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【40000PV感謝!】シンタイキヨウカってなに?  作者: taso
第二章 新たなる躰
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82話.ボスの見せる挙動、戦いと葛藤と


82話.ボスの見せる挙動、戦いと葛藤と



 ボス敵として顕現したアンラッビーが甲高い咆哮をあげる。その声は決して狭くは無いボス部屋の中を一瞬で満たし、俺たちの耳に突き刺さる。


 その声は不快かと言うとそう言うわけでもなく、かと言えば畏れを抱き、身体を強ばらせる類いのものでもなく。

 強いて言うなら、聞く者の耳と心を掻きむしるような、悲哀を抱かせるような声だった。


(魔物が苦しんでいる?)


 これまで何体もの魔物を倒してきたが、戦闘を始める前から苦しそうにする個体を、俺は見たことが無かった。


 もちろん俺は一切の攻撃も仕掛けていない。それなのにコイツは酷く苦しんでいる。叫んでいる。それは何故だか、俺にはとても辛くて堪らない気持ちにさせるものだった。


「来るぞ知春!相手の動きをよく見ろ!」

「殆どの動きはフェイント。自分に向かってくる動きだけを見極めて」


 一花と白百合の声を聞いて、俺は戦いに集中しようとする。アンラッビーの一挙手一投足を見逃さないように。そう思いはするものの、やはり何かが頭をかすめてしまう。


(クソッ、なんでこんなにも……胸が騒めくんだよ!)


 そんな俺の気持ちなど他所に、アンラッビーは赤い目をギラギラと光らせ、俺の周りをものすごい速さで駆け抜けていく。あっちへ行き、こっちに戻り、複雑なその動きはなるほど、確かにフェイントのようにも見える。だけどこれは……。


(ただ苦しんでいるだけじゃないのか?何かを振り払うように、何かから逃げるように)


 最初の先入観がそうさせるのか。俺のただの勘違いなのか?たまに接触しそうになるアンラッビーを避けながら、俺は相手の隙を見つけようと試みる。


 一花たちの言う通り、アンラッビーは恐ろしく速い。その動きには法則性も無く、不規則に突進を繰り返していく。だが目で追えない程の速さでもなく、自分のステータスならなんとか戦えそうだと判断出来た。


 幾筋の黒い光を残像に、アンラッビーは地面に描かれた円形の舞台をひた走る。俺は足を最小限に動かしながら、完全に背中を取られないようにだけを気を付けていた。


(今のも捌けた……この角度からならカウンターを入れられそうだ)


 戦闘の中で、何度も攻撃の機会を見つけ。きっと思ったように身体も動いてくれるという確信もあった。今日は特に調子が良いみたいだし、これなら問題なく勝てそうだった。それなのに……!


(なのになんで俺は、コイツを攻撃したいと思えないんだ!?)


 もしかしたら精神的なデバフを受けているんだろうか?戦闘意欲を削ぐような、そんなスキルが有るんだろうか?


 アンラッビー。アンラッキーとラビットを掛け合わせたのだろう、ダジャレのようなその通称は、遭遇してしまった探索者は不幸だという意味合いで付けられたものなのだろう。


 本当にそうなのか?長年探索者として活動しているケンゾウさんが、一度も戦ったことは無いと言っていたはずだ。なのに見かけた事はあるという。それはつまり、戦いになる前に相手が逃げているって事なんじゃ?


 本当に不幸なのは探索者の方なのか?不幸なのは、辛いのは、苦しんでいるのはアンラッビーの方じゃないのか?


 それならなぜ、コイツは苦しまないといけないんだ?コイツは誰に、何に苦しめられているんだ?


「菅田さん!後ろだ!!」


 また俺の悪い癖が出てしまい、思考に囚われていたタイミングでアンラッビーに背中を取られてしまった。ケンゾウさんの声に従い急いで振り返るが、距離的に完全に避け切れそうにはなかった。


(そうだ!『待機妖化』で防御を!)


 戦闘訓練の中で、『待機妖化』のスキルによって発生させた魔素による防御は一定の効果があった。少なくともゴブリンの棍棒ぐらいでは痛みも感じなかったぐらいだ。


 二層の魔物、それもめちゃくちゃレアなアンラッビーにも通じる根拠は無いが……。この時無意識に選んだのはスキルによる防御だった。


「「知春!?」」

「菅田さん!大丈夫か!!」


 軽い痛みとともに、俺は後方にふっ飛ばされた。ふっ飛ばされはしたが体勢は崩していないし、三人の心配する声を聞き取れる余裕もあった。


 俺は何故か立ち止まったアンラッビーから決して目線は外さず、三人に向かって片手を挙げて大丈夫だと示した。


「ようやく光が見えた。たぶんこの方法で勝てるはずだ」


 今も動けずにいるアンラッビーの左肩、ちょうど俺と接触しただろう箇所に著しい変化があった。


 全身が真っ黒だったはずの身体が、そこだけ白くなっていたんだ。それが『待機妖化』によるものだと直感した俺は、この戦いの真の意味が分かったような、強い確信を感じ取っていた。




✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田(スダ) 知春(チハル)


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.9

・身体器用 Lv.8

・進退強化 Lv.7

・待機妖化 Lv.5

・大気妖化 Lv.4

・気妖 Lv.1

・息 Lv.6

・気 Lv.6


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津賀(ツガ) 一花(イチカ)


◆ラビットラピッド Lv.22


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陽乃下(ヒノモト) 白百合(サユリ)


◆ディープフォレスト Lv.27


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幡羅(ハタラ) 謙三(ケンゾウ)


◆身体強化 Lv.12 体力 Lv.10 投擲 Lv.8

 体術 Lv.9

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