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【40000PV感謝!】シンタイキヨウカってなに?  作者: taso
第三章 嫋やかな體
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92話.カピバラ様はいずこへ、『鏡花』の特性


92話.カピバラ様はいずこへ、『鏡花』の特性


 ◆


 新しいスキル『鏡花』で現れたカピバラの名前をあれこれと考えながら、今日の探索を終え帰宅の途についている。


 ちなみに草原エリアからの脱出方法は簡単で、『帰りたいと思いながら歩く』だけである。なんじゃそりゃ?と俺も初めて聞いた時は思ったものだが、物は試し、やってみるしかないな。……これで帰れなかったらどうしよう?ヤダ怖い。


『キュル〜』


 俺の肩に乗ったカピバラが鳴き声をあげる。なんとなく"大丈夫だよ!"と言ってくれているようにも見える。というか言ってる!人間は都合の良い頭をしているのだ!!


 カピバラ様に癒されながら、ありがとうの気持ちを込めて頭をクシクシと撫でる。毛並みが指に心地よいね。



 草原エリアや、少し先の階層にある森林エリアなど、マップが固定されていないエリアの階層を、探索者たちは"ランダムマップ"と呼んでいる。


 ランダムと言ってもある程度の法則性があり、それにより現れる変化を捉えて探索すれば、行きたい場所に行けるようになるそうだ。


 そうだな、棺桶を探したり死神を倒したりするゲームのマップと言えば良いだろうか?あんな感じで、闇雲に歩いてるだけだと同じ景色ばかりに見えてしまうが、所々にある変化を見つけて歩いていくと新しい発見がある……と言った仕組みになっているらしい。


「それならなんで帰る時はただ『帰りたい』と思うだけで帰れるんだろうな?」


 なんだったら『宝箱を見つけたい』だとか、『ボス部屋に行きたい』って思うだけでも行けそうなものだが……。実際はそんな甘くはないらしい。まあ当たり前だけどさ。


 研究者の説としては"探索者タグと探索者の思考がリンクしていて、転送陣まで導いてくれる"と言われているが。


 あるいは第二層に来た時の転送陣とセーフティエリア、あれをタグが探索者の近くに呼び出してくれるとか?


「俺としては後者かな?来る時も転送陣とセーフティエリアが設置されるわけだし」


 ランダムマップが第二層以降にしか無い以上、訪問者(ゲスト)だとどうなるのかってのは検証が出来ないし、こういうもんだって受け入れるしかない。


 一度訪れた階層にはいつでも転移出来るから、ボス部屋や宝箱なんかも、一度見つけた場所なら考えるだけで行けるようになるのかもしれない。あとでケンゾウさんにでも聞いてみよう。


 そうしてしばらく歩いていると"こっちに転送陣がある"という感覚が伝わってくる。相変わらず便利な感覚である。


「そういや『地図』スキルってのもあるらしいよな。あれもこういった感覚の拡張なのかも?」


 まあ固定マップでしか上手く使えないらしいから、そこまで便利なものではないのだろう。どんな風に見えるのか興味はあるが。


 セーフティエリアの見えない壁を通過した独特の感覚を感じて一息つく。カピバラを地面に下ろしてからゴロンと横になる。


 キュルルルル鳴きながら俺の顔に寄ってくるカピバラ様をナデナデ。相変わらず可愛いこと。これからもよろしくなと、思いを込めてナデナデ。


「一花たちとの探索は正直不安もあったんだけどね。こんな仲間なら大歓迎だ」


 あまり気を張る必要は無いのは分かっているけど、誰かと戦うのは怖さもある。背中を預け合い、命を預け合う。人間関係も良好でないといけないし、自分の失敗が自分以外にも影響を及ぼす可能性もある。


 もうしばらくはコイツと一緒に、誰かと探索をする事に慣れていければいいなと、そう思っていた。



「なんでだよ……どこ行っちまったんだよ……」


 カピバラ様が消えてしまった。転送陣からギルドに帰ってきた途端にである。肩にあった小さな重みが消えてしまったのだ。


 受付嬢の菅野さんに自慢したかったのに!ケンゾウさんはちょっとカピバラが怖がりそうだからやめとこうかな?とか思ってたのに!!


 あまりにも悲しくて、どう帰ったかも覚えていないまま、家の縁側にしょんぼりと座っている。こんなふうに座っていると、アイツに笑われちまうな……。アイツって誰だっけ?


「んー?なんか思い出せそうで思い出せない……。いやいや!そんなことよりカピバラ様だよ!」


 よく分からんモヤを振り払うように頭を振り、消えてしまったカピバラについて考える。


 そもそも、あのカピバラはどういった存在なのか?そこから考えてみよう。


「始めは魔物かと思ったけど、たぶん違うよな」


 なぜそう思えるかと言えば、見た目が幼体、つまり子供の姿だったからだ。


 草原エリアにはウサギや狼と言った、見た目が現実の生き物にそっくりのものも居たし、他のエリアでもそういった魔物は見られるらしい。


 だが、どんな魔物も成体の見た目でしか目撃例がないし、魔物として発生する時も幼体の見た目では無くて成体、つまり大人の姿しか確認されていないのだ。


「魔物として考えるとそれは自然な気がする。幼体は小さいし力も弱い。戦闘力はどうしても低くなるからな」


 どんな意図で魔物が地下迷宮に発生するのかは分かっていないが、発生の仕方を考えればわざわざ幼体の姿で生み出されたりはしないだろう。


 だから幼体で現れたあのカピバラは魔物ではないし、もちろん現実の動物とも別の存在だろう。花の中から生まれる動物なんてファンタジーが過ぎる。


「となると、アイツはなんだったんだ?鏡花だから掴めない存在?幻〜!?」


 いや、アイツは水の中を泳いでいたし、この手で触れたりもした。あの柔らかな毛並みに触れた時の感触は今でもこの手に覚えている。


 幻じゃないなら……妖精?花の中から出てきたし、妖精みたいに可愛い存在ではあったし。背中に羽根は生えてなかったけど。


「地下迷宮じゃないと存在出来ないとか?スキルが使えないのもそのせい?」


 試しに『鏡花』のスキルは帰宅してから何度も使ってみてはいるんだが、カピバラどころか蓮の花も出てこない。水が必要なのかと風呂場に水をためて試してもみたけど変化はなかった。勿体無いから暖め直して入りましたよ、ええ……。


 こうなると地上では諦めるしか無いのかも?残念だけど、カピバラのぬいぐるみで我慢するか……。


 とぼとぼと自分の部屋に戻り、1/1スケールの特大カピバラ様を抱き締める。コイツはコイツで可愛いんだよなぁ。抱き心地もいいし、フカフカだし。


 大きなぬいぐるみに頬を擦り寄せて、落ち込んでいた気持ちを落ち着かせる。ふと視界の端に映ったカバを見て、そいつの存在を思い出していた。名前はジャーミン。世界的に有名なカバのキャラクターを文字ったかのような名前の加湿器だ。


「加湿器か、乾燥してきたからそろそろ付けるか。数日前までは蒸し暑くてかなわなかったのにな……」


 そこまで考えた時だった、ビビビッと直感が働いたというか、閃きが起きたのは。


 このジャーミンの名前の由来はジャミング、つまり盗聴機などに使われる電波を妨害するための機能もこのカバさんにはあった。そしてそのやり方は凝素核(ぎょうそかく)から魔素を取り出し、周辺に振りまくと言うものだった。


 地下迷宮と地上の一番の違いは空気中の魔素濃度にある。それは地下迷宮と地上でのスキルの効果にも影響を及ぼしていたはずだ。


「つまり『鏡花』スキルの発動条件には魔素濃度が関係している……?」


 そんな考えに行き着いた俺は、即座に立ち上がると庭に向かって歩いていた。ジャーミンよりも素早く、そして効果的に魔素を振りまけるやり方が、俺にはあるんだからな!!



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田(スダ) 知春(チハル)


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.10

 ・深體強化 Lv.2

・身体器用 Lv.8

・進退強化 Lv.8

・待機妖化 Lv.6

・大気妖化 Lv.6

・鏡花 Lv.1

・気妖 Lv.2

・息 Lv.6

・気 Lv.6

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