表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【15000PV感謝!】シンタイキヨウカってなに?  作者: taso
第一章 変わり始める躰
9/56

9話.二度目のギルド、そして地下迷宮へ


9話.二度目のギルド、そして地下迷宮へ



「エッホ、エッホ、菅田出なきゃ♪菅田出なきゃ♪今日は早めに菅田出なきゃ♪」


 今日も今日とて公園へと向かう俺。住み慣れてきた祖父母の家の戸締りを確認してから外に出る。この家は今だと珍しいのだろうか、平屋の一軒家だ。昔はもう少し広かったらしいが、耐震工事の必要が出た時に、こじんまりとした造りに改築をした。


 父方の祖父母には子供は一人、つまり俺の父親だけだった。当然この家も広いと持て余してしまう。改築を決めた時は祖父母の二人で暮らしていたため、それならいっそと今の形に収まったそうだ。


 余った土地は家庭菜園に利用していたが、爺ちゃんが亡くなってからは個人でレンタル出来る畑として、近隣の人に利用して貰っている。この家の管理をしてくれてたおばちゃんも利用者の一人だ。今度俺にも畑仕事を教えてくれると言ってくれたので、何を育てようか悩んでいる。


 きゅうりは欲しい。そのまま食べても良いし、昆布ダシに漬けたり、ピクルスにするのもアリ。某Mなハンバーガー屋さんのピクルスが好きだ。あの味に近付けられたらと考えている。

 キャベツは難しいだろうか?キャベツは万能食材だし、特にザワークラウトにすると美味い。刻んで塩とスパイス、ハーブを入れて放置するだけで出来るなんて最高だ。パンに乗せてチーズをかけて焼いてみな?飛ぶぞ。



 地下迷宮に潜ると決めたにも関わらず公園に訪れたのには理由がある。一つは運動の習慣を付けたかったから。これまで運動はしたくても軽いものしか出来なかったし長続きしなかった。地下迷宮に潜ると言っても毎日は難しいだろうから、日常での生活習慣に運動を取り入れたかった。


 それと『身体器用』のスキルレベルを3に上げておきたかった。これこそ地下迷宮に行けば良くね?と最初は思ったが、実はステータスには表示されていない秘密が存在している事を、昨日突き止めたのだ。早めに帰って色々と調べた甲斐があったな。地下迷宮で確かめるのが楽しみだ。


 散歩コースを1時間ほど歩いたり休んだりを繰り返しながら、常に身体器用を使い続け、ついにスキルレベルが3になった。


 身体器用のスキルはとても便利だ。レベルが上がるにつれ、身体の動きもよりイメージ通りに動かせるようになる。自分の身体が今何が出来るのか、逆に何が出来ないのか。また足りないのはなんなのか。そう言ったことも感覚的に理解が深まっていく。


 これから俺は、さらに強くなっていくだろう。そして今まで出来なかった事も出来るようになっていくはずだ。

 そうなった時、きっとこれまでの苦しみ、今感じている痛みとその記憶も薄れていってしまう。力を得ること、そして弱さを失うこと。それらもまた、弱さなのかもしれない。


 せめて今は、この痛みと苦しさを忘れないように。俺にとっての最大の理解者が俺であり続けられるようにと、ゆっくりと公園内を歩き続けていった。



「でかっ」


 やって来ました、大宮ギルド!正式名称は「埼玉県立地下迷宮総合案内所・大宮支部」である。長いよ!そりゃみんな大宮ギルドって呼ぶよ!


 それにしても、現代にダンジョンが出来る系の小説はいくつか読んだことがあるのだが、なんで埼玉に高頻度でダンジョンが発生するんだろうね?東京に近いからってのが大きいのだろうか。

 みんな大好き埼玉県!でも現実でまでダンジョン、地下迷宮が生えてくるとは。世界に愛され過ぎだよ埼玉県。


 専用駐車場に車を停めて、自動ドアからギルドに入ると、そこはやっぱり役所めいた空間をしていた。実際そうなんだろうけどね。物語に出てくる冒険者ギルドなんかを期待して入ると気が抜けてしまう。


 案内の予約は家を出る前にしていたので、それほど待たされずに呼び出しが掛かった。


「こんにちは、大宮ギルドへようこそ。訪問者(ゲスト)でのご利用と言う事でお間違い無いでしょうか?」


 あ、そこは大宮ギルドって言うんだ。


「私共も何度も長い正式名称を言うのは効率が悪いと言う事で。利用者様へのサービス向上の意味でも、聞き馴染みのある呼称で応対しております」


 なるほどなー。そこら辺は柔軟なんだな。役所だからってお堅いわけでも無いのね。


「利用者様ファーストが私共のもっとうで御座います」


 気のせいかな?思ってることが筒抜けになってない?


「菅田様は特に読み取り易いので好感が持てます。ですが詐欺などに遭われませんようご注意くださいね」


 あっ、ハイ。


 そんなやり取りをして利用料金を払うと、装備の貸し出しに必要な鍵を受け取って着替えに行く。

 受け付けの人、大人の色気があって綺麗だったけど……只者では無いオーラを感じた!彼女には特に失礼の無いように接しよう。


 亜空沼(ゲート)に入る為の専用エレベーターに乗り、地下の着替えエリアに入る。亜空沼とは地下迷宮に潜る為の、いわゆる転移装置である。名前の由来は、沼のようにズブズブと沈むような感覚が有るからだとか。


 着替えエリアは二つのスペースに分かれており、入ってすぐの外側のエリアが訪問者用、入り口をさらに進んだ先にあるスペースが探索者用だ。さらに奥にはゲートがあり、ゲートの周りを探索者用スペース、さらにその周りを訪問者用スペースで囲んでいる構造だ。

 上から見ると、三重の正方形で出来ているの言えば端的だろうか?


 俺は訪問者なので訪問者スペースに入ると、鍵に付いているプレートの番号のロッカーへと向かう。E-07か。つまりE区画の七番目のロッカーに行けば良いわけだな。


 左が男性用、右が女性用。男性用は左から順にABC区画→DEF区画。そして女性用は右からGHI区画→JKL区画と続いている。マップを見て場所を確認してから、出入り口に立っている警備員に鍵を見せ、俺はロッカーへと向かった。


 着替えエリアはスーパー銭湯のそれに近い感じで、ロッカーがズラーっと並んでいる。あとシャワー室と飲み物が売られている自動販売機。フルーツ牛乳がある。ナイス!


 鍵を使ってロッカーの扉を開けると、そこに装備が一式用意されていた。そう言えばステータスを取りに行った時もこんな感じだったな、と二年以上前の記憶がジワジワと蘇ってくる。


 防刃ベストと格闘用グローブ、肘当てと膝当て、そしてヘッドギア。通称『初期装備』と呼ばれる物は、身に付けてボタンを押すだけで身体に合わせて固定される便利仕様だ。固定されるとボタンを保護するように蓋がされる。ロッカーを施錠してベストの内ポケットに鍵を入れたら完了となる。


 ちなみに全体的なカラーは薄紫を選んだ。桜の色に近くて好みの色だったからだ。受け付けのお姉様に微笑まれて恥ずかしかったです。


 東西南北にある入り口の中から、一番近くの西口のドアを通り、そのまま真っ直ぐ奥へと進む。その先にあるのがゲートだ。


 ゲートは四角。一辺は二メートルほどか。四つの辺から階段状に下へと続いている。当然奥に行くにつれ狭くなっている。そうなると何人も同時には通れないので、それぞれの辺に列を成すように誘導される。列の左が入口、右は出口だ。


 人生二度目の地下迷宮。やっとここまで来た。ステータスを得て、スキルを使い続け、それでも大きな変化もなく二年半。


 緊張を唾と一緒に飲み込み、深呼吸をしてから一歩。ゲートへと足を沈める。ゲートは黒く、暗く、踏み出す先にある階段を目視するのも危うい。


 重たい感覚が足に纏わりつき、それを引き剥がすようにさらに一歩。だんだんと身体が沼に沈んでいく。沈むたびに身体は重くなる。頭のてっぺんが沼に沈み切った時、感覚は徐々に希薄になっていき、やがて五感の全てが消えた。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田(スダ) 知春(チハル)


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.3

・身体器用 Lv.3

・息 Lv.0

・気 Lv.0

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ