手に課題を押し付けよう! と鼓舞し、士気を上げていた。陣織は一度屈伸をしておく。何しろ一番目の大役だ。白組に流れをつけさせる為にも、勝たなければいけない。少し緊張する陣織に、話しかける者。――岸色棋士。
「一人だけ外れちゃったネ、いつものメンバーかラ」
陣織はナツキと離れたのは残念かな、と答える。
「あなたはキツツキとやるんでしょう」
「うン、そーだネ。ちょっと緊張してるヨ」
「――あなた、全然緊張してるように見えないわ」
確かに岸色の風貌は緊張という言葉から掛け離れていた。既に改造してある制服には様々なワッペンが縫い付けられている。身長160センチの陣織とあまり変わらない背丈の癖に、サイズが大きい制服を着ているので、袖から手が出ていない。更に制服の下にパーカーを着込んでおり、フードを被っている。髪の毛は黒色。特徴的なのはその目で、左右の目の色が違う。右が朱色で、左が黒。陣織は、彼がまばたきするところを見たことがない。
「緊張してるヨ、すッごく」
「嘘臭いわ」
「失礼だネ」
「よく言われる」
「まあ、一番手だけど、気楽に頑張りなネ」
ありがと、と陣織が答える。
山本の声がスピーカーから発される。
「それじゃあそろそろ始めます。陣織さん、七臣君、膜内へ」
◇◇
七臣が膜内へ入る。続いて、陣織が膜内へ。
「赤色と白色の線があるでしょう。七臣君は赤色の線へ、陣織さんは白色の線へ」
言われた通りにふたりは動く。陣織は白線へ向かいながら、山本の姿を探した。すぐに発見する。膜の外でマイクとファイルを持って立っていた。
二人が線に立つ。その間は15メートル。対峙。
「合図で戦闘を開始して下さい。時間もそこから計測します。十五分ですからね」
山本の言葉に、二人は頷く。それから、陣織が口を開いた。
「この日を待ってたわ。アンタみたいな変態、ボコボコのギッタンギッタンにしてやるんだから!」
「僕も入学式の時にかまされた踵落としの借りを返すよ」
七臣は一本のバタフライナイフを取り出し、左手に握る。
「それでは、行きましょうか」
山本の言葉で、二人は臨戦態勢に入る。七臣は腰を低くし、スタートダッシュの為に前傾姿勢を取る。陣織は自然体の構え。
「始め!」
七臣は即座に反応する。圧倒的な初速、スタート。陣織に向かって走る。
陣織は、叫ぶ。
「――最初から飛ばしていくわよ!」