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第63話 妻がゲキ怒りした男

 その患者は妻というものがありながら浮気した。

 しかも相手は男。

 そしてHIVをもらってしまった。


 奥さんはゲキいかり!


「まあ、おこられるよなあ」


 症例検討会の参加者は男ばかりだったのでもっぱらその話になってしまった。


「しかし奥さんのいかりポイントはどこにあるのかね?」


 突っ込みどころが多すぎて分からない。


「浮気をしたことか、相手が男だったことか、それともHIV感染か。どう思う?」


 一同、考え込んだ挙句、異口同音に答えた。


「そりゃ、HIVに感染したことじゃないですか?」


 ことの重大さからするとそうなる。

 他の2つはあくまでも奥さんの心の問題であり、実害があるわけではない。

 しかし、HIV感染は正真正銘の災厄だ。


 あくまでも男目線の話だけど。



 かくいうオレもかつてHIV感染しかけたことがある。


 手術中の針刺し事故だ。

 HIV患者の手術をしているときに指を針で刺してしまった。

 いくら注意していても5年に1回くらい起こる。


 あわてて手をおろして感染管理部に連絡した。


「ちょっと刺しただけなんで大丈夫ですよね」

「ダメです、先生!」

「ええっ?」

「その患者さん、未治療なんでウイルス量が××万コピーありますから」

「そんな馬鹿な!」


 もう目の前が真っ暗になった。


 といったやりとりの後、手術の途中で感染管理室に連行される。

 手術自体は他の連中が引き継いでくれた。


 労災扱いのため数多くの書類を作成しなくてはならない。


「いいですか。今日からこの薬を24時間毎に1錠、30日間服用してください」

「はい」

「1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後に血液検査を行います」

「はい」


 そういってなにやら薄緑うすみどり色の楕円形の錠剤の入ったビンを渡された。

 ゲンボイヤという薬だ。

 名前からして怖い。


 もちろん、オレの方も家に帰ったら妻がゲキ怒りだった。

 浮気でもらったわけではないのに理不尽な話だ。

 でも妻に理屈は通じない。



 幸い、6ヵ月後の血液検査でもHIVは陰性だった。

 内服薬が効いたためか、感染が成立しなかったのだ。


 オレは思わず口にした。


 ゲンボイヤ、ありがとう!

 神様ありがとう!!



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