87話.草原エリア、無限の広がり
少し短いですが、形になったので
87話.草原エリア、無限の広がり
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転送陣から第二層へと転移した俺が見た景色は、第一層の鬱屈した洞窟の暗闇とは真逆の、それこそ無限に広がっているんじゃないかと思えるほどの圧倒的な風景だった。
天井は青空に変わり、大きな白い雲がゆっくりと流れていく。心地よい風が肌を撫でる。風を受けてそよそよと波打つ草原が、足元から四方八方へ広がっている。
そんな絶景と心地の良い気候に、俺は思わず後ろに倒れていた。丈の長い草が俺を優しく受け止めてくれる。ポスンと音がしそうな柔らかい感触で痛みも無く、俺はそのまま空を見上げて、ぐーっと腕を頭上に放り投げて背伸びをする。
「一花たちが言ってた通りだな〜。きんもち良い〜!」
探索者になり、初めて第二層に訪れたら誰もが一度はやる恒例行事。草原でゴロゴロだ。転送陣で転移した直後のセーフティエリアだから出来ることだ。半径10m程は魔物が現れないしトラップも無い。転移の際に事故ったりが無いのは親切仕様だな。
草原でゴロゴロはあまりにも気持ちが良い。このまま昼寝をしてしまう探索者もいるとかいないとか。日によってはビニールシートを広げてピクニックを楽しむ探索者の姿も見られるらしいよ。俺もみんなを誘ってやってみようかな?探索が終わったら言ってみよう!
「あー。動きたくねぇ……」
体質により幼少期からあまり動けなかった俺は、省エネで静かな生き方をしていた。それは半ば強制的なものだったけど、気付けばそれは自分の在り方にもなっていた。
朝起きた後の二度寝を楽しむような、熱くない温泉にゆっくりと浸かっている時のような。そんな緩やかな微睡みを感じる心地よさ。
とは言え探索者になって初めての探索がこれじゃあ締まらないだろう。俺はモラトリアムから抜け出すようなダルさを振り払い、勢いをつけて起き上がった。
「さて、どちらへ行こうかな?」
第二層からしばらくは草原エリアが続く。その攻略法は単純で、ひたすら歩きながら目印になるものを見つけるというもの。
それに関してはあらかじめ調べてもいたし、白百合からヒントを聞いてもいた。恐らく『進退強化』のスキルを使えば、あまり労せずにボス部屋への道筋を見つけることは出来るだろう。
「でもそれじゃあつまんないよな?」
せっかくの初日なんだし、探索を楽しみたい。魔物の強さなんかも体験しておきたいし、今日は何も考えずに歩き回っても良さそうだ。
ってことで適当に、なすがままに。風が吹いた方向にでも行ってみるか。風の向くまま、気の向くまま、なんて言葉もあったはず。四字熟語だと『行雲流水』なんてのも同じ意味かな?
風を感じ、雲の行く末を想像して。探索者としての、新しい旅立ちの一歩を踏み出そう。新しく生えた『深體強化』のレベルアップも兼ねてね。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.10
・深體強化 Lv.2
・身体器用 Lv.8
・進退強化 Lv.7
・待機妖化 Lv.6
・大気妖化 Lv.4
・気妖 Lv.2
・息 Lv.6
・気 Lv.6




