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【40000PV感謝!】シンタイキヨウカってなに?  作者: taso
第三章 嫋やかな體
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89話.統率の取れた魔物との戦闘、深體強化の特性

89話.統率の取れた魔物との戦闘、深體強化の特性


 グラスウルフの見た目は、一般的な狼のイメージとほぼ変わらないものだろう。体毛の模様もツートンカラーとなっているが、顔の上部から背中にかけてが黒ではなくて緑色。若葉色というのか、薄くくすんだ緑色をしている。


 この草原エリアは一面が草で覆われていて、たまに岩の灰色や地肌の茶色が見える程度だ。グラスウルフの体毛は擬態をするにはうってつけだろう。


 特に草丈の高い場所なんかで伏せられてしまえば、どこにいるのかを探るのは非常に困難になるはずだ。その隠密性もまた、グラスウルフの厄介なところで。レベル差がある時はまだしも、ステータスに差が無い相手だと命の危険もある。


(こりゃあ一度でも見失うと手間取るな……)


 今もこうして三頭を確認出来ているのは、この辺一帯が比較的低めの草丈で見通しが良く、顔の白い部分や尻尾の揺れる動きを目視出来ているからなのと、加えて俺が風下に位置どっているからだ。


 そんな状況ですらリーダー格と思われる少し大きめの個体は、しきりに辺りを見回しながら警戒を続けている。油断をすればすぐにでも気取られてしまうだろうな。


 他の二頭はリーダー格よりもやや小柄で、二頭で無邪気にじゃれ合っている。そんな様子から、彼らは親子や兄弟なのかも知れないと想像も膨らむが、魔物による繁殖行動は現時点で確認はされていない。幼体の存在も見つかってはおらず、魔物が発生した段階で既に成体になっていると思われる。


(グラスウルフの観察と情報の整理はこのぐらいにして、そろそろ戦闘に移りますかね)


 俺のほうにアドバンテージがある今がチャンスだ。見つかってしまう前に先手を取ろう。俺の最初の一手?もちろんこれだよね?



 俺はおもむろに、音を立てないようにしてある物を取り出す。まあただの小石なんすけどね!第一層でのマストアイテムだった投石用の石。探索者となって新たな階層に来てもそれは変わらない。今後もお世話になります!


 狙うはじゃれ合ってる二頭のうちの一頭。そうだな、顔のどこかに当たればいいかな?

 『進退強化』のスキルを持っている小石に適用させて、投げるタイミングを見計らう。この前にダーツで試したスキルの使い方をここでも試してみる。


 しばらくすると一頭が下に、もう一頭が上に。マウントポジションの体勢になってじゃれ合いが一段落ついた状況になる。一時的に動きが止まり、上になっている個体の顔がよく見える位置になっている。


 俺は『進退強化』で投石のルートを頭の中に描くと、スキルを『身体器用』に切り替えてから投石する。


 ロングスキル(文字数が多い)同士の同時発動はまだ不安定で失敗もするため切り替えが必要だ。レベル的にはもうそろそろだと思うけどね。失敗した時のラグを考えると、素早く切り替える方が隙が少ないと判断した。


 俺の投げた石はグラスウルフの顔に吸い込まれるように飛んでいき、左目の辺りに上手く当たってくれた。狼の『キャウンッ』って声が聞こえると同時に、俺は潜んでいた草むらの影から飛び出した。



 俺が狙うのはもちろん片目を負傷した個体……ではなくて、奥にいるリーダー格だ。さすがリーダーというべきか、突然の不意打ちにもすぐに対応してこちらに迎撃体勢を取っている。


 そんなグラスウルフと戦うにあたり、『大気妖化』のスキルは実に効果的に働いてくれる。


 この『大気妖化』だが、ただ気配をぼやけさせるだけではなくて、俺の気配を薄く広く周囲に伸ばすように展開が出来る。一見すると自分の気配を敵に気どらせる悪手に思えるが、自分自身も周りの敵の気配を感じ取る事が出来るメリットもある。


 そうそう、『大気妖化』が発生した時も、某FPSゲームのキャラが使うスキルのような、ソナーみたいな感じだなーって思ったんだよな。あれも敵の居場所を探れると同時に、こちらがソナーを使ったことを知らせてしまうデメリットも含んでいる。


(まあ一対多の状況ではメリットが勝つけどな)


 リーダーに接近する途中で右手から敵の接近を確認した。じゃれ合っていた二頭のうち、下にいた個体だろう。リーダーの指示なのか自分の判断なのか、俺を目掛けて飛びかかってくる。


 俺は一旦立ち止まると、力を抜いた状態で相手を目視する。最接近したグラスウルフに対して、右腕を上げて防御の姿勢を取る。少なくとも相手からは防御されたと見えているはずだ。それでいい。


(計 画 通 り !)


 新世界の神を目指していた主人公のような笑みを心で浮かべる。現状全てが順調に進んでいた。


 敵の振り上げた前脚を右手の甲で受け、そのまま自分の右脚を引きながら半身の姿勢に。その流れのままグラスウルフの攻撃を受け流す。俺は狼をパリィする!!


 先制の投擲、すかさず飛び出してリーダーを狙う姿勢、この状況ならもう一体が飛びかかってくるだろうと思っていた!


 将を射んと欲すればまず馬を射よ。リーダーを倒そうと思うなら、まずやるべきは各個撃破だ。一体を投石で牽制し、もう一体がフリーの状態でリーダーに接近すればこの状態になるだろうと踏んでいた。


 俺の動きに体勢を崩すグラスウルフのこめかみを狙い、左手の掌底を撃ち抜く。掌底はいつの間にか俺のメインウェポンになりつつある。


 掌底のメリットは幾つかある。元々の理由としては拳に比べて骨折のリスクが少ないこと。掌は小さい骨が幾つも集まって構成されていて、なおかつ柔らかい筋肉と脂肪に覆われている。そのため衝撃が上手く分散され、怪我のリスクも減ると聞いた。


 もちろん攻撃対象にも当たる箇所が広くなってしまい局所的なダメージは少なくなるのだが、それにより表面的なダメージではなくて、内部に届くような重い攻撃が行える、というメリットもある。


(と言っても、以前の俺ならグラスウルフの耐久力には負けてただろうな)


 そう、以前の俺ならね。



 攻撃力や防御力、今までの俺に足りなかった身体の強度を補ってくれているのが『深體強化(しんたいきょうか)』のスキルだ。このスキルは主に骨の強度、骨密度やしなやかさを向上させてくれるが、加えて深層の筋肉も強化してくれている、らしいのだ。習慣にしているストレッチの感覚的にね。


 弓で例えると骨は弓幹(ゆがら)で筋肉は弦だろうか?弓幹は弓の本体部分だけど、ここが弱かったら弦を強く引けないし、引こうとしても折れてしまう。


 そして弦が弱ければ強い矢は打てないし、無理をすればプチンッと切れてしまう。要するに骨の強度と、そこに付着している筋肉の強さはセット。どちらが欠けてもパフォーマンスは落ちてしまうんだよな。


(身体の深い部分にある骨を強化したくて『深體強化』ってしたけど、それが思わぬ形で良い効果をもたらしてくれたな)


 骨と深層の筋肉、両方を強化することで耐久力が底上げされ、同時にしなやかなバネのような強さも備わりつつある。『深體強化』は我ながらナイスなスキルだと自負している。


(ま、その分デメリットもあるんだけど、それは時間やタイミングでカバー出来るし)


 掌底を喰らったグラスウルフは、そのまま吹っ飛び草原に打ち据えられた。掌底が当たる瞬間少し急所を外されてしまった気がするが、しばらくは戦線復帰は難しいはずだ。もちろん『大気妖化』での警戒は怠らない。


 続いて飛びかかってきたのは、最初に投石を当てた個体だ。だが片目に怪我をしているのと、怒りで我れを失っているせいか視野も狭くなっている。二つの意味でね。


 あるいはリーダーを庇うようになのか、俺とリーダーの間に立ちはだかっているせいで、リーダーが攻撃に加わるタイミングを奪っていた。


(一斉に来られてたら厄介だったからな、助かるよ)


 こうなるとあとは簡単だった。子分たちが交互に飛びかかってくる中、俺はそいつらを盾にしてリーダーを近づけさせず。上手いこと位置取りを工夫して各個撃破に成功していた。『大気妖化』の周囲察知もあったからね。


「いっちょ上がり!」


 最後にリーダーを魔凝核に変えてゲームセット。残心で他の魔物が来ないことも確認してから戦闘体勢を解いた。久しぶりの戦闘ということもあり疲れたな。グラスラビットとの連戦でもあったし、少し休憩をしよう。


 今回は策が上手くハマってくれたが、この先それが通じない事もあるはずだ。また適当な群れを発見出来たら、次はいきなり突撃して戦うのもありかもな?苦戦もまた今後の財産になってくれるはずだから。




✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田(スダ) 知春(チハル)


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.10

 ・深體強化 Lv.2

・身体器用 Lv.8

・進退強化 Lv.8

・待機妖化 Lv.6

・大気妖化 Lv.5

・気妖 Lv.2

・息 Lv.6

・気 Lv.6

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