79話.筆記試験の結果発表〜、そしていよいよ……
79話.筆記試験の結果発表〜、そしていよいよ……
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『合格です』
「いきなりかよ!余韻も何もあったもんじゃねぇ!」
『ギルドからこのタイミングで連絡が来たら、内容なんて想像出来るかと思いまして』
「そうだけども!!」
受付嬢の菅野さんと電話でやり取りを交わす。やはりと言うか、筆記試験の結果を伝える為の電話だったようで、拍子抜けと言うか安心したと言うか。
まあ手応えがあったとは言え不安は消せなかったし、菅野さんなりのお気遣いだろう。ここら辺も直感スキル持ちならではの配慮なのかも知れない。
『菅田さん?なんでもかんでもスキルの影響とするのはよろしく無いですよ?』
「う、確かに……」
『まあ今のはスキルによるものですけどね』
最後は場を和ませる為に言ってくれたのだろうが、菅野さんの言葉はもっともだった。
俺たちはスキルに限らず、何かの才能や環境に強く影響されている。だから何かあると、そう言ったものと結び付けて考えてしまいがちである。
例えば頭の良い人が何かしらの成果を出すと『やっぱり天才は違うよね』だとか。あるいは親が有名人で子供も活躍していると『親の七光りだろ』みたいな、悪い捉え方をする事もしばしばあるだろう。
そう言った事も一因ではあるだろうが、その人の努力や人間性なんかを無視するような考え方はしないように気を付けなきゃな。
「いえ、ご助言感謝します。これから探索者としてやっていくなら、スキルだけに囚われないようにしないといけないなって、改めて気付けました」
『ふふ、そうやって自分を省みれる人の方が少ないんですよ?菅田さんのそれは間違いなくスキルとは別の特性だと思います』
「ありがとうございます」
もちろん考えすぎて周りが見えなくなるのは控えたいところだけど、長所として発揮できればそれに越したことはない。結局はスキルと同じで、どう扱うかなんだ。
『さて、それでは実技試験の日程と内容についてご相談させてください』
「あ、そうでしたね。よろしくお願いします」
こうして俺は筆記試験を無事にクリアし、いよいよ実技試験に挑む事になった。探索者試験もいよいよ大詰めである。
◆
二日後。俺は朝から大宮ギルドに訪れていた。天気は晴れ、スライムの大量発生なんて心配も無い絶好の試験日和だ。
なんだよ試験日和って。むしろ日和ってるまであるわ。ひよってるやついる〜?居るんだよなぁ!!
「もうすぐだな知春!緊張してねぇか?」
どこかで耳にしたような台詞を一花は口にする。以前はどこで聞いたんだろうか?夢の中だったか?
と言うか背中を強く叩かないで貰えますかね!?本人は気を和ませようとやってるんだろうけどさ!
「いってーな!めちゃくちゃ緊張してるわ。以前みたいに腹が痛くならないのだけが救いだよ……」
「おいおい、病は気からって言うだろ?気持ちで緊張なんて吹き飛ばすんだよ!」
「無茶言うなって……」
一花のこのポジティブさと言うか気楽さだけは羨ましい。コイツの場合は他人事だから言ってるんじゃなくて、元からの気質がこれなんだもんな。
「一花は知春の慎重さを分けてもらった方が良い。足して二で割って再構成」
先ほど一花に叩かれてジンジンしている背中を撫でてくれる感覚がする。その手は普段からしている黒い手袋越しからでも、その暖かさと柔らかさが伝わってきた。
白百合は一花とは反対側から俺の背中を撫でながらも、自然と一花への軽口が飛び出してくる。二人は相変わらず仲が良い。なのになんで俺を挟んで話してるの?美女二人で純朴な男の子を挟むな!心臓が保たないぞ!!
「まっ!アタシたちが付いててやるんだから、大船どころか豪華客船に乗った気持ちでいろよ!」
「豪華客船だと氷山にぶつかって沈没したり、パンデミックに遭ったりとしそうで怖い」
「極端過ぎるだろ!?」
「ふふ、知春は相変わらず天邪鬼で面白い」
今日も華麗なツッコミを極める一花と、よく分からないツボにハマって笑う白百合。なんで二人がここに居るのかと言うと、二人とも『推薦人制度』で俺を推薦してくれているからだ。
探索者はその人の実力以上に、人格や人付き合いのし易さ、いわゆるコミュニケーション能力なんかを大きく評価される。
横の繋がりを重んじるのが探索者で、それは地下迷宮が一般公開された時、闇雲に探索者を増やしてしまった反省から来ているとも言われている。
(それに探索者は安全第一だからな。情報を得る為にも、探索者同士の協力は不可欠だ)
探索者の推薦人がいると言うことは、そう言った情報を集められるパイプがある、と言う事もギルドに示しているわけだ。
これらの事からも、推薦人が居る方が探索者としての将来は明るいと判断され、試験にはより受かりやすくなる。悪く言えばコネなんだけどね。
「推薦人制度はありがたいんだけどさ、二人も付き添いが居て大丈夫なのか?」
「それは大丈夫。推薦人制度はパーティやギルドに新人を入れる目的もあるから。新人の実力を測る意味合いもあって、二人までなら見学は認められている」
なるほどな。某高校野球の大会は、各球団のスカウトが品定めをする場所でもあるとか、どっかの少年探偵が言ってたな。
もちろんそれでプロになる夢が実現し易くなるんだから学生にもメリットはあるし、win-winではある筈だ。
「そう言う事だな。もちろん、手助けなんかしたら大幅な減点になっからな、アタシたちをアテにはすんなよ?」
「ああ、分かってる。普段一人で潜っている時のようにやれば良いんだよな?」
「そうなんだけどよ、なんか切なくなる言い方だな」
「良いんだよ、ソロキャンプがあるんだからソロ探索だって普通だろ?」
ふたりソロ探索なんかもあったり?無いかな?うん、無いな。
「油断は禁物。ボス部屋はイレギュラーもたまにある」
「ああ、昨日言ってたやつか」
「つっても、早々起きないだろ?大丈夫だって!」
「一花、それフラグ」
「今回の試験は諦めるか……」
「なんでだよ!?」
なんて話をしていると、そこに大柄の男が俺たちに迫ってきていた。何者だ!?
「おう、揃ってるみたいだな。調子はどうよ?」
「はい、問題無いです」
「そうかそうか!まあ気張らず行こうや!」
うん、ケンゾウさんだよね。知ってた。見た目だけはマジで厳つくて怖いんだよな。とても65歳には見えないぞ。
「ケンゾウさん!今日はよろしくお願いしまッス!」
「おはようございますケンゾウさん。今日は知春の事頼みます」
「おうおう、一花ちゃんに白百合ちゃんもよろしくな!なんだよ菅田さん、文字通り両手に花じゃねぇか!!」
痛い!痛いよ!?両手で肩を叩かないで!!腕が無いなっちゃうよ!?
「確かに白百合と一花。両手に花。流石ケンゾウさん」
「そうだろ!ガハハハ!!」
感心する白百合と、それを聞いてさらに調子に乗るケンゾウさん。今度は俺の肩を強く掴み、ガクガクと揺らしてくる。収拾がつかなくなってきたぞ!助けて菅野さーん!!
「ほらほらケンゾウさん、時間もありますからそのぐらいにして。そろそろ出発してください」
天使だ!女神だ!菅野さんだ!!ありがとう菅野さん愛してる!!口には出さないけど愛してる!!
そんな感じで、みんなに緊張をほぐして貰ってから俺はいよいよ、探索者の実技試験に挑むのだった。果たしてボス部屋にはどんな魔物が待ち受けているのだろうか!?
一花のフラグが機能してないと良いんだけど、あの大雨の日と同じようにスキルが言ってるんだよな。気を付けろって……。
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◆菅田 知春
◆シンタイキヨウカ
・新躰強化 Lv.9
・身体器用 Lv.8
・進退強化 Lv.7
・待機妖化 Lv.5
・大気妖化 Lv.4
・気妖 Lv.1
・息 Lv.6
・気 Lv.5
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◆津賀 一花
◆ラビットラピッド Lv.22
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◆陽乃下 白百合
◆ディープフォレスト Lv.27
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◆幡羅 謙三
◆身体強化 Lv.12 体力 Lv.10 投擲 Lv.8
体術 Lv.9
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◆菅野 直
◆直感 Lv.20 投擲 Lv.18




