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【40000PV感謝!】シンタイキヨウカってなに?  作者: taso
第三章 嫋やかな體
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86話.新しい風景、新しい仲間

 ここから第三章『嫋やかな(からだ)』のスタートです。(たお)やかとは、しなやかだけど芯があり、地に根をおろした強さを意味します。知春の身体がどう変わっていくかを見守っていただければと思います。


 冒頭から新しい仲間が登場します。作者も大好きなあの生き物です!


86話.新しい風景、新しい仲間



 秋も深まり、冬の足音が深々(しんしん)と近付きつつある、10月の終わり頃。夜空には上弦の月が浮かび、我が家の裏庭を静かにほの白く照らしていた。


 その光は淡く、されどもしっかりと庭を見渡せる程には明るい。奥にある竹林も高く長く夜空に伸び、淡い月明かりをその青い身体で反射している。


 ちゃぼんと、水音一つ波紋を打ち、静かな空間にその音を広げていく。何もなかった裏庭に忽然と姿を現したまんまるい池が、空に浮かぶだけだったお月様をその水面に捕まえている。


 そんな水面を揺らし、スッと割り進む物陰があった。大きさは小型犬ぐらいか。齧歯類としては最大の大きさだというその生物は、その見た目に似合わず音も立てずに、池を悠然と泳いでいた。


 水面から見えるのは顔の一部だけ。耳から目、そして鼻と横一列に覗かせている。効率的な顔の作りから、その生物が水中でも生息していることを窺わせる。


「はぁ〜、可愛いな。やっぱり可愛い。最高だよカピバラ様!」


 そう、彼は、あるいは彼女はこの世で一番可愛い生き物、カピバラである!


 いやどう見ても可愛いだろ!見た目のずんぐりな愛らしさもさることながら、その生態、仕草、鳴き声などなど、可愛い箇所を挙げたらキリがない。枚挙にいとまがないとは正にこのこと。


 そんな可愛いカピバラが何故俺の目の前にいるのか。そして何もなかったこの庭に、何故カピバラ様が優雅に泳げる程の池があるのか。


 それを語るには、時を少しだけ巻き戻さなければならない。まあまあ、そんな嫌な顔しないでさ。少しだけお付き合いくださいよ。って誰に言ってるんだとまた悪い癖が出ておりますが。


 あと"巻きもどす"って表現は最近はしないって本当?ビデオテープが主流の頃に出来た表現だとかで、今は『早戻し』と言うんだっけ?


 なんでだよ!父さんや爺ちゃんは巻き戻しって言ってたぞ!!そのままでも伝わるだろ!!



 探索者タグをゲッツ!して、そして新しいスキル『深體強化(しんたいきょうか)』が発現してから数日後。スキルの発生したショックからか、あるいはボス戦の疲れからか、しばらく力の抜けた時間を過ごしまして。


 調子が戻り満を辞して訪れた大宮ギルドの地下迷宮に、俺は胸を躍らせながら一人潜っていた。


 おい知春さん、おかしいじゃないかと。探索者になって一花や白百合とパーティを組むんじゃ無かったのかと!一体全体どういうことなんだい!!


 などと心の中のきんにく芸人さんが叫んでいますが、これにはもちろん理由があるのですよ。


 まずは日程的な問題で、白百合の事業や一花のバイトなど、三人で集まれる日にちが限られている点。


 それと地下迷宮の攻略深度の問題で、これは単純に俺が全然二人に追いつけていないって事だな。そりゃ二人は探索者の先輩なんだから当然なわけで。


 とまあ色んな事情を考慮して、しばらくは俺個人の探索と、二人と時間が合う時は俺の探索を手伝って貰う時間と、臨機応変にやっていこうとなった。


 俺としても二人に最初からキャリーされるのは本意じゃなかったからね。経験を積みたかったし、一人で検証したい事も沢山あるし。だから別に寂しくなんて無いんだからね!ツンデレネタが古いなんて言わせないんだからね!!


「ついに第二層か。楽しみだな」


 一層のボス部屋に入り、部屋の奥にある魔法陣の手前までやってきていた。


 探索者タグを持った状態でこの魔法陣、転送陣と呼ばれるものの上に乗ると、次の階層や一度訪れたことのある階層に移動する事が出来る。


 一度渡ってしまえば、次からはゲートを潜る時に念じるだけで行けるんだけどね。初めて行く時だけはボス部屋の転送陣を利用する必要があった。


「本来ならタグをゲッツした時に行くものらしいけどな。まあ想定外のことがあったわけだし」


 レア中のレア魔物、『アンラッビー』がボスとして顕現してしまったからな。そのまま二層に行くのは危ないからってUターンしたんだってさ。ケンゾウさんなりの配慮らしい。


 なんなら今日も同行してもいいと提案してくれたんだけど、本来の予定もあるみたいだし、これから探索者としてやってくんだから、未知の出来事なんて当たり前にあるはずだし、丁重にお断りをした。


「いざ!第二層!!」


 俺がボス部屋の中に居たら他の人が利用出来なくなるからね。考え事を切り上げ、俺は第二層への転送陣に足を踏み入れた。


 真っ白な光に包まれて、そして光が落ち着き。目の明順応から視界に映るのは、一面が緑と青、草原と空だけが支配する美しい景色だった。


 第二層、通称『草原エリア』が俺の新しい生活を、探索者人生を歓迎してくれていた。




✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田(スダ) 知春(チハル)


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.10

 ・深體強化 Lv.2

・身体器用 Lv.8

・進退強化 Lv.7

・待機妖化 Lv.6

・大気妖化 Lv.4

・気妖 Lv.2

・息 Lv.6

・気 Lv.6

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