85話.探索者タグとウサギの尻尾、『新躰強化』レベル10の先にあるもの
二章はここまでになります。明日の日曜日に閑話を投稿し、三章の再開まではしばらくお時間をいただければと思います。ストックが尽きました……。
三章からは満を辞して!新キャラ?も登場予定なので、お楽しみにして頂ければ幸いです。
85話.探索者タグとウサギの尻尾、『新躰強化』レベル10の先にあるもの
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「知春!大丈夫か!?」
「お疲れ様、知春」
駆け寄って来てくれた一花と白百合が声をかけてくれる。二人には心配をかけてしまったな。
「ああ、大丈夫だ。悪いな心配かけて」
「ホントだよ、ったく!楽に勝てる相手に時間かけやがって!!」
「悪かったって」
「アンラッビーが白いグラスラビットになるなんて不思議。あれは何をやってたの?」
やっぱりそこは気になるよな。さて、どう説明するべきか。『待機妖化』や『気妖』と言ったスキルに関しては、二人にもまだ言えていないんだよな。
別に隠したいわけじゃ無いんだけど、まだ検証途中のスキルだし、俺たちだけじゃなくてケンゾウさんも居るからな。
「そうだぜ菅田さん。アンラッビーには謎が多かったからな。あの黒いのはなんで消えたんだ?」
「あー、俺にも具体的な事は分かりませんが、あれは黒い魔力?だと思います」
「魔力?あれがか?」
俺は三人に掻い摘んで説明をする。あの黒いのはグラスラビットに纏わり付いていた魔素の塊で、それを嫌がってアンラッビーは走り回っていたんじゃないかという俺の推測を。
「そうか、あの動きはフェイントなんかじゃ無かったのか……」
「確かに、フェイントにしては無駄な動きが多いとは思った。今回のようにボスとして戦った事例は無かったから、遭遇した人にはたまたまフェイントに見えただけなのかも?」
俺たちは祭壇にある宝箱へと歩きながら話をする。アンラッビーだったものがその姿を変えて現れた宝箱だ。恐らくボス討伐の報酬だろう。
「そうなると菅田さん、あの黒いのはヤツを攻撃しようとしてて、それでアンラッビー……いやグラスラビットか?は逃げ回ってたってことか?」
「どうなんでしょう?攻撃と言うか、侵蝕しようとしていたように俺には見えましたね」
「侵蝕?なんかウイルスみてぇで嫌だな……」
そうか、ウイルスか。そう考えると恐ろしいけど、実際はどうなんだろう?俺が触れても特に違和感とかは無いんだよな。
だからと言って油断は出来ないし、しばらく体調には気を付けよっと。肺とか内臓に影響してたら嫌だしな。一応『新躰強化』のスキルも使っとくか。転ばぬ先の杖ってやつだ。
「話は後。宝箱を開けるのが先」
「そうだな!せっかくの報酬だからな、早く中を見せてくれ!」
「急かすなって、何気に初めての宝箱なんだからさ」
祭壇の前までやってきた俺たち。俺の胸ぐらいの高さに置かれた宝箱は全体が赤色で、フチというか枠というかは金色で豪華な感じだ。ドキドキしながらそっと蓋を開ける。あっ、ミミックの可能性もあったのに!
「おっ!ちゃんとあるなタグ……と、コレってなんだ?」
「白い……モフモフ?」
「レアアイテムかも知れないな。やったな菅田さん!」
宝箱の中には、探索者の証明でもある銀色のタグ。これは謎金属で出来ているらしく、他人には触れられないという謎機能も付いている、要するに謎のタグだ。細長い見た目に【◆】みたいな模様が掘られている。タグの両端には穴が開いていて、探索者はそこにチェーンなんかを繋げて身に付けている。
そしてタグともう一つ、白いフワフワした丸いナニカ。ボスがウサギだった事から推測すると尻尾だろうか?と言っても本物の尻尾みたいな生々しさは無い。アクセサリーとして作られたような感じで、なんとなくご利益がありそうな感じだ。
ウサギは幸運の象徴としても知られているし、ウサギの脚はお守りとして加工されていた国もあるって話だ。ちょっと怖いけど、昔の慣習だからね。
「それが何かは分からんが、試験の目的はタグの方だ。それが出た時点で菅田さんも立派な探索者だな!おめでとう」
「だな!これで知春もアタシたちの正式な仲間だ!!」
「うんうん。おめでとう知春」
「え?これで合格なの?」
気が付いたら探索者になれていた?なんか拍子抜けというか、こんなんで良いの?状態である。
ケンゾウさんによると、元々はボスを倒すと現れるタグは地下迷宮から探索者と認められた証だそうだ。これがあればボス部屋も開けられるし、階層間を行き来できる転送陣なんかも使えるんだとか。
ただ闇雲に探索者を増やしてトラブルが絶えなかった経緯から探索者試験が行われるようになっただけで、一定の知識と戦闘力、そして人間性がマトモなら問題ないとの事。ギルドからも晴れて探索者として認めて貰える。
そうか。俺も探索者になれたのか……。まだ実感は湧かないけど、俺でもなれたんだな。何者にもなれないと思っていたこの俺が。
「菅田さん、疲れているところ悪いが、家に帰るまでが遠足。ギルドに帰るまでが探索者試験だ。無事に戻るのも試験のうちだぞ」
「は、はい!最後まで頑張ります!」
勝って兜の緒を締めよ、とは少し違うかな?とにかく気を引き締めて、無事にギルドに戻ろう!探索者としての最初のクエスト!なんつってね。なーんつってーつっちゃったー♪
◆
ギルドで簡単な報告を済ませて、受付嬢の菅野さんにお祝いのお言葉をいただきまして。詳しい報告や祝勝会なんかは後日となり、今日は疲れてるだろうからと家に帰して貰った俺。いやマジで疲れたよ。体力的にもだろうけど、気疲れが強いね。もー疲れたー!
この前大量に作っていた麻婆豆腐とご飯をレンチンして食す。頑張ったあとの麻婆は美味い!いつ食っても美味いけどね!特別に美味しく感じるのは、我ながら頑張った自覚があるからだろうか?
あまりにも美味しくておかわりをしてしまい、流石にお腹がパンパンですよ。苦しいお腹が痛くなる前にと『新躰強化』をかける。
「え、レベル10になってる!?いつの間に!?」
スキルは毎日確認だけはしているつもりだ。昨日の夜はレベル9だったはずだし、となると今日のボス戦の時か?それともタグを得て探索者になったからか?明確なタイミングが分からないな……。
「そうか、探索者になったんだよな。思えば遠くへ来たもんだ。気持ち的な意味でね」
初期スキルの『シンタイキヨウカ』が派生してからひと月とちょっとかな?訪問者として潜るのすら躊躇していたのに、それからほんの僅かで探索者ですよ。ねぇ?ビックリだよね?
「これも父さんや爺ちゃん婆ちゃん……それと何処かに居るはずの母さん、みんなのお陰だよな」
今ではもう会えなくなってしまった家族にお礼を言う。きっと今でも俺のことを見守ってくれている……はずだ。見てくれてるよね?
自分のため、一花や白百合の願いのため、そしてフェイの尽力やケンゾウさんたちの期待に応えるため。色んな人たちの気持ちを力に変えて、ようやく俺は探索者になる事が出来た。
気持ちとしては心機一転、なのだが自分自身は大きく変わった訳ではない。特に身体の強さは未だに貧弱なままだ。これからも鍛えていかないと、一花たちと共に戦えはしないだろう。せめて足を引っ張らないぐらいには強くなりたい。
「身体の強さ、頑丈さが欲しいよな、やっぱり」
身体の内側、内臓はスキルのお陰で強くなれた。だが探索者として魔物と戦うには、これから求められるのはまた別の物になるだろう。
新しい躰と書いて新躰と、思い付きで生まれた『新躰強化』スキルだが、同じように新しいスキルを作れないだろうか?
「躰か……。そう言えば、同じ意味で別の漢字が他にもあったんだよな。あの時はスルーしてたけど、今思うとドンピシャな漢字なんじゃ?」
その漢字は"骨が豊か"と書いて『體』だ。これも躰と同じくタイと読むし。
別に骨を増やしたい訳ではないけど、骨密度をあげて骨折のしにくい、強い骨格にしたいんだよな。それも豊かと言えばそうだし、アリなんじゃね?
あとはシンの漢字か。新しくするのとはまた違うんだよな。シン……シン……しんしん?雪が降る音って実際はしないけど、しんしんと降るって日本語良いよな。今年は降るのかな?夏が暑い時は冬も寒くなるらしいけど……。
あれ?確かしんしんって深々って書くよな?と思い調べてみたところ。涔涔なんて見慣れない漢字もあったけど、一般的には深々であってるみたいだな。
そうか、深か……。
「身体の深い部分を強くしたいんだしな。良いんじゃね?『深體強化』!」
そう思った途端だった。頭の天辺から足の先まで、電気が走ったような、刹那的な熱さに思わず自分の身体を抱き締める。身体の芯が焼けるような感覚と共に、俺は床の上に倒れていた。
「あ……ちか、らが……入ら……」
新しいスキルの影響か。それとも今日の疲れが一気に出てきたのか。俺の意識はそこでプツンと途切れてしまったんだ……。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.10
・深體強化 Lv.1
・身体器用 Lv.8
・進退強化 Lv.7
・待機妖化 Lv.6
・大気妖化 Lv.4
・気妖 Lv.2
・息 Lv.6
・気 Lv.6
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22
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◆陽乃下 白百合
◆ディープフォレスト Lv.27
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◆幡羅 謙三
◆身体強化 Lv.12 体力 Lv.10 投擲 Lv.8
体術 Lv.9




