兄と妹と、最悪の晩酌
外では雨。
中では焦げた肉と安い酒。
でも、その夜は——
やけに、悪くなかった。
「ちょっとォ!!それ焦げてるってば!!」
キッチンに妹の叫びが響く。
「焦げてねぇ!“香ばしい”んだよ!!」
兄はドヤ顔でフライパンを振る。
じゅわああああ——
完全に黒い。
「いやそれ“炭”!!もう肉じゃない!!」
「うるせぇな、食える食える。」
兄はそのまま皿にドン。
見た目は完全に敗北。
妹はため息をつきながら、テーブルの瓶を見る。
「で、何この酒。ラベル剥がれてるんだけど。」
「安かった。」
「理由になってない。」
兄はドバドバと濁り酒をコップに注ぐ。
ほぼ溢れている。
「はい、飲め。」
「雑すぎるでしょ!?愛がない!!」
「家族に愛とかいらんだろ。」
「いるわ!!最低!!」
妹はぶつぶつ言いながら一口。
「……うわ、なにこれ、クセ強ッ!!」
「だろ?通はこれなんだよ。」
「通って何!?人生失敗してる人のこと!?」
「お前ケンカ売ってんのか?」
二人、無言でにらみ合う。⚡
そして——
同時に肉を食う。
「……」
「……」
「……あれ?」
妹がぽつり。
「普通にうまくない?」
兄も一口。
「……あれ?」
ちょっと沈黙。
「焦げてるのに、なんで?」
「わかんねぇ。」
もう一口。
「うま。」
「うまいな。」
さっきまでのケンカ、完全に消滅。
妹は笑いながら言う。
「なんかさ、最悪なのに、ちょっと楽しいね。」
兄は濁り酒を飲みながら鼻で笑う。
「お前と食う飯は、だいたいそんなもんだろ。」
「なにそれ、ちょっといいこと言ってる風やめて。」
「うるせぇ。」
二人は同時に笑った。
外では雨。
中では焦げた肉と安い酒。
でも、その夜は——
やけに、悪くなかった。
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「お前と食う飯は、だいたいそんなもんだろ。」
「なにそれ、ちょっといいこと言ってる風やめて。」
「うるせぇ。」




