四月六日/「臨死」
/四月六日/1-A
「蔵人、家におらんかってん」
でも学校には来てないわ、と陣織が言う。時刻は午前八時二十八分、SHRが始まる二分前。七臣が居ないので、いつものグループは三人だけ。今日、七臣居ないの? とクラスの何人かは啄木鳥や陣織に聞いてきた。
七臣の居ない机。ナツキは椅子に座って前を見る。七臣君の居ない風景だ、と小さく言う。変態が居なくて楽? と陣織に言われ、「そ、そんなことないよ!」と訂正する。
◇◇◇
「今日は七臣君はお休みです。あと、今日は購買もお休みです。連絡はそれくらいかな」
山本が黒いファイルを開いて、中の書類に目を通す。少し間を置いて、あ! と少し音量を大きくする。
「大事な事を忘れてました。本当は二日目のクラスタイムにやるはずだったけど、薄野君のせいでできなかった紅白戦を、明日の五・六時限目でやろうと思います。他のクラスはもうやっちゃったみたいで、少しA組は出遅れてしまいました。あ、紅白戦と言っても、男と女に別れるわけではありません。私が適当にくじをひいてチーム分けします。今日の帰りのホームルームまでには、やっておきます」
クラスが少しざわつく。
「紅白戦」は、「転生」の膜内で行われる実戦である。クラスを赤組と白組に二分割し、1対1で戦っていくものだ(勝ち抜き方式ではない。一人、戦えるのは一回。二十人を二チームに分けるので、十回戦闘が行われる)。実戦であるので、相手を殺す事で勝利を得ることができる(降参もできるが)。転生の膜内でやると言えども、殺し合いであるから、ざわつくのは当然だ。
山本が手を叩く。ざわめきは少し小さくなった。
「まあ、この紅白戦はクラス内で能力や自分のできる事、どのような戦闘スタイルかを見せることですから。それに、転生の膜内では命は無限です」
山本が微笑みながら、クラスを見回す。
それから、口を開いた。
「一度くらい、死んでおいた方がいいですよ」
◇◇
/「林檎狩り」開始より?分
七臣蔵人は沈む。
ここはどこだ? 真っ黒だ。暗い。自分の存在すら認識できない。僕はここに居るのか? 僕は今目を開けているのか? あんなに真っ白だったのに。全て、白色だったのに。全て? いや、違う。
七臣蔵人は確かに見る。確かに認識する。
目の眩むような原色! その赤を、その林檎を!
再生。
「焼却処分だ」